「上海国際モーターショー2025」が2025年4月23日〜5月2日、中国・上海で開かれた。日本を含む26の国・地域から約1000社が出展した。注目されたのは、日本メーカーはトヨタ自動車が中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)の技術を用いた中国専用車を公開するなど、現地メーカーとの連携である。 トヨタは中国市場ではEVに注力 今回、トヨタなどの日本メーカーは、競争が激化する中国市場で中国ユーザーの嗜好に合わせ、現地で開発した最先端の戦略車を披露した。 中国は新車販売に占める電気自動車(EV)の比率が高い。このためトヨタは「bZ4X」「bZ3」「bZ3X」「bZ5」に続くEVとして新型車「bZ7」を発表。LEXUSブランドでは「UX」「RZ」に続くEVとして新型「ES」を発表した。 日本ではEVの車種が少ないトヨタだが、EVの主戦場・中国ではトヨタもEVに注力していることがわかる。 このうち、新型のbZ7はトヨタが広州汽車集団有限公司(GAC)などと現地で共同開発したフラッグシップモデルだ。トヨタは1年以内に発売するbZ7に「最新の知能化技術を搭載する」と説明している。 詳細は不明だが、トヨタはファーウェイの基本ソフトをトヨタとして初めて採用するようだ。各種の情報をインパネのディスプレーに表示するようで、クルマのスマホ化が進みそうだ。 トヨタは運転支援技術でも中国企業と組んだようだ。ただし、トヨタがファーウェイの基本ソフトを中国以外で使うとは考えにくい。bZ7はあくまで中国専用なのだろう。 DeepSeekを「車内でのサポートなどを行うAI技術に」 ホンダは中国市場向けEV「イエ」シリーズの第2弾となる「広汽Honda GT」と「東風Honda GT」を世界で初公開した。 注目すべきは、ホンダが中国のAI新興企業DeepSeek(ディープシーク)の技術を採用したことだ。詳細は不明だが、ホンダは「車内でのサポートなどを行うAI技術にDeepSeekを新たに採用し、より快適で楽しい車内空間の実現を目指す」と説明している。 今後、ホンダはすべてのイエシリーズにDeepSeekのAI技術を採用し、既に販売しているイエシリーズにもOTA(Over the Air)で対応するという。 OTAとは無線でデータを送受信し、クルマの車載コンピューターのソフトウエアを更新することだ。世界では米テスラが先行し、これまで自動車ディーラーで修理していたような不具合にも対応できる。スマホやパソコンのソフトウエア更新に似ている。 OTAは日本国内でもトヨタなどが一部で取り入れているが、まだ本格的には普及していない。ホンダが中国以外でもDeepSeekのAI技術を採用するとは言えないが、注目に値する。 日産は自動運転技術のMomentaと提携 このほか、日産自動車は、近日中に中国市場で発売予定の新型EV「N7」の詳細な内容を明らかにした。N7は2024年11月の広州国際モーターショーで初公開し、東風日産乗用車公司が生産・販売するモデルだ。 中国の自動運転技術の新興企業Momenta(モメンタ)と提携し、「ナビゲートオンオートパイロット」と呼ぶ「地点から地点への移動が可能な高度な運転支援システム」を採用したという。 日産は同システムについて「高速道路では合流や追い越しなどの複雑な操作をシームレスに処理し、市街地では車線変更や複雑な曲がり角の状況、他の車両が不意に車線に合流した場合などでも、スムーズに対応し、ドライバーに安心感を提供する。自動駐車機能によって、斜めや狭いスペースなど、難しい状況での駐車にも対応する」という。 トヨタ、ホンダ、日産とも、上海国際モーターショーに出品した中国専用EVを日本で発売する可能性はゼロだろう。しかし、OTAや自動運転など、将来的に日本でも同様の技術を採用する可能性は高い。その意味で興味深く、将来を占うモーターショーだった。 (ジャーナリスト 岩城諒 )