外免切替制度の問題点は? 警察庁長官が言及… SNSでは「やっとか…」の声も 最近、飲酒ひき逃げ事故(中国籍)や高速道路での逆走衝突事故(ペルー国籍)を起こした外国人がいずれも「外免切替」によって日本の免許を取得していました。 この「外免切替」とはどのような制度で、何が問題となっているのでしょうか。 外免切替で取得した日本の免許証。住所が日本で滞在したホテルとなっていた(画像提供:筆者) 【画像】「すげぇ!」これが超激レアな「最強免許」です(22枚) 外国の運転免許を日本の免許に切り替える「外免切替」について、これまでくるまのニュースでも何度か報じてきました。 日本の免許を持たない外国人が日本で運転する場合、訪日観光客の多くはジュネーブ条約形式の国際免許証を使用します。 今やレンタカーを利用して日本を観光する外国人は年間300万人以上(観光庁統計)というデータもありますが、ほとんどは国際免許証でレンタカーを借りています。 なお、日本で有効な国際免許証はジュネーブ条約締約国で発行されたジュネーブ様式の免許証になるため条約締約国で発行された国際免許でも、条約形式ではない場合は無効です。 例えばロシアは条約締約国ですがロシアで発行された国際免許は形式が異なるので日本では無効となるのです。 もちろん、別の国際交通条約であるウィーン条約のもと発行された国際免許も日本では無効です。 ちなみにジュネーブ締約国以外でも、フランス・ベルギー・モナコなど当該国の運転免許証に日本語の翻訳文を添付すれば日本国内での運転が可能となる国もあります。 しかし、ジュネーブ国際免許を所有していなくても日本で運転できる制度があります。 自国で有効な運転免許を持っている人に限られますが、「外免切替」によって日本の免許に切替ることが可能です。 外免切替は書類審査「知識確認」(学科試験)と「技能試験」の3つの過程ですべてに「合格」することで日本の免許を取得することができます。 ジュネーブ締約国などを中心に29か国では学科と技能の試験は免除されています。 しかし、ホテルの住所で申請できたり、短期観光ビザで取得できたり、学科試験の問題が簡単すぎたりで昨年秋以降、メディアの報道も増え批判が続出しました。 国会でも何度か外免切替が質問されてきましたが、ついにその制度見直しが行われることになりそうです。 2025年5月22日、警察庁の楠芳伸長官は外免切替の制度見直しについて以下のように言及しました。 ーーー ・観光客など短期滞在者に外免切替を認めない →ホテルなどを一時滞在場所として申請することは不可 ・住所確認を厳格化する →申請者の住所確認書類はすべての申請者に対して住民票の写しを提出させる ーーー また、知識確認の問題を増やすことなども今後は議論される見込みです。 現在はわずか10問で7問正解で合格と簡単なことから問題数を増やしさらに合格のための正答率を上げることも今後は盛り込まれることになるでしょう。 外免切替で日本の免許を取得している国はどこが多い? 外免切替で日本の免許を取得している国はどこが多いのでしょうか。 令和5年に外免切替による日本の運転免許を取得した国別の数は以下となっています。 ーーー 1位 ベトナム 15,807 2位 中国 11,247 3位 アメリカ 4,250 ーーー ベトナムと中国が1万人を大きく超えていますが、この2か国が飛びぬけて多いのには理由があります。 運転免許に関してこの2国に共通することは「ジュネーブ条約の締約国ではない」ということです。 つまり日本で有効な国際免許を所有できないことから、外免切替で免許を取得する以外に運転する方法がありません。 ベトナムは「技能実習」や「特定技能」の在留資格で来日する人数も多く、2024年上半期だけで日本へ新規入国した実習生は3万2千人。 一時期より減っているとはいえ現在もベトナムは日本への送り出し国としてその人数は世界最高です。 特定技能には自動車整備士や運送業といった免許必須の業種もあるため外免切替を行って日本の免許を取得するベトナム人が多いと考えられます。 3位のアメリカの中には米軍関係者(米軍を離脱して米軍としての身分がなくなると外免切替で免許を取得)も数多く存在しています。 アメリカはジュネーブ締約国ではありますが、外免切替の際に知識確認・技能試験を免除されるのはインディアナ州・オハイオ州・オレゴン州・コロラド州・バージニア州・ハワイ州・メリーランド州・ワシントン州のみ。※インディアナ州は技能のみ免除 それ以外の州で免許を取得している場合は知識確認も技能試験も受けて合格しなければ日本の免許は取得できないのです。 外免切替による日本の運転免許を取得した国別の数は? ところで、外国人運転による事故は日本人に比べて多いのでしょうか。2022年から3年間の推移を見てみましょう ーーー ●日本国籍533万5530件→471万433件→439万305件 ●外国籍 11万5241件→12万328件→12万5646件 (警察庁調べ) ーーー 日本人の交通事故件数は年々大きく減っていますが、外国人の事故はその逆に増えています。 人身事故の件数も2022年には6019件→2024年7286件と1200件以上の増加。 外免切替に関する国会質問でも外国人の人身事故は日本人の約1.8倍という結果が公表されました。 これは単に訪日外国人の数がコロナ前を大幅に上回るレベルに戻ってきた結果とも考えられます。 いまや年間300万人の外国人観光客がレンタカーを利用して移動しており各地で実際事故も多発しているからです。 前述したように、技能実習や特定技能で日本での人手不足を解消するための労働力として来日する外国人の数も年々増えている背景があります。 外免切替の制度はホテルの住所で免許が申請できたり、知識確認が10問中7問で合格できたりで「簡単すぎる!」などの問題も確かにあります。 直近で起きた飲酒ひき逃げ事故(中国籍)や高速道路での逆走衝突事故(ペルー国籍)を起こした外国人がいずれも外免切替によって日本の免許を取得していることが報道され注目を集める結果となってしまいました。 実際は国際免許で事故を起こす外国人のほうが圧倒的に多いのです。 なぜなら国際免許は自国で取得し、日本に来て何のチェックもなくレンタカーのカウンターでクルマを借りて運転します。 生まれて初めて右ハンドル車&左側通行を体験する外国人も少なくないでしょう。 日本のように左側通行&右ハンドルの国は意外と少なく世界の国々の3割以下です。 外免切替の制度を厳しくすることも大切かもしれませんが、実際に事故を起こしている数が圧倒的に多いのは国際免許での運転と考えられます。 外免切替のような知識確認も技能試験もなく日本の道交法や交通ルールを学ぶ機会もありません。 外免切替の制度厳格化と同時に、国際免許で運転する場合の安全運転啓発も警察庁はぜひ本腰を入れて行ってほしいと筆者は思います。