自衛隊と米軍「ズブズブの関係」に「シラを切る」日本政府…既視感の正体「まるで関東軍」

トランプ政権の発足から、はや3カ月。 日米同盟に「不公平」と不満漏らすトランプ。 アメリカに「従属」続ける日本が、「代償」として支払うものとは……。 『従属の代償 日米軍事一体化の真実』の著者であるジャーナリスト・布施祐仁氏と、『永続敗戦論 戦後日本の核心』の著者である政治学者・白井聡氏が、「トランプ2.0」下のアメリカ、そして日本のこれからについて語ります。 【対談】トランプ政権と対米従属 #6 ※本記事は、2025年1月31日にジュンク堂書店池袋本店様にて開催されましたトークイベント「「日本は対米従属から脱却できるのか?!—トランプ米大統領就任から考える『日本のこれから』」の一部を抜粋・編集したものです。 対米従属に感じるデジャヴ…正体は「関東軍」 白井指揮権密約問題というのは本当に、日本の対米従属の問題の本質にもつながってくる話です。「核持ち込み」についても同様のことが言えますね。本当のところはどうだったのか、どういう約束をしたのか、その約束がどういうふうに受け継がれてきたのか、そして実態は何であったのか。新しい制度をつくるというとき、本来であればそういったことを全て明らかにした上で国民に問わなければいけないはず。 ですが、この国の政府はそれをやる気が一切ない。だからある意味、今起きていることというのは、もともと日本の政府ってそういうものだったよね、というのが公然化したんだと捉えることもできようかと思います。これから、その指揮権をめぐる日米の曖昧さに一体どう対処するのか。 布施困ったことに、指揮権はあくまで別々です、とごまかし続けているんですよね。 白井そうそう。 布施米軍と自衛隊は互いに「調整」して緊密に連携はするけれども指揮権は別々、自衛隊が米軍の指揮下に入ることは絶対にない、というのが日本政府の表向きの説明です。でも、吉田茂首相が密約したように、実際には自衛隊は米軍の指揮下に組み込まれて動くと言うのが実態です。 米軍の作戦に組み込まれているという意味では韓国も一緒じゃないかと思う人もいるかもしれないですが、全然違います。韓国で想定されているのは、北朝鮮が韓国に攻めてきたときの韓国防衛作戦です。対して今、日本で想定されているのは、どこかの国が日本に攻めてきたときの日本防衛作戦ではなくて、中国が台湾に侵攻した場合の台湾防衛作戦です。前提が大きく違っています。 かつ、現場がどうなっているかと言えば、自衛隊のミサイル部隊と米軍のミサイル部隊が、中国の船を沈めるという想定の訓練をハワイでやっているんですよね。僕が入手した自衛隊の内部文書を見ると「日米共同指揮所」と書いてある。もう現場では、共同指揮所、要は共同司令部をすでにつくってしまっていて、訓練もやっているんです。しかも、これを視察した米太平洋陸軍の司令官が「自衛隊の兵器システムは米軍の火力統制下に入った」とあけすけに語っている。これがもう「実態」なんですよね。 にもかかわらず国会では、自衛隊は自衛隊の指揮下で、米軍は米軍の指揮下で、それぞれ独立した指揮の下で動きますよ、と繰り返している。いやいや、嘘ですよね、と言いたくなってしまう。 白井要するにそれって、シビリアンコントロールがめちゃくちゃになっているということですよね。日本の首相は嘘の答弁ばかりしている。台湾有事が本当に発生したとき、日本がそれに参加する/しない、あるいは、アメリカが参加するとして、それに対して米軍基地の利用を認めるか/認めないかについて、あたかも拒否権があるかのような振る舞いをしていますよね。 だけど実際には、拒否権なんかあるわけがない。いざとなったら協力して、こういうふうに動くんだということが、いつの間にか、現場レベルでもうすでにこれだけ決まっている。これはもはやシビリアンコントロールが崩壊しているのだと言わざるを得ません。 この状況が何に似ているかって、大戦時の関東軍と日本政界との関係性にそっくりなんですよね。あの時代の歴史というものを少しでも勉強している人からすれば、この状況にはものすごく既視感があるはず。 関東軍がまず満州事変を勝手におっぱじめてしまった。