フジテレビがGWに『学校かくれんぼ』『逃走中』を連日放送…”子どもの遊び”特番が単なる《苦しまぎれ》とは言えない理由

単に「子どもが休み」だけではない ゴールデンウィーク中の3日(土祝)『新しいカギ遠征SP 学校かくれんぼ佐賀でまるごと2時間』(フジテレビ系、19時〜21時)、4日(日祝)『逃走中〜ゴールデンコンビ〜』(フジテレビ系、19時〜21時47分)が放送される。 前者は「かくれんぼ」、後者は「鬼ごっこ」という子どもの遊びをベースにしたバラエティだが、なぜ大型連休中のゴールデンタイムで連日放送されるのか。その背景を掘り下げていくと、単に「子どもの学校が休みだから」ではなく、苦境にあえぐフジテレビを救う道標になりそうな可能性が見えてくる。 両特番ともに子どもから人気の番組であるのは間違いないところ。『学校かくれんぼ』は全国の小中高生から注目を集め、『逃走中』も長年学生層からの支持を得てきた。 出演者を見ても、『学校かくれんぼ』には霜降り明星、チョコレートプラネット、ハナコに加えて今回は、あのなどがゲスト出演。『逃走中』には子どもに人気のあるHIKAKINのほか、人気子役の永尾柚乃と番家天嵩を含むキッズ6人が名を連ねている。 フジにおけるIPビジネスの柱 まず簡単に両番組の概要を書いておくと、『逃走中』は、出場者がハンターから逃げた時間に応じて賞金を獲得できるゲームバラエティ。脅威の走力を誇るハンターとの手に汗握る攻防や趣向を凝らしたミッションなどで、2004年から不定期放送されながらジワジワと支持を拡大してきた。 一方、『新しいカギ 学校かくれんぼ』は、ある学校内に隠れた芸能人を生徒全員で探し、全員を見つけ出せたら図書カードを獲得できるゲームバラエティ。制作サイドはプロの美術がプライドを懸けて隠れ場所を作り、生徒は真剣ながらも友人との思い出作りのムードもあって、2022年11月のスタート直後に看板コーナーとなった。 「かくれんぼや鬼ごっこなんて子どもの遊びじゃないか」と軽く見られがちだが、フジテレビにとっては今後の業績を左右する重要なコンテンツの1つであることは確かだ。リアルタイムテレビを見る人が減って放送収入の低下は避けられず、かといって配信収入を急激に上げられるかと言えば広告費の安さなどから簡単ではない。 だからこそ重要なのが、IP(知的財産)を活用したビジネス。番組と映画や舞台を連動させたり、イベントやグッズなどを販売したりなど、さまざまな形で収益を得ていくことが求められている。放送収入のみのビジネスでは“マス”向けになりがちだが、IPビジネスを進めることで“コア”へのサービスとなる上に収益もあげられるなどメリットは大きい。 実際、『逃走中』はオフィシャルグッズの販売だけでなく、LINEスタンプ、ボードゲームやテレビゲーム、ノベライズ本や絵本、さらに2022年に舞台、2023年にアニメ、2024年に映画が制作された。『学校かくれんぼ』も今年3月に小説が発売されるなどIPビジネスを進めはじめているところであり、今後の多角的展開が有力視されている。 その他でも、放送中にXの動きが大きいなどライブイベント感があるため一定の視聴率が確保できること。派生番組の放送・配信、海外へのライセンスビジネスなどでも期待できることもあって、「苦境続きで制作費の捻出が難しいから放送しない」という選択肢は自滅行為となってしまう。両番組はドラマやアニメと同じようにIPビジネスの柱と言っていいだろう。 親子そろっての“共視聴”を狙う 一年前の昨春フジテレビは改編のテーマに「一緒に笑えるだけで、しあわせ」を掲げて、家族・仲間が一緒に楽しめる“共視聴”の番組を増やすという方針を示した。そのシンボルとして木曜ゴールデンタイムに、令和・平成・昭和3世代の定番ソングをフィーチャーした音楽バラエティ『ミュージックジェネレーション』を編成。続く秋の改編でも家族みんなで楽しめる“共視聴”を進めるという方針を強調していた。 その「家族みんなで楽しめる」の鍵を握っているのは子どもたち。デジタルネイティブである子どもたちにテレビをリアルタイムで見てもらうことのハードルは高く、逆に言えば子どもたちを引きつける番組があれば親も引き寄せられる。 その点、子ども人気の高いフジテレビの『学校かくれんぼ』と『逃走中』は民放他局にとっては羨望のコンテンツ。「似たようなゲームバラエティを制作したが成果をあげられていない」という状態が続いている。ゲームバラエティという分野では独走状態だけに、親子ともに休みのゴールデンウィークに連日放送することのインパクトは大きく、そのブランドをさらに揺るぎないものにできるかもしれない。 現在フジテレビは一連の騒動で大人層から不信感を抱かれ、なかには「チャンネルを合わせない」という厳しい声も散見される。だからこそ子どもたちを味方につけることで、大人の厳しい目線を変えていきたいところ。現在の30〜50代がそうであったように「子どものころからフジのバラエティを見て育ってきた」という状態の再現を狙う上で『学校かくれんぼ』と『逃走中』の重要度は高い。 子どもやファミリー層からの人気を得たいタレントたちにとっても、『学校かくれんぼ』と『逃走中』は「ぜひ出演したい番組」の1つとなっている。特に若手タレントは「かくれんぼや鬼ごっこで逃げ切って子どもたちのヒーローになりたい」と意気込んでいるという。 4日連続で子どもをターゲットに 『逃走中』は一連の騒動で「ロケを断られてしまい撮影できない」という報道もあったが、今回の放送分は富士急ハイランドで開催された。子どもから支持を集める番組である以上、手をあげたい施設や企業は多く、多少断られることはあっても放送できないというレベルではないだろう。一方、『学校かくれんぼ』は応募が殺到して引く手あまたの状態。それどころか、なかなか当選しないため自校主催の『かくれんぼ』を企画する学校もあるという。 制作費の問題も前述したように苦しいのは確かだが、特番につきものの大がかりなセットや演出は不要であり、番宣なども含め若手中心だけに出演者報酬は抑えられる。ゴールデンウィークの目玉としては、新たな特番を手がけるよりもはるかに効率がいいことがわかるのではないか。 ちなみにフジテレビは5日(月祝)に『新ドラマ人気番組対抗クイズ!ドレミファドン GWの祭典SP』(19時〜21時)、6日(火祝)に『実録!奇跡の救出劇』(19時〜21時)を放送する。 前者は1976年スタートの国民的音楽クイズバラエティであり、子どもを含む“共視聴”という狙いにフィット。後者は海上保安庁、警視庁、山岳警備、消防の全面協力による特番であり、子どもにとってのヒーローをフィーチャーした内容から、やはり“共視聴”が期待できる。 かくれんぼ、鬼ごっこに続くゴールデンウィークのリレーとしては有機的な編成と言っていいだろう。笑いに振り切った特番では「反省が足りない」「悪ふざけ」などと言われがちな今、子どもをメインターゲットに据えた戦略は合点がいくものであり、もしかしたらこれが再生の第一歩になるのかもしれない。 【さらに読む】“富士の樹海”で見つかった「お笑い芸人」…ネタ帳に書かれていた「切なすぎる最期の言葉」

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