立川小学校侵入事件で求められる教職員へのケア 市教委は社会の「責めるような視点」から守るべき...専門家解説

東京都立川市立第三小学校の教室に男2人が侵入し暴れ、教職員5人が負傷する事件が、2025年5月8日に起きた。市教育委員会は、児童の心理的なケアのためスクールカウンセラーなどを派遣して対応するとしているが、SNSでは教職員へもケアを求める声が上がっている。 専門家は教職員のケアについて、スクールカウンセラーや教職員同士でのサポートのほか、市教委が「教師を責めるような視点から率先して守ってあげる」ことも重要だとしている。 専門家「心も体もそれから組織も、きちんとケアを」 市教委の発表によると、8日朝、ある児童の保護者が、児童同士のトラブルについて担任教師に相談をしていた。その保護者は一度学校を出たが、知人とみられる男2人を連れて戻ってきたようだという。男2人は10時55分頃、当時授業中だった2年1組の教室に侵入。男は教職員らによって警察に引き渡されたが、暴れる男性を取り押さえた校長と教職員4人がけがをした。子どもたちにけがはなかった。男2人は暴行容疑で現行犯逮捕された。 9日の通常通りの登校となったが、「事件の状況を目撃した児童も多く、心理的なケアをするため」として、スクールカウンセラーや市の心理士を派遣するという。 この事件が報じられると、SNSでは子どもたちを心配する声や子どもたちを守った教職員への称賛の声のほか、「子供もそうだけど、先生たちのケアもしてほしい。僕ならトラウマになる」「怪我をした先生達にもしっかりとケアしてくれ」といった声も上がった。 教職員のケアの重要性について、大阪教育大学附属天王寺小学校の校長を務めた経験のある大阪教育大学の小崎恭弘教授に話を聞いた。小崎教授はJ-CASTニュースの取材に、学校運営は子どもの安全を第一に考えることが前提としたうえで、今回のような事案が起きた場合、子どもだけでなく教職員も傷ついている可能性があり、また、今は子どものため気を張っていても後から症状が出てくる場合もあるため、教職員へのケアは「とても大事」だと話す。 「心も体もそれから組織も、きちんとケアをしてあげてほしいなと思います」 ケアとしてまず考えられるのは、スクールカウンセラーによるケアだ。小崎教授は、スクールカウンセラーは心理的な視点で学校運営のさまざまなサポートをするため、子どもだけでなく教職員や保護者が相談することもあるという。 また、昨今は「チーム学校」との捉え方があり、学校が一丸となって教職員同士でサポートし合うことが求められているという。「先生方がお互いカバーしたりサポートしたりする体制は以前と比べたら整っている」と説明した。裏を返せば「それだけ学校の外部の圧力や事案が、重篤・複雑になっている」とも指摘している。 小崎教授は小学校長だった経験から、「管理者も含めた学校全体のケアやサポート」が必要だと見解を示す。とくに校長などの管理者は事案をめぐりさまざまな対応をしなければならず、責任も重い。学校内だけでなく教育委員会や自治体などのサポートも重要だとした。 社会が教職員を責めると「先生方が潰れていく」ことにも さらに小崎教授は、社会やメディアなどから向けられる批判の目から学校や教職員を守ることも重要だと説明する。 小崎教授は、今回の教職員の行動や対応は「とても適切であった」としたうえで、一般的に学校運営や教職員の対応は常に「100点満点」を求められる傾向にあり、社会からの目は厳しいという。しかし、社会やメディア、保護者が学校や教職員を責め立てると「先生方が潰れていく」ことにもなりかねない。 「教育委員会が、教職員を責めるような視点から率先して守ってあげることは、回りまわって教職員を守ることになっていく」 市教委は発表で、「児童、教職員を不安に思わせてしまったこととともに、けがを負ってしまった教職員に心よりお詫び申し上げます」と、教職員に対しても謝罪している。小崎教授は「教職員を守ろう」という姿勢が見えるとし、市教委を「1つ評価できる」とした。 市教委は第三小学校の教職員のケアについて、どのような対応をするのだろうか。9日にJ-CASTニュースの取材に応じた市教委指導課の担当者は、教職員についても「スクールカウンセラー及び心理士からの面談をいつでも受けられるような体制をとっている」と説明した。

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