2023年7月、札幌市・ススキノのホテルで男性・Aさんの遺体が発見された事件。札幌地裁は5月7日、逮捕された親子3人のうち母・田村浩子被告(62)に対して、懲役1年2か月、執行猶予3年の有罪判決を下した。検察側は論告で懲役1年6か月を求刑していた。 【写真】瑠奈被告が見た「目玉カクテル」ほか、通ったバーでの凄まじい内装 浩子被告は濃いグレーのクルーネックカーディガンに、ふくらはぎまで丈のあるカーキ色のプリーツスカート姿で入廷。メガネをかけ、髪の毛は後ろでひとつに束ねていた。裁判を傍聴した高橋ユキ氏が解説する。 「浩子被告は死体遺棄、死体損壊の各ほう助罪に問われていました。死体遺棄ほう助の成否については『娘・瑠奈被告(31)による死体遺棄はいつ終了したか?』『浩子被告の遺棄ほう助が成立するか?』が主な争点でした。検察側は、浩子被告は瑠奈被告の計画を知っており、父・修被告(61)と計画を共有していたと主張。 対して弁護側は、死体遺棄は瑠奈被告がAさんの頭部を自宅に持ち帰った時点で終了していると主張。また、仮に自宅浴室で保管している間の死体遺棄継続が認められたとしても、浩子被告の行為は容認・ほう助に当たらないとしていました」(高橋ユキ氏) 双方の主張に対して札幌地裁は、浩子被告が瑠奈被告の死体遺棄を容認し、ほう助したと認めた。また、死体遺棄の終了時期については、“自宅に持ち帰った時点で死体遺棄は終了していた”という弁護人の主張を認められないとした。 「瑠奈被告は、Aさんの頭部を自宅に持ち帰ったあと、頭部の皮膚を剥ぎ取り、眼球や舌、食道器官を摘出するなどの損壊行為に及びました。また、摘出した眼球などをエタノールで満たした瓶に詰め、剥いだ皮膚を球状にしたザルに被せて浴室に吊るし、残りの頭部も浴室に保管し続けていました。 そうした状況から、瑠奈被告による死体の隠匿(遺棄)行為は、田村親子の逮捕によってAさんの頭部が発見に至った2023年7月24日まで継続するとの判断が下ったとのことです」(同前) 眼球入りの瓶を見て「すごいね。」は死体遺棄の肯定 これまでの裁判で、“瑠奈ファースト”な家庭環境が明らかになっていた。瑠奈被告のことを幼い頃から溺愛してきたという両親は、中学時代から引きこもるようになった娘の機嫌を常にうかがい、なんでも言うことを聞くようになったという。その一端は、瑠奈被告が瓶詰めしたAさんの眼球を浩子被告に見せた際の、「すごいね。」という発言にも垣間見える。 検察側は、この「すごいね。」という発言が死体遺棄の“容認”にあたるのではないか、と指摘していた。 「眼球入りの瓶を見た浩子被告による『すごいね。』との発言について、札幌地裁は、瑠奈被告を怒らせないように調子を合わせていたとしても、死体遺棄行為を積極的に肯定する発言であると判断したようです。よって、浩子被告の言動は死体遺棄の“容認”にあたり、死体遺棄ほう助罪は成立するとしました」(同前) また浩子被告は、瑠奈被告が自宅浴室でAさんの頭部から右眼球を摘出する際、その様子の撮影を依頼され「カメラは運動会以降触っておらず得意でないから、修さんに頼んで」と拒否したあとで、『カメラマンするでしょ』とのLINEを修被告に送信。また、損壊行為が終わったのち、修被告に対して「ちゃんと撮れた?」との確認もしていた。 「札幌地裁は、修被告による死体損壊時の撮影行為が“ほう助”にあたるとしており、それに対してなんら消極的な態度を見せず、撮影を容認したとして、死体損壊ほう助罪も成立するとしました」(同前) 判決言い渡しの最後、裁判長は、証言台の前に立つ浩子被告に対して諭すような言葉を投げかけたという。 「『判決が一区切りしたので最後に……。いますぐにというのは難しいと思いますが、今後、母として正しい接し方をしてあげてください』と。この時、私の席から彼女の表情は見えませんでした」(同前) “母親としての在り方”を諭された浩子被告は何を思ったのか。歪んだ母娘関係にあった田村家に、一つの決着がついた──。