【大阪万博・GW体験記】「コンビニに入場規制」「肩に傘が当たったとトラブルに」...弾丸参戦した記者を待ち構えていた「万博のリアル」

4月28日、大阪・夢洲。小雨が降りしきる中、万博会場を囲むように設置された、高さ最大20メートルの木造建造物「大屋根リング」の上で、本誌記者はがっくりと肩を落としていた。 見渡す先には、会場内を出歩く無数の人々や、各パビリオン(展示館)から伸びる長蛇の列が。万博の目玉とも言われる「イタリアパビリオン」には、およそ300人の行列ができており、会場は大いに沸いている。 だが、記者は大阪旅行のついでに、軽い気持ちで万博に参加した一人。当然パビリオンの事前予約は取っておらず、当日予約もままならない。公式サイトを何度のぞいても、人気パビリオンには「×」(空きなしを示すマーク)が表示されている。 「ちょっと万博を舐めすぎてた……」 記者はそうポツリと呟き、会場を楽しげに歩く人を見つめながら、再び肩を落とした。 日本での万博開催は20年ぶり 4月13日、ついに大阪・関西万博の幕が開けた。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに184日間、人工島の夢洲を舞台に開催される予定で、過去最多となる158の国と地域が参加。日本での万博開催は、2005年の愛知万博以来で、連日多くの観客で賑わいを見せている。 だが、ここまでの道のりは決して平坦なものではなかった。万博関係者はこう語る。 「テストランの最終日には、会場内の一角で高濃度のメタンガスを検知。開催初日にも、東ゲート周辺で煙と異臭が発生し、消防車や救急車など15台が駆けつける騒ぎがありました。 さらに開催2日目も、警備員に対して『リュックサックの中に爆弾があるんや』と話して手荷物検査を拒否した80歳の男が威力業務妨害の疑いで逮捕。その影響で西ゲートが閉鎖され、近くにいた200人ほどの来場者が一時避難を余儀なくされるなどのトラブルに見舞われました」 万博の基本計画では、会期中の半年間で約2820万人の来場者数を予定。これまで開館できていなかった「インドパビリオン」も1日にオープンするなど、今後も「万博熱」が高まっていくことが予想される。本誌記者もゴールデンウィークを利用して、大阪旅行のついでに軽い気持ちで万博に参加することにした。 人気パビリオンには3時間待ちの行列が 4月28日、正午すぎ。大阪万博が開催される夢洲駅に到着した。「Welcome to EXPO2025」と掲げられたアーチをくぐると、駅前は多くの人々で賑わっていた。そのうち外国人観光客は2割ほどで、大型連休の真っ只中ということもあり、家族連れの姿も目立つ。 大阪万博は「並ばない万博」の実現に向けて、来場者は原則としてネットで来場日時を指定する必要がある。ところが開幕初日には、約11万9000人の来場者が押し寄せたことで、入場ゲートでは最大2時間待ちとなる大行列ができたと報じられていた。 しかし、この日は混雑することもなく、すんなりと入場ゲートまでたどり着けた。万博は会場内にペットボトルの持ち込みは可能だが、ビン・缶の持ち込みは禁止されている。手荷物検査場でチラッとスタッフの足元に目を落とすと、そこに置かれたトレーには、飲みかけの缶ビールや缶コーヒーが積み重なっていた。 入場ゲートを通ったところで、大阪万博のマスコットキャラクター「ミャクミャク」のモニュメントのお出迎えだ。その後方に位置する、世界最大級の木造建造物「大屋根リング」を抜けた先に、巨大な2面のLEDスクリーンが設置された、アメリカパビリオンが現れた。 だが、入口付近から長蛇の列が続いており、その数およそ200人はいるだろうか。スタッフに声をかけると、入場するまで現在3時間待ちだという。 「基本的にアメリカパビリオンは『自由入場のみ』なので常に混雑していますが、パビリオンの中には、『事前予約制』を導入している国もあります。