アメリカのトランプ大統領が、国別の相互関税の税率を示してから約1か月。東海地方で広がる影響を追跡しました。 【写真を見る】「10億円なくなりそう」トランプ関税で日本の製品が売れなくなる? 東海地方の企業63.2%が「業績にマイナスの影響ある」と回答 (アメリカ・トランプ大統領) 「われわれはアメリカを再び豊かに、豊かで良い国にします」 4月2日、アメリカのトランプ大統領が打ち出した、関税政策。全ての国の輸入品に対して10%の関税を課し、さらに国別に関税を上乗せする「相互関税」を発表しました。日本に示されたのは、上乗せ分もあわせて「24%」です。この突然の発表に街の声は。 (サービス業 40代) 「仕事にどれくらい影響するのか、業績が下がるのか。自分の生活にも直結するからその部分は気になる」 (大学生 20代) 「中国とアメリカの関税のかけ合いがすごい。iPhoneとか高くなると聞いたのでこれから景気が悪くなるのかなって」 (接客業 40代) 「何がどう24%なのか。なんでかな?何かな?って。今回のことで勉強しないといけないと思った」 “トランプ関税”で日本の製品が売れなくなる可能性も? 改めて簡単に説明すると… 例えば5%の関税がかかっている製品を造り、100万円分アメリカに輸出する場合、関税は5万円です。ここに相互関税が加わると、24万円が上乗せされ、関税の総額は29万円になります。これを全て販売価格に転嫁すると、製品そのものから約3割増しの価格で売ることになり、日本の製品がアメリカで売れなくなる可能性があるのです。 しかし…相互関税の発動からわずか13時間後には、上乗せした関税を90日間停止すると発表。その間課せられるのは、全世界一律の10%の追加関税です。二転三転する発言に世界中が振り回されています。 「10億円なくなりそう」 (竜製作所 石田恭一郎社長) 「新年度の売り上げ見込みは?」 (社員) 「5月が12億、6月以降は4~6億円を推移している」 愛知県大府市の工場で営業会議を行っていたのは、竜製作所。自動車工場などの生産機械をオーダーメイドで造るメーカーで、アメリカと中国、台湾に拠点があります。 竜製作所に発注が来るのは、取引先のメーカーがどこかの国に工場を造ったり、ラインを増やしたりするときです。取引先が設備投資を予定していた国にアメリカが高い関税をかければ、その設備投資が中止になってしまう可能性が出てくるのです。 (石田社長)「なくなりそうな案件は、リストアップしている?」 (社員)「数件は(なくなる)可能性がある。10億円に満たないくらいは、全て飛んでしまうと(なくなる可能性が)ある」 (石田社長)「10億円弱なくなりそうな案件がある?」 この企業の昨年度の売り上げは約88億円。10億円の受注がなくなれば大打撃です。 (石田社長)「今年度に限ってはそういう(例年通りの)数字の積み方だけでは甘い。(取引先の)製品が最終的にアメリカに行くか確認しないといけない」 「日本とアメリカ」以外にも注視しなければ 多くの企業にとって予想外だったのは、トランプ大統領が示した、国の名前がずらりと並んだリストです。日本は24%、EUは20%と言った数字が並ぶ中、ベトナムには46%、カンボジアは49%など東南アジアにも極めて高い関税がかけられたのです。 竜製作所の取引先は東南アジアに生産拠点を持つ日本のメーカーが多く、アメリカと各国の交渉次第では、設備投資を見送る企業が出てくると考えています。 (石田社長) 「日本とアメリカの関税交渉がうまくいったから、全て問題が解決したということではなく、ではアメリカとフィリピンはどうか、アメリカとインドネシアはどうか。我々に影響する最後の1か国の交渉が終わるまで注視していかなきゃいけない」 日本も、良い条件を勝ち取るべく、交渉を続けていますが、仮に日本が有利な条件を勝ち取れたとしても、取引先が拠点を置く国にどのような条件が課されるのか、いまだ不透明な状態が続きます。 石田社長も、「10月11月くらいから設備投資計画の見直しが出てくるのではないかと考えています。もう(受注が)なくなることを前提にして、(通常の)120~130%の仕事を取っておかないと安心できない」と不安を口にします。 東海三県で行った調査では、トランプ大統領の関税政策の影響について、63.2%の企業が「業績にマイナスの影響がある」と回答しました。これは全国平均を10ポイント以上上回ります。 「少なからず影響が出ると警戒している」 あいち銀行の刈谷支店。入行7年目の浅見渉人さん。日々、担当の中小企業約50社と、融資の相談を行っています。 (あいち銀行刈谷支店 浅見渉人さん) 「資金繰りや事業の状況確認で面談に行く」 トランプ大統領の関税政策が打ち出されてから、1日5社以上を回って、融資が必要になるほど影響がないか探っています。 (浅見さん)「少なからず影響が出ると警戒しているので、そういう話題になることが多い」 この日、向かったのは市内の部品メーカーです。 (浅見さん)「最近、新聞やニュースでもトランプ関税がほとんど。会社への影響は出ている?」 (平成工業 長坂充俊社長)「自動車部品としては、取引先の情報が不透明でまだ影響は出ていないが、工作機械の設備投資は予約がキャンセルになった」 このメーカーは、パイプ曲げの技術を生かした部品づくりを手がけています。事業の柱となっている自動車部品への影響はまだ出ていませんが、一部の機械部品の発注がキャンセルになりました。 (平成工業 長坂由良子専務) 「(経理を)53年くらいやっている。オイルショックとかリーマン・ショックとかいろいろなことを経験して波を越えてきたが、コロナ後の今が一番えらい(大変)。仕事(受注)がすぐあればいいんですが、そうはいかないので」 あいち銀行は4月、アメリカの関税措置に関する企業向けの相談窓口を設置しました。さらに影響を受けた事業者向けに最大2億円の特別融資も始めています。 (浅見さん) 「今こういう状況だから(発注を)ちょっと見送るとか、設備投資をちょっと控えようみたいな動きは、ちらほら聞こえている。今すごく(影響が)出ているわけではないが、ここから1か月2か月先になったら動きが出てくるのではないか」 すでに影響も出始めているトランプ大統領の関税政策。東海地方のものづくりはどのように立ち向かっていくのか。手探りの状況が続きます。