「減反政策」に翻弄されるコメ農家の実情 田植えの時期を迎える北海道 終わらない“令和の米騒動”

北海道内ではまもなく田植えの時期を迎えます。 しかし、コメの高値が続き、放出された備蓄米も十分に行き渡っていないことが明らかになりました。 “令和の米騒動”に翻弄されるコメ農家を取材しました。 高値が続くコメ… ラーメン店でも続く苦労 クリーミーでコクのあるスープともちもちとした中太麺。 こってりと濃厚な豚骨ラーメンはー ごはんとの相性がバツグンです! 札幌市西区のラーメン店です。 ランチタイムはごはん1杯を無料サービス! (客)「ごはんが進むのでおかわりしたいくらい。コメが大好きなのですごくうれしい」 (客)「ありがたいですね、高いですからコメ」 客のおよそ9割が無料のごはんを注文し、ランチタイムだけで10キロ以上のコメを使用するといいます。 (らーめん麺GO家西野本店 阿部生剛さん)「(コメの仕入れ値は)去年のいまごろから比べると1.5倍~1.7倍まで上がっている。苦しいが客に喜んでもらたいということで継続している」 「コメを使わない日が増えた」安定供給できずスーパーも苦悩 いまも高値が続くコメ。 スーパーを訪ねるとー (長岡記者)「コメ売り場では5キロ4000円台が並ぶ中で、一番安いのが3800円台です」 (買い物客)「すごく高いと感じている。(子どもが)最近よく食べるのでコメの消費がすごく大きくなったので、もう少し下がってくれるとうれしい」 (買い物客)「買う以外ないので買っている。ラーメンの日やパスタの日、そうめんの日などコメを使わない日が増えた」 この店に入荷するコメは月におよそ800キロ。 思うように量を確保できず、客の期待に応えられていないといいます。 (クーリッチ拓北店 高西邦明社長)「安定して供給するだけの数がまったくない。もっと入ってきて客に価格訴求できたらいいが、特売などが打てない状態」 “田植え”の季節到来 コメ価格は去年の2~3倍の高値で取り引き コメどころの空知では、田植えの準備が始まっています。 (コメ農家 中村寛郎さん)「ここがハウスですね、苗場になっています。4月6日に植えた苗です」 (長岡記者)「生育状況は?」 (コメ農家 中村寛郎さん)「いいですよ、すごくいいと思います」 芦別市で5代続くコメ農家の中村寛郎さん。 2024年の新米の時期から卸売業者の買取価格が上がり、いまも高値で取り引きされているといいます。 (コメ農家 中村寛郎さん)「(ほかのところは)すごい金額がついているので、1俵(60キロ)4万とか5万、最大で5万数千円というところがあったみたい。去年の4月ならまだ1万円台、1万6000円ぐらい。すごいですよね。2倍・3倍になっている」 中村さんの収入も上がったといいますが、肥料や農業機械の経費なども上がり続けていて、先行きに不安を感じています。 (コメ農家 中村寛郎さん)「値段が下がって元に戻ったら大変。肥料も上がっているので。(買い取り価格は)これほど高くなくてもいいが、ある程度価格がつかないと経営していけない」 価格高騰と品薄が続くコメ。 今週、農林水産省が公表したコメの平均価格は5キロあたり4220円と、16週連続で値上がりしています。 その背景にあるのは備蓄米の流通の停滞です。 国が3月に放出した備蓄米およそ21万トンのうち、小売店に引き渡された量はわずか3000トン。 全体の1.4%にとどまっています。 コメの卸売会社の社長は、備蓄米の確保には高いハードルがあると話します。 (こめしん 紱山大介社長)「備蓄米を購入した業者からの通知もないので、仕入れること自体も難しい。これからも継続して備蓄米を放出し続けると政府が発表しているので、量に関しては新米まで継続できる量が流通すると思う」 <異例の発表>生産目安の見直し実施 農家の複雑な思い こうした中、2025年の道産米の生産について、異例の発表がありました。 (道農政部 花岡弘毅生産振興局長)「(コメの)安定供給に支障が生じかねないということがあって、今回目安の追加設定をさせていただいた」 道やJAなどでつくる水田部会は、当初の生産の目安からおよそ1万7000トン増やし、51万4000トンに引き上げました。 生産目安の見直しは初めてのことです。 空知の妹背牛町でコメ農家を営む長谷さん。 こうした動きに複雑な思いを抱いています。 (コメ農家 長谷浩幸さん)「コメ作りは控えてくださいという時代がずっと長きにわたって続いていた。いまはもう逆にコメを作ってくれというような風潮になっている。いままで抑止作物でコメを扱ってきたというのは一体なんだったんだという風に国に向かって言いたいですよ」 1970年から始まった国の減反政策。 コメが余らないように生産量を調整して、価格の下落を防ぐのが狙いでした。 減反政策は農家の競争力をあげるため、2018年に廃止されましたが、道などによるコメの「生産目安」の設定は続けられています。 減反に協力し、一部の水田を畑に変えてきた長谷さん。 国民の主食であるコメの政策に疑問を感じています。 (コメ農家 長谷浩幸さん)「農家は不安定要素が多い。(コメ価格は)市場原理ですから、物があふれていると値段が下がる。足りないと上がっていく。主食を作っている段階でそれにさらしていいのかという。どうなんだろうというところがあるんですね」 長谷さんは、農家の不安定な収入では将来的なコメ作りに影響が出てしまうと懸念します。 (コメ農家 長谷浩幸さん)「不安定要素があるがゆえに、後継者が若者が飛びつかないひとつの要因だと思う。若い世代が飛びつく産業でない限り農家は大変なのではないか」 コメの政策に詳しい専門家は、国のコメ市場への関与が必要だと指摘します。 (酪農学園大学 相原晴伴教授)「生産量の減少が進んで、それがコメ不足になって、コメの価格が高くなってしまった。その反省を踏まえて、政府は余裕を持った生産を行って、もし余ったら政府が備蓄米として保管して、不足したら放出するというように流通面で政府がもっと関与すべきと考える」 国の政策に翻弄されてきたコメ農家。 安心してコメ作りができるように先を見据えた対策が求められます。

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