2025年5月13日は、生成AI「GPT-4o」の発表から1年の節目の日だ。想像を上回る速さで広がり、法整備が整わぬまま浸透していることも問題になっている。 最近は、画像生成機能による、ジブリ風のポートレート生成・ジブリフィケーションが世界的なトレンドになった。 その直後、「このようなサービスを提供するアプリが、著作権を侵害している」とする、偽のスタジオジブリの警告文書が拡散する事態に発展。 NHKの取材 に対しスタジオジブリは「警告文を出した事実はない」と公式に回答した。 このジブリ風画像は4月16日の衆院内閣委員会でも扱われた。立憲民主党の今井雅人氏は、ジブリフィケーションの適法範囲について質問。文部科学省の中原裕彦文部科学戦略官は「作風の類似のみなら著作権侵害に当たらない」と見解を示した。 当時、今井氏は「 AI法案 」(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案)の審議を行う内閣委員会の筆頭理事だった。質問から8日後の4月24日 、このAI法案は衆議院本会議で与野党の賛成多数で可決。参議院に送られた。 キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんは「いつもとかけ離れた行動から、浮気がわかることが多々あります。最近は、LINEやInstagramなどのアイコンを変えることで、浮気がバレることもあるんです」と言う。 山村さんに依頼がくる相談の多くは「時代」を反映している。同じような悩みを抱える方々への問題解決のヒントも多くあるはずだ。個人が特定されないように配慮をしながら、家族の問題を浮き上がらせる連載が「探偵が見た家族の肖像」だ。 今回山村さんのところに相談に来たのは42歳の会社員・恵美さん(仮名)です。「夫がLINEのアイコンをジブリ風にしたんですよ。著作権侵害をするようなものを勝手に使うのは生理的に嫌いなので辞めてほしいと言ったのに、変えないんです。そのころから、浮気をしてるなと思うんです」と山村さんに連絡をしてきた。 山村佳子(やまむら・よしこ)私立探偵、夫婦カウンセラー。JADP認定 メンタル心理アドバイザー JADP認定 夫婦カウンセラー。神奈川県横浜市で生まれ育つ。フェリス女学院大学在学中から、探偵の仕事を開始。卒業後は化粧品メーカーなどに勤務。2013年に5年間の修行を経て、リッツ横浜探偵社を設立。豊富な調査とカウンセリング経験を持つ探偵として注目を集める。テレビやWEB連載などさまざまなメディアで活躍している。 「この日、きっと夫は浮気します」 今回の依頼者・恵美さんは食品メーカーに勤務する会社員です。電話で「次の私の出張と、息子のサッカーの合宿が重なっています。この日、きっと夫は浮気します。この日を狙って調べてください」と電話がありました。 カウンセリングルームでお会いした恵美さんが差し出した名刺には、営業部の課長という肩書がありました。すらりと背が高く、ベージュのパンツスーツがよく似合っています。営業職らしく、明るくハキハキと話す快活な女性でした。 「同じ年の夫が浮気しているのではと思ったのは、1年前です。私が昇進して、仕事が忙しくなり、夫の世話も相手も全然できなくなった時期と重なります」 恵美さんとは結婚10年。2人の間に8歳の息子がいます。ふたりはお互いが30歳の時に、合コンで知り合ったのだそう。 「夫は新卒から外資系のITコンサルに勤めていて、コロナ以降はリモートも多い。話し相手がいなかったから、私が帰ってくると、待ち構えていたようにその日あったことを話していました。8歳の息子が私に何か話そうとすると、“パパが先だ”と言うほどだったんですよ。 そんな長男みたいな夫が、気づけばあまり話さなくなっていた。こっちも忙しいからこれ幸いと放置。そのうち気づけばコミュニケーションも減っており、家に入れるお金が勝手に半額以下になっていたんです」 ずっと変えていなかった「LINEアカウント」が 恵美さん夫婦が住んでいるマンションは、夫の両親が所有しており、タダ同然で借りているとのこと。 「生活費と息子の教育資金として、月15万円ずつ出し合っていたのですが、それが3ヵ月前から5万円になっている。それについて文句を言うと、“僕の方が家事も子育ても頑張っている。