やっぱりPL学園はすごかった マニアが選ぶ「高校別ベストナイン」の顔ぶれ

 プロ野球、それも記録のマニアとして知られるスポーツライターの広尾晃氏が野球ファンにお薦めする「遊び」が「ベストナイン」選出だ。広尾氏は新著『野球の記録で話したい』の中で、「名前別ベストナイン」「出身高校別ベストナイン」「出身大学別ベストナイン」という「遊び」を試みている。 「田中ベストナイン」をご紹介した1回目に続き、今回は「出身高校別ベストナイン」の中から「PL学園ベストナイン」を見てみよう(以下、『野球の記録で話したい』から抜粋・再構成しました)【全3回の2回目】  *** 【写真を見る】プロ野球に選手を輩出した高校「ベスト20」 一覧を見る  日ごろ取材していて、野球界は「学歴」「学閥」社会だとしみじみ思う。野球人の口からは、卒業から何十年経っても「彼は後輩だから」「あいつは同級生だったから」という言葉がしょっちゅう出てくる。 やっぱりPL学園はすごかった (※写真と記事本文は直接関係ありません)  特に「甲子園」という日本中の注目を集める大会に出場した、と言う経験を共有する選手は、強固な絆で結ばれている。  プロ野球に選手を輩出した強豪高校のベストナインを見ていこう。 プロ野球に選手を輩出した高校ベスト20  1962年甲子園初出場の後発校ながら80年代に圧倒的に強かったPL学園、戦前の本牧中学時代から強豪校として知られた横浜、春夏甲子園通算で最多の137勝を挙げた中京大中京高(旧中京高校)、これも戦前からの強豪として知られた広陵高が4強。  これに次いで平成以降に台頭し今中慎二、中田翔、藤浪晋太郎、森友哉らが出た大阪桐蔭高。巨人のレジェンド川上哲治、西武の大捕手伊東勤が出た熊本工業高は公立では最上位。さらに長く平安高校の名で親しまれ衣笠祥雄が出た龍谷大平安高。原辰徳、菅野智之などが出た東海大相模高、根本陸夫、関根潤三など指導者も多く輩出した日大三高と続く。 高校野球甲子園勝利数ベスト20  大体大浪商は、浪華商業高時代に張本勲、高田繁などの名選手を輩出したが、2002年を最後に甲子園には出ていない。享栄高は旧享栄商高。400勝投手金田正一が出た愛知の古豪。そして仙台育英高は2022年夏の甲子園で優勝、翌23年は準優勝と近年、屈指の強豪校となっている。  ただ、プロ野球に多くの選手を輩出した高校と、甲子園で活躍した高校は必ずしも一致しない。春夏甲子園の高校別勝利数20傑を出したが、智辯和歌山高や明徳義塾高など甲子園で大活躍しながら、プロであまり選手が活躍していない高校もあるのだ。このあたり、深掘りできそうな話題ではある。 すごすぎるだろ! 「PL学園高校ベストナイン」  さて、ここではPL学園のベストナインを選出してみよう。 名選手がこんなに!  2000本安打以上が6人、殿堂入りは立浪和義一人だけだが、すさまじい顔ぶれがそろった。これだけの選手を1960年代から半世紀ほどで輩出したのだ。  ただ、ポジションが被るので苦労した。PLからは宮本慎也、松井稼頭央、立浪和義と一線級の遊撃手が3人も出ている。ただ松井はキャリア後半から二塁、宮本もキャリア晩年に三塁を守っているので、何とかベストナインを組んだ。 選手の通算成績  打順は松井稼、立浪に続いて阪急のクラッチヒッターの加藤秀、そして525本塁打の清原、5番にはMLBでも活躍した福留、そのあとに首位打者でイチローの師匠の新井というのも贅沢だ。この人の解説は掌を指すようで、誠に心地よい。ここまで全員が2000本安打(福留は日米通算)。  中塚は巨人V9時代に活躍、74年には盗塁王をとった俊足外野手、8番に強打の捕手にして女子プロゴルファー福嶋晃子の父の久晃、9番に宮本。この陣容なら即、ペナントレースで優勝できそうだ。1000試合以上の選手は控えでも載せようと思ったが、こんなに長い表になってしまう。ただ、NPBの現役はオリックスの中川圭太だけ。 なぜ金田正一は空前絶後の通算400勝を達成できたのか。王貞治の本塁打ではない「異次元の記録」とは。日米の実力格差を「数値化」するとどれくらいになるのか──。通算記録、シーズン記録だけでなく、守備記録から2軍の記録、果ては「出身学校別」「名前別」ベストナインまで、ありとあらゆるデータを駆使して野球を遊び尽くす。大人気ブログ「野球の記録で話したい」運営者によるマニア垂涎の一冊 『野球の記録で話したい』  投手。高校野球で、ここまで投手陣が揃うのもPL学園だけだ。先発はKKコンビの桑田にヤクルトのエースだった尾花、現デトロイト・タイガースの前田健太、ハマの左腕エース野村、そしてPL出身では野手の中塚と共に最初に主力選手となった戸田。筆者は阪急時代の戸田が南海相手にノーヒットノーランをしたのを見ている。さらにスローカーブが売りで、阪急の上田利治監督に「公園でおっさんが投げとるみたいな球、なんで打たれへんねん」と言われた左腕の西川。打者との駆け引きが抜群だったのだ。硬軟取り混ぜた豪華先発陣だ。  救援は金田正一の甥っ子で、日ハムではクローザーとして活躍した長身の金石、これも先発から中継ぎに転向した新美、さらに巨人の橋本、入来弟とならぶ。救援陣がやや弱いが、一線級の投手陣と言ってよいだろう。監督は名将鶴岡一人の子息でPL学園監督の鶴岡泰か。  PL学園硬式野球部は2016年の夏の大会を最後に「休部」となった。大阪のいわゆる「私学七強」では最も新しい学校だったが、甲子園では最も実績を挙げている。しかし同時にいろいろな不祥事を起こしたのも事実だ。  近年は、細々と続いていた軟式野球部も2024年で休部。そもそも生徒数が激減していて、学校自体の存続も危ぶまれる事態だ。OB会長の桑田真澄が尽力しているが、PL名物の人文字を見る機会はもうないのかもしれない。  ***  それぞれの選手の通算成績などは別表をご覧いただきたい。広尾氏は4強としてPLの他、横浜高校、中京大中京高校、広陵高校出身者のベストナインを選出しているが、ひいきの高校をもとにご自分で作ってみるのも楽しいに違いない。 広尾 晃(ひろお・こう) 1959年大阪府生まれ。スポーツライター。立命館大学卒業後、広告制作会社、旅行雑誌編集長などを経てライターに。ブログ「野球の記録で話したい」を運営。著書に『巨人軍の巨人 馬場正平』『データ・ボール アナリストは野球をどう変えたのか』などがある。

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