廃材がレトロ家具やインテリアに生まれ変わる「古材に新たな価値を」大手の雑貨店でも利用

役目を終え、壊される木造の空き家や家具には「残したいけど残せない」という持ち主の思いがあります。こうした木材に新たな価値を吹き込み、次の世代に繋ごうという男性の挑戦に密着しました。 【写真を見る】廃材がレトロ家具やインテリアに生まれ変わる「古材に新たな価値を」大手の雑貨店でも利用 時代に取り残されて、役目を終えた木造建築や家具。そんな古い木材「古材」に新たな息吹を吹き込む人がいます。 西塚卓郎さん36歳。三重県桑名市にある木材卸売業の三代目です。 普段は、ベニヤ板などを配達するのが主な仕事ですが…。この日は、東員町のある住宅を訪ねました。 「早速いいですか?お邪魔させてもらって」 「はい。お願いします」 案内されたのは、敷地内にある約120年前に作られた木造の蔵です。 (水谷信悟さん・76歳)「おじいさんが若い頃に建てたらしい」 真っ暗な2階に眠っていたのは…。 (水谷さん)「嫁入りする時に、これを持って嫁いで来たみたい」 桐ダンスや収納庫などの、かつて使われていた家具。それぞれに使っていた人たちの思いが詰まっていますが…。 (水谷さん) 「息子がねこういうのに興味ないみたい。とにかく俺の代に残すなよってことで、この蔵をつぶすの」 様々な事情から取り壊すことになった空き家や蔵。そこから、古い家具を無料で引き取る活動を西塚さんは行っています。しかし、引き取るのは家具だけではありません。 日本の古いものを海外に“ヴィンテージ”として… 床の板も譲り受けて、再利用の道を探ります。 (ダイマル 3代目・西塚卓郎さん) 「これだけ年数が経っていたら、軽かったりするけれども、木の目が詰まっているから重たいですね」 持ち主の水谷信悟さんは、この蔵とともに生きてきました。 (水谷さん) 「寂しい。(後になって)残しといた方がよかったと思うんと違う?」 残したいけれど、残せない。床板ひとつにも、100年以上大切に使ってきた持ち主の気持ちを感じると言います。 (ダイマル 3代目・西塚卓郎さん) 「連絡くださる方も基本的には壊したくない人が多くて、ああいう話をしてくれるから大事にしないといけないなと改めて思う」 木を譲り受けた西塚さんが向かったのは、祖父の代から付き合いのある木工職人のもと。 (ダイマル 3代目・西塚卓郎さん) 「何でも(扱いに)困ったやつは、浩二さんに相談しに来ています」 (HIRO建築 水谷浩二さん) 「価値観は一緒の子だと思う。古いものに価値を与えるっていう」 木工職人の水谷浩二さんは、西塚さんが譲り受けた木材を使って新たな家具に生まれ変わらせています。 (ダイマル 3代目・西塚卓郎さん) 「今は日本酒のお土産や外国人用にこれを作ってもらっている」 壊され、捨てられるはずだった木材が、レトロな木のケースに。木目や長い年月が作り上げた色合いに、同じものはありません。 (HIRO建築 水谷浩二さん) 「アメリカのヴィンテージも誰かが勝手につけた価値やし、走りでいけたら面白い。日本の古いものを海外にヴィンテージとして出せたら」 (ダイマル 3代目・西塚卓郎さん) 「かっこいいですよね、それができたら」 “捨てるのではなく使う”という文化に 西塚さんが古い木材を譲り受けるようになったのは、家業を継いだ5年前から。これまで回収したものは5000点以上にもなります。 (西塚さん) 「5歳か6歳くらいの時かな、この川に木を浮かべていた記憶があって。(材木)卸の会社が隣同士であったみたいだし、材木業者がすごく多かった」 桑名は、江戸時代から木曽三川の水運を利用して良質な木材が集まる場所でした。 取り壊される建物に使われている木も、質がいいといいます。 (西塚さん) 「リフォームやリノベーションの現場が立て続けに続いたときに、材木を捨てることがあった。古材が僕には魅力的に感じた。桑名から“捨てるのではなく使う”というのを文化として根付かせていけたらというのが夢」 捨てられてしまう木を生き返らせて、未来の人につなぎたい。その思いから、家具やインテリアを作るようになったのです。 ホテルや雑貨店などに向けたインテリア作り (西塚さん) 「木目が昔の方が細かったり、良い木を使っているなと見てわかるので(捨てられて)燃やされてしまうのは、少しでも減らしていきたい」 古材のテイストを活かした西塚さんの作品は話題を呼び、大手の雑貨店でも利用されています。 この日は、東京から建築デザイナーが西塚さんのもとを訪ねてきました。 (建築デザイナー 前岡光一さん) 「これだけの数(の古材)が一つに集まるのは、なかなかない。今までにない面白いものを作れないかというインスピレーションをもらいやすい場所」 西塚さん達が挑むのは、ホテルや雑貨店などに向けたインテリア作りです。 (西塚さん) 「“アートパネル”を作り始めた。磁石が後ろについてあるので、組み合わせは自由にできたりとか、お客さんの好みによってパネルを移動できる。(使っている木材は)80年から90年くらい前の家のものなんですけど、ご飯を炭で炊いたときにその炭が木に付着して色が濃くなったりする。部屋によって(木の)色が変わっていくというのが面白くて、この面白さも伝えていけたらと思います」 仕上げのパネルに使うのは、あの日ひきとった桐ダンスの取っ手です。 役目を終えた木材を、次の世代へ。西塚さんの挑戦はこれからも続きます。

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