なぜ周囲の人々は次々と離反していったのか?実弟が明かす「アントニオ猪木」への「最大の誤解」

2022年10月1日、79歳で亡くなったアントニオ猪木。今なお熱烈なファンを擁する猪木だが、世に喧伝されるそのイメージは二重三重の皮膜に包まれてきた。 話題の新刊『兄 私だけが知るアントニオ猪木』(講談社刊)は、猪木家の末弟である啓介氏から見た、5歳年上の兄・猪木寛至の「人間の記録」だ。ブラジルへの移民、力道山との出会い、新日本プロレス、政治と事業、4度にわたる結婚、そして晩年の兄弟断絶と闘病。70年余に及んだ兄弟の歴史がすべて記されている。 新日本プロレス時代の右腕だった新間寿氏をはじめ、選手、フロント、あるいはビジネス上のパートナー……アントニオ猪木を取り巻く人間は、必ずと言っていいほど離合集散を繰り返すこととなった。猪木唯一の実弟である啓介氏が、その原因を振り返る。 『兄 私だけが知るアントニオ猪木』(第31回) 人材育成やマネジメント力はゼロ 私がブラジルに戻った1983(昭和58)年以降、新日本プロレスの人気には陰りが見えるようになっていた。 佐山、長州、前田ら人気の若手選手が団体を去り、選手層が弱体化したこともあるし、40歳を過ぎた兄貴も、肉体的な衰えは隠せなかった。テレビの視聴率も徐々に下降し、さまざまなテコ入れが試みられたが、逆にそれが従来のファンの反発を受けるなど、悪循環を止めることができなかった。 なぜ兄貴の周囲にいる人間は離反するのか。選手しかり、フロントしかり、あるいはビジネス上のパートナーしかり、アントニオ猪木を取り巻く人間は必ずと言っていいほど離合集散を繰り返す。どうしてそれが起きるのかといえば、兄貴の持って生まれた性格を周囲が誤解しているからである。 アントニオ猪木はスター選手であるが、いわゆる「親分」ではない。リングの上では相手の持ち味を引き出し、最高に輝かせることを得意としたが、団体の経営者として部下の能力を引き出したり、人材を育成しマネジメントする力はまったくゼロ。あくまで自分は神輿の上に乗っているだけで、自分のために尽くしてくれる籠をかつぐ人、ワラジを作る人の心の内側には、なかなか思いが至らない人間だった。 親分肌の人間ではなかった スター選手の周辺には、自分が動かずとも向こうから人間が集まってくる。兄貴も子どものころから自分中心の人間だったわけではないが、長きにわたってプロレス界のトップに君臨しているうち、目が曇ってしまった部分は多分にあったと思う。 タテ社会のプロレス団体には、兄貴に憧れた若者が入団してくるし、社員も「アントニオ猪木のために働きたい」という気持ちが土台にある。トップの兄貴がもう少し全体に目配りして、たとえば頑張っている若手を抜擢したり、会社に貢献した社員を人事や報酬で報いたりすれば違ってくるのだろうが、「他人の面倒を見る」という親分肌の性格を持ち合わせていない兄貴はいつも「てめえは勝手に生きろ!」と薄情なことを言う。 最初は「一生、猪木さんについていきます!」と心に誓っていた選手たちも、どこかで兄貴の非情な一面に触れ、気持ちが離れていってしまう。アントニオ猪木に幻想を抱き、親分肌の人間であると思い込んでいる人ほど、その傾向が強い。 もっとも、自分に弓を引いた人間を許し、水に流すことができるのは兄貴の不思議な持ち味だ。それもまた、ある種のご都合主義だったかもしれないのだが、兄貴は人の悪口をあまり言わなかったし(ときどきは罵っていたが)、どんなにスキャンダルを書きたてられても、雑誌や新聞を敵視することもなく、「あいつらも仕事さ」と大人の対応を見せていた。 いろいろな人間との出会いと別れがあった80年代だが、兄貴にとって最大の意味を持っていたのは、倍賞美津子さんとの別れだった。 【つづきを読む】「離婚しても、倍賞美津子さんはアントニオ猪木『最愛の人』であり『戦友』だった…」実弟が回想する《夫婦の絆》

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