目の前の方法に執着することで、かえって物事が進まなくなった経験はありませんか? 試行錯誤してもうまくいかないとき、今ある「可能性」を思い切って手放すことで見えてくる解決策があるかもしれません。 論理的思考問題の傑作を世界中から収集・解説し、20万部を突破している話題書 『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』 (ダイヤモンド社)から、潔く思考を切り替えることで解ける問題を抜粋して出題します。 知識や計算はいっさい不要。問われるは「考える力」のみ。一つの考え方に固執しない「発想力」があれば解ける問題です。ぜひ試してみてください! 宝石の郵送 何かの方法でうまくいかないとき、それに執着していては、袋小路にはまります。次は、潔く可能性を捨てることで道が開ける、そんな問題です。 ▼問題 取引先に宝石を送りたいが、相手の国は治安が悪く、南京錠をかけた箱でないと中身が盗まれてしまう。 南京錠をかければ盗まれることはなく、安全に郵送できる。どんな南京錠でもよく、箱にはいくらでも錠をかけられる。 しかし、あなたが持っている南京錠の鍵を、取引先は持っていない。 そして「南京錠のかかった箱」と一緒に「鍵」を送れば、当然、箱は開けられ中身が盗まれる。 どうすれば安全に宝石を郵送できるだろうか? 宝石を送りたいけれど、「南京錠のかかった箱」に入れないと安全に送れない。ここで問題となるのが、鍵の郵送です。しかし、鍵を箱と一緒に送っても、箱が開けられて中身が盗まれる。箱の中に鍵を入れたら、その箱を開ける鍵の郵送がさらに必要になる。かなり難しい問題のように思えますね。 数字がまったく登場しない論理的思考問題ですが、その分、発想力が必要になります。じつは驚くほどスマートな正解が存在するのですが……。さて、この状況を打破する方法とは? ポイントは往復の数 ヒント1箱は何往復させてもいい ヒント2「箱にはいくらでも錠をかけられる」がポイント どう考えても不可能そうですが、スマートに解決する方法があります。先に正解をお伝えしてしまいましょう。 � あなたは箱に「南京錠A」をかけ、取引先に郵送する � 箱を受け取った取引先が、そこに「南京錠B」をかけ、あなたに返送する � 箱を受け取ったあなたは、箱にかかった「南京錠A」を外し、箱を取引先に郵送する � 箱を受け取った取引先は、「南京錠B」を外して箱を開け、宝石を受け取る これです。 ヒントに気づけるか 発想が大事な問題なので、とくに解説することもないのですが、ポイントは2つ。 “箱にはいくらでも錠をかけられる” という情報から、発想できたかどうか。 基本的に論理的思考問題には、「無駄になる情報」は登場しません。この一文から、「ということは箱に複数の錠をかけるのかも?」と発想できるかどうかが分かれ道です。 そして、もうひとつ。「一度の郵送で解決するのは不可能だから、複数回の往復が必要になる」と気づけるかどうかも重要です。「一度の郵送で解決できるはず」という先入観に縛られていたら、この問題は解決できません。試行錯誤をしてみてダメだったら、潔く可能性を捨てることも大切です。 そうすれば、「複数回の郵送で解決する方法はないか?」と思考を切り替えられたことでしょう。そういう意味で、「水平思考」が必要な問題だったのです。 ◇正解 あなたは箱に「南京錠A」をかけ、取引先に郵送する。 箱を受け取った取引先が、そこに「南京錠B」をかけ、あなたに返送する。 箱を受け取ったあなたは、箱にかかった「南京錠A」を外し、箱を取引先に郵送する。 箱を受け取った取引先は、「南京錠B」を外して箱を開け、宝石を受け取る。 考え方のまとめ 数字がからまない問題は解けると大変気持ちいいですね。取引先に箱を開けさせるのではなく、「鍵をかけて送り返させる」と発想できた人は、なかなかの水平思考の持ち主です。ちなみに現実的に考えると、「箱を盗んだ人が、正解の手順を取引先に成りすましておこなう」という危険性があるかもしれません。ですが、そこは問題文の「南京錠をかければ盗まれることはなく、安全に郵送できる」という一文を信じましょう。 なお「異なる2つの鍵を使って安全に送受信をおこなう」というシステムは、現実でのサイバーセキュリティでもよく活用されます。公開鍵暗号方式と共通鍵暗号方式を組み合わせた「SSL」などがとくに有名です。 ●Point どう考えても活路が開けないときは、いっそその方法を潔く手放して、別の可能性を考えてみることも大切。 2本の線香を使って45分を計る方法は?先入観を捨てれば解ける問題【論理クイズ】