これに対して時の内閣は、「不拡大方針」を出したわけです。つまり、「賛成でない」ということですよね。でも賛成ではないくせに、とめない。そして現実に満州国というものができてしまったら、最初は「承認したくない」とか思っていたんだけど、結局承認してしまう。 そこからさらに数年経って、今度は盧溝橋事件を発端に支那事変が始まる。これもやっぱり東京の政界は、「いやいや、そんな勝手なことされても困る」と思った。でも現地軍がどんどん勝手にやってしまうので、ついには「国民政府を対手とせず」などという声明を出してしまう。 今振り返れば、むちゃくちゃだなと思うわけだけれども、当時の政治家たちに一片の同情をしたくなるのは、実際これを止める方法はなかったという事情ですよね。 当時、制度的にシビリアンコントロールというものが成り立たないような国家の仕組みだったので、どうしても止めることができなかった。そして、なぜ軍隊はそんなに強気に暴走できたのかというと、もちろん制度の問題もありますが、軍部が上手く天皇をイデオロギーとして使ったからです。 「統帥権は天皇に直結しているから、内閣総理大臣であっても軍の行動に容喙することはできないんだ」という論理でもって、天皇の意思をかさに着て軍隊が独走するという、シビリアンコントロールがまったく機能しないような状況が生じ、戦争がどんどん破滅的な拡大へと向かっていってしまいました。 「日米同盟」を神聖視する日本 白井これはまさに僕が『国体論』(集英社新書、2018年)で展開してきた議論と接合する点だと思うんですよ。結局、戦前の天皇制国家と同型の欠陥を戦後日本の国家も持っているではないか、と。 布施今のお話を聞いてある言葉が浮かびました。元・防衛大臣であり、現在は自民党の政調会長である小野寺五典(おのでら・いつのり)氏が、とある週刊誌のインタビューに、このようなことを答えていました。 いざ台湾有事になったらば、日本が戦場になるから、絶対に起こさないようにしなければならない。しかし、中国という国は話し合いができる相手ではないから、アメリカと一緒になって戦争に備えるしかない。戦争に備えることが抑止力になるのだ。そういったことを言って、最後、もし台湾有事が起こって、アメリカから「一緒にたたかってくれ」と協力を求められたら、日本は断れないと言うんですね。なぜかというと、断ったら日米同盟が毀損してしまうから。 要するに、日米同盟のためには台湾有事にも参戦し、結果として日本が戦場になってもしょうがないという考え方なわけですよ。戦前における天皇の権威といったものと同じように、「日米同盟」を絶対的に権威化してしまう。 それ自体が、白井さんがまさに『国体論』(同上)でお書きになられているような話なんだと思うんですね。ある種の自己目的化です。この論点、ここからさらに掘り下げていきたいと思います。 さまざまな講演会での質疑応答で、なぜ日本はアメリカにここまで従属しているのかと聞かれ、5分前後で答えなければならないような状況を、僕はよく経験するのですが、白井さんならどうお答えになりますか。 白井そうですね。やはり精神的なものというのが非常に大きいと思いますよ。そもそもこんな状態を恥ずかしいと思っていない。どの国だって、もちろん大国への従属や依存といった状態は何かしらの形で存在するわけだけれども、そういった現実の束縛の中でもがき苦しみながら、できる限り独立した存在でありたいと願って、努力する。これが世界の常識です。しかし日本だけは、それをしなくてよいと思っているわけでしょう。 布施そうですね。 白井「所詮はそんなもの」である日本が、世界から尊敬されるはずもない。今までは「金の力」で尊敬を勝ち得てきたんだけれども、その金の力が急速に衰えつつあります。これからどうなっていくのかといえば、非常にストレートに、もろに軽蔑される、そんなフェーズに入ってくるだろうと思いますね。 米国を「恐怖の底」へ突き落とした中国!米国が日本を「犠牲」にしても守りたいものとは一体…

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