「マッチングアプリは“ドーパミン無限放出ツール”」精神科医・香山リカ氏が分析する若者が合コンよりアプリにハマるワケ《マッチングし放題の罠》

 1年以内に結婚した夫婦の出会いのきっかけで、「マッチングアプリ」が2年連続でトップ(29.8%)になった(明治安田生命「夫婦をテーマとしたアンケート調査」より)。年代別では20代が最多(20.7%)。出会いの場に出かけなくても、スマホでどこでも手軽につながれるマッチングアプリは、「恋人探し」「パートナー探し」のための出会いツールとして定着しつつある。 【グラフ】1年以内に結婚した夫婦が出会った「きっかけ」ランキング  なぜマッチングアプリが若年層から支持されるのか。そうした便利さの反面、相手探しにのめり込み、やめられなくなってしまう人もいる理由とは何か。  医師だけでなく大学教員としても、若者と長く接してきた精神科医の香山リカ氏が、マッチングアプリのメリット・デメリットや利用者の実態を綴った『マッチングアプリ依存症』(内外出版社)より、マッチングアプリにハマる理由をお届けする。(同書より一部抜粋して再構成)【全4回の第1回】  * * *  そもそもマッチングアプリが流行っている要因の1つに、恋愛経験が少ない若者の増加があげられます。  リクルートブライダル総研の調査によると、日本の20代未婚男性の46%は、異性と一度も交際したことがないそうです。  恋愛経験がない人全員がコミュニケーションに怖気づいているというわけではないと思いますが、それでも、「初対面の相手にいきなり『LINEを交換しましょう』『携帯電話の番号を教えてください』と切り出すのが苦手」「どうやってデートのきっかけをつくったらいいのか分からない」と思っている人は多いのではないでしょうか。  最近、「TELハラ」というハラスメントが話題になりました。「職場の上司が新人や若手社員に、メールではなくいきなり電話をかけて対応を求めること」を指す言葉なのですが、「上司からの電話でさえハラスメントになるのか」と少し驚きました。 「リアルな会話のやり取りはなるべく避けたい」 「できればLINEやメールで済ませたい」  というのが今の若者のデフォルトになっているとしたら、相手に知られないうちに選んだり拒絶したりができるマッチングアプリが流行るのも、当然といえます。  マッチングアプリ上でのコミュニケーションのハードルは、とても低いです。相手が自分のことをどう思っているのかも、ある程度分かった上でやり取りができます。 「出会いを求めてイベントや合コンに参加したり、サークルに入ったりするのは怖いしわずらわしいけれど、恋愛はしたいし、恋人は欲しい」  そう願う若者にとって、パートナー探しの第一歩としてこれほど適したツールはないでしょう。 勇気はいらない、恥はかかない、嫌なら即ブロック  昭和時代の若者たちは、「電話番号を教えていただけませんか」と意中の相手にドキドキしながら学校や職場で伝えていました。もちろん、「すみません、他に好きな人がいて」と断られるかもしれないので、聞く方は必死です。  しかし、今の若い世代は、「断られたら生きていけない」「そんな恥をさらして、同じ職場でその後どうやって一緒に働いたらいいのか分からない」と考え、あまり大胆な行動はしないようです。「恥をかくのは絶対にイヤ」というのも最近の若者の特徴です。  そういう意味でも、自分の恥や失敗は誰にも見られないマッチングアプリは、彼らにとって、とても快適なツールであるように思います。  さらに、今の人たちは制約が苦手。食べ放題、飲み放題、歌い放題など“放題”に慣れています。  マッチングアプリは、基本的に24時間365日、同時に何人もの異性とやり取りができるので、つながり放題です。今の時代にもマッチしているのでしょう。  ただ、中には付き合い放題になる人もいるので要注意です。「頻繁に会う仲だけど付き合ってはいない」という人が何人もいたり、友達なのか恋人なのか、いわゆるセフレなのか分からないような関係性が多数発生して、自分でも誰とどんな関係を築いているのか分からなくなることもあるでしょう。  そしてさらに問題なのは、ブロックし放題にもなることです。  ちょっとでも気に入らなくなったら、簡単に相手をブロックできてしまう。自分の身はそれで守れるかもしれませんが、何回か会って相手もその気になっていたのに、いきなりブロックされたらその人はどう思うのか。もし、自分がされたらどう思うのか。  そういうことに想像力が働かなくなるのは問題だと思います。 マッチング成立で脳内にドーパミン分泌  人間の神経伝達物質のひとつに、ドーパミンがあります。「幸せホルモン」とも呼ばれるこのドーパミンは、様々なシーンで分泌され、人間に快感や幸福感をもたらします。  恋愛でワクワクドキドキしているときにも、たくさんのドーパミンが脳内に分泌されます。それにより、より高揚感や幸福感を感じているといわれてきました。マッチングアプリで異性から「いいね」をもらったり、マッチングが成立したときにも、そのたびに脳内でドーパミンが分泌されていることでしょう。  はじめて会う人、はじめてのデートなど、はじめて何かをするときは、気持ちが高揚するものです。  次々新しい人に出会うことができるマッチングアプリでは、そのはじめての出会いの体験が無限にできます。お互いがマッチングすれば、実際のデートにもつながります。そこにスリルが伴うと、その後の幸福感はより高くなります。  マッチングアプリは、「ドーパミン無限放出ツール」ともいえるのです。  また、このドーパミンの放出には、「中毒性がある」ともいわれています。ある行動でドーパミンが分泌され快楽を感じると、脳は再び、同じことをしたくなります。そして、今度はさらなる快楽を得ようと、もっと頑張ってしまいます。ギャンブル依存も、同じ仕組みで起こることが知られています。  マッチングアプリでの相手探しをやめられなくなってしまったり、何人もの相手と同時並行でデートを重ねてしまったり。そういった行動の背景には、このドーパミン中毒も大きく関係しているのです。 (第2回に続く)

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