恵美のサポートをしているんだから、5万円でも多いくらいだ”と開き直るんです」 恵美さんは、7時に家を出て、20時すぎに帰り、接待もあります。営業なので出張も多く、リモートは基本的にありません。時間の自由がきく夫は息子の塾や習い事の送り迎え、食事の世話などもしていると言います。 「生活費を10万円減らしたのも許せないのですが、それよりも1ヵ月前から、夫がLINEのアイコンをジブリ風にしていることが耐えられないんです。 私、昔商品開発部にいて、こっちが苦労して開発したヒット商品をマネされることに腹を立てていたんですよ。あのジブリ風画像って、生成AIでジブリのタッチや雰囲気を、AIが真似して吐き出しているだけでしょ? クリエイターへの配慮がない。 法律的に問題ないと言われても、ファンメイド(ファンの自主制作)の延長とか言われても、あれは気持ちがいいものではない。他人がやる分にはいいのですが、自分の夫がそういうブームに乗っているのが許せないんです」 スタジオジブリはそもそも画像使用に寛大で、HPにて「常識の範囲で自由にお使いください」と画像を提供しており、オンライン会議用の背景も多様に用意されています。だからこそ、恵美さんはクリエイターを大切にしたいと感じるのだといいます。 夫とは頻繁にLINEをしており、見たくなくてもアイコンを見てしまう。そのうちに「夫はこんなことをする人だったっけ?」と思い始めます。 「夫はSNS的な承認欲求がなく、基本的にめんどくさがり。LINEのアイコンだって、ずっと初期設定のままだったんですよ。それなのにジブリ風にしているのはおかしい。 あと、車のサンシェードの裏に、よくいく場所の駐車割引券を挟んでいるのですが、そこに見たことがないデザインの黒のカードが挟まれていたんです。一応、写真を撮って夫に見せると、明らかにうろたえていました。徹底的に追求しようと思ったら、息子が塾から帰ってきてしまってうやむやに」 同窓会の直後から帰省の数が増大 そのカードの画像を見せてもらうと、ラブホテルのポイントカードのようでした。恵美さん夫婦は、家族共有のカレンダーアプリを使って、お互いのスケジュールを管理している。異変があった1年前から夫の予定を精査してみると、過去に比べて帰省の回数が圧倒的に多いことに気づきます。 「夫の実家は愛知県にあって、お義父さんとお義兄さんが会社を経営しています。二人とも国立大学卒業で、めっちゃ優秀なんですよ。でも夫は私大にしか行けなかったから、コンプレックスが強い。あまり寄り付かなかったのに、頻繁に行っていますね」 帰省の回数が増えたのは、同窓会の直後からでした。 「めっちゃビンゴじゃないですか。夫の浮気、確定です。証拠をとってください。と言っても、私は離婚するつもりはありません。夫は基本的にいい奴ですし、信頼できる。一時的な気の迷いだと思うんです。 それに離婚は何よりも息子が悲しむ。私は両親が離婚しており、シングルマザー家庭で育ちました。お父さんが家から出て行くって、本当にさみしいことなんですよ。あれを息子に経験させたくない。 でも、証拠を見ちゃったら、すっごい動揺すると思いますし、怒りで暴走ちゃうかもしれない。でも、家族ってそんなもんじゃないですか。それも試練だ。耐えてみせます」 恵美さんが証拠をとる目的は、相手と夫を別れさせる交渉をするため。 「同級生だったら、きっと相手も結婚しているダブル不倫だと思うんですよ。おそらく子供もいますよね。2つの家族をバラバラにするわけにはいかない。もし、相手の夫さんと話すことがあったら、証拠があったほうが、いろんな交渉をうまく進められると思うんですよ」 と明るく言いながらも、恵美さんの手は震えていました。 ◇恵美さんたちはもともとコミュニケーションも多くとり、信頼関係がある夫婦だ。「ジブリ風画像」はそんな二人だったからこそ「恵美さんが嫌がる価値観」を平然と使うアイコンとして疑惑を裏付けるものになったのだろう。恵美さんは離婚をするために調査を依頼したのではない。「夫婦関係を再構築するため」に調査を依頼したのだ。 ではその結果は……。後編「 「きっとこの日浮気します」43歳妻が「ジブリ風自画像」使う夫の現実に決断したこと 」にて詳しくお伝えする。 【後編】「きっとこの日浮気します」42歳妻が「ジブリ風自画像」使う夫の現実に決断したこと