その場合、参加者は当日までに3度にわたってパビリオンの予約を申し込むことができますが、それとは別に『当日予約』というシステムもあるんです。 これは、入場当日に行きたいパビリオンを予約できる、ディズニーで言うところの『ファストパス』のようなもの。しかし、イタリアやカナダ、イギリスなどの人気パビリオンには予約が殺到するため、当日予約を取るのはほぼ不可能でしょう」(前出の万博関係者) 記者も入場後に公式サイトからパビリオンの当日予約を試みたが、時すでに遅し。海外パビリオンの多くは、何度アクセスしても「×」(空き枠なしを示すマーク)が表示されるのだった。 会場内のコンビニで見た「衝撃的な光景」 そこで向かったのは、比較的空いていたモザンビークパビリオンだ。「どこまでも広がる水平線をその目で」との文言が掲げられてあるとおり、館内の液晶にはモザンビークの海や街の映像が流れている。ベンチでは家族連れが休んでいて、穏やかな雰囲気に包まれていた。 また併設された特産品ショップには、民族衣装の生地として使われる「カプラナ」や、民芸品なども展示されており、初めてモザンビークの文化に触れることができた。 その勢いのまま、各国のパビリオンを回ろうとするが、現実はそう上手くいかない。日本でも知名度の高い国のパビリオンの前には軒並み行列ができており、入場することすらままならない。 その中でも、万博の目玉とも言われるイタリアパビリオンの行列は300人を超えている。スタッフに声をかけると、予約がない場合は3時間待ちだと告げられた。 ならばと、記者が向かったのは、25の国と地域が共同で展示している「コモンズ」のD館だ。西アフリカに属するブルキナファソパビリオンでは、民族楽器を演奏することができ、ナイジェリアパビリオンでも、民族衣装を自由に着ることができた。またキューバパビリオンでは、プロ野球のロッテやソフトバンクで活躍した、デスパイネの等身大プリントが展示されていた。 その後、雨脚が強まってきたことから、雨具を購入するため会場内にあるコンビニに急行。ところが、コンビニ前には40〜50人ほどの行列ができており、スタッフが入場規制を行なっている。入口専用と出口専用で分けられていた。 仕方なく最後尾に並んでいると、衝撃的な光景が飛び込んできた。なんと出口専用から、30代くらいの男性が勝手にコンビニに入っていったのだ。 さらに記者がコンビニに入ったあとも、店内は客でごった返している。みな手に持っているのは、おにぎりやサンドイッチといった商品がメイン。有人レジでは外国人観光客と思しき女性が利用する電子マネーが対応していなかったようで、店員と揉めていた。 「肩に傘が当たって客同士でトラブルに…」 また、気を取り直してグッズショップに向かうと、そこにも長蛇の列が。その上、行列が上手く整備されておらず、通路にはみ出している人も見受けられる。その中の一人はこう語る。 「さっき西口ゲートに向かおうとする60代くらいのおじさんが、こっちに向かって『おいどけや、ここ通路だろ』と突進してきたんです。その際に、列に並んでいた50代くらいの女性の肩に、男性が持っていた傘の先端が当たったみたいで、『許せない! 警察警察!』と怒りながら、そのおじさんの後を追っていきました。大きなトラブルにならなければいいんですけど……」 以降も、パビリオンの行列が終わることはなく、公式サイトの当日予約も「×」が並ぶ。そんな状況に疲弊した記者は、滞在わずか4時間ながらも気力を失い、万博を後にした。 【つづきを読む】後編記事『「情報弱者では万博は楽しめない」…関西在住の「通期パス」購入者が明かす、万博ガチ勢の「驚くべき行動」』では、パビリオンを賢く回る方法を聞いた。 【つづきを読む】《GW万博体験記》「情報弱者では万博は楽しめない」…関西在住の「通期パス」購入者が明かす、万博ガチ勢の「驚くべき行動」

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