白鵬にスカウトされ、照ノ富士に鍛えられた「令和の新怪物」草野の実父が明かす「意外過ぎる血筋」と「入門秘話」

競輪一族から生まれた大器 新世代の台頭が目覚ましい角界に、「てっぺんを狙える逸材」(相撲担当記者)と評判のスター候補がまた現れた。新十両ながら3月場所で14勝1敗と圧倒的な成績で優勝した草野(23歳=伊勢ヶ濱部屋)だ。 「昨年5月場所で初土俵を踏み、主要5場所で十両に昇進。先の3月場所では12連勝の独走で早々と優勝を決めた。新十両の初日からの連勝記録は大関・大の里らの『9』でしたが、大幅に更新してみせた。まだざんばら髪で、四股名は本名(草野の本名は草野直哉)。相撲ファンが好む要素を備えており、西十両筆頭として挑む5月場所でも活躍が期待されています」(同前) 熊本県宇土市出身。身長183センチ、体重146キロと均整の取れた体格のホープのルーツは意外なところにある。父親の信一さんが明かす。 「うちは競輪一族で、私を含め親族のうち6人がプロになり、女子選手もいます。血筋なのか、直哉は初めてバンク(競技場)を訪れたときも怖がることなく、笑いながら一番上まで行き、プロを驚かせていました。 素質はあったかもしれませんが、プロの世界は厳しく、大怪我のリスクもある。競輪を勧めたことはありません。直哉の2歳年上の長男は自転車競技部のある高校に通い、プロを目指していた時期がありますが、やはり親としては賛成できませんでした。長男は現在、会社員です」 好きな力士は朝青龍 引退後、焼き肉店を営む信一さんは現役さながらのアスリート体型を誇る。 「家族は皆、痩せ型です。直哉も痩せていましたが、腹膜炎で入院し、食事を制限された反動でドカ食いするようになり、どんどん体が大きくなっていきました(笑)」 競輪一族に育った草野が相撲を始めたきっかけは、同郷の先輩力士である川副(本名・川副圭太)の父親に体の大きさを見込まれたことだ。 「2021年の学生横綱で翌年宮城野部屋に入門した圭太くんと長男は、同じ年で仲が良かった。圭太くんが相撲大会に出ることになった際、彼のお父さんから『草野さん、人数が足りないから息子さんを貸してくれないか』と頼まれました。直哉を連れて応援に行ったところ、『体の大きい直哉くんにも相撲をやらせましょう』と声がかかったのが始まりです」 小1から宇土少年相撲クラブで相撲を始めた草野は、小5でわんぱく相撲全国大会3位に輝き、中学に進学すると、全中優勝を果たして中学横綱に。子供時代から実力は飛び抜けていた。 「子供時代に好きだった力士は朝青龍。勝ちっぷりにひかれたようです。もともと直哉は図太く、強い相手ほど燃えるタイプです。こうした性格は競技向きだったかもしれません」 プロ競輪選手だった父の教え プロ競輪選手というキャリアを持つ信一さんは「子供が頑張る姿を見守っただけ」と振り返る。 「違う競技ということもあり、指導には口を出していません。親が子供の競技に入れ込んで、口を出してしまうケースは少なくない。しかし、子供からすれば、親からあれこれ言われるのは気分がいいものではなく、『経験したこともないくせに』という思いになってしまいます。私の親は何も言わないタイプでしたが、競技をするうえで、それがマイナスになったことはなかった。こうした自分の経験もあり、純粋に応援しているだけでした」 その一方で、競技の世界で生きるうえで大事なことは伝えたという。 「どれだけ素質があっても練習しなければ大成しない。真面目に練習したヤツが一番になる。これは口酸っぱく伝えました。一方で、勝負である以上、負けることはあるという話もしました。それもあってか、直哉は負けを引きずらないタイプです。 あとは体のメンテナンスです。十分に睡眠をとることはもちろん、子供の頃から整体マッサージにも行かせていました。カネをかければかけるだけ体は動くようになるし、長持ちするぞ。こうした話は頻繁に伝えていました」 宮城野部屋入門が決まっていたが… 草野は文徳高校時代には全国高校総体で団体優勝を経験。卒業後、学生相撲の名門である日本大学に進学した。 「体は消耗品です。親としては若いうちにプロに進んだ方がいいのではないかという思いもありましたが、本人が大学進学を希望しました。幼い頃から知る圭太くんが日大に進学した影響もあったと思います。 日大の先輩には現在同部屋の尊富士がいて、学生時代からかわいがってもらい、うちの店に来たこともあります。出会いにも恵まれた。結果的に、日大に進んで正解だったと思います」 2023年の全国学生相撲選手権個人戦で優勝して学生横綱に輝いた草野は、有望株を次々とスカウトしていた元横綱・白鵬の宮城野部屋入りが決まっていた。 「圭太くんが宮城野部屋に入る際、宮城野親方、圭太くんのお父さんとうちの店で食事をしました。その際、宮城野親方から『うちの部屋でお願いします』という話がありましたが、社交辞令のようなものでした。 付き合いの長い圭太くんが宮城野部屋に入門していたこと。そして、一番強い横綱だった宮城野親方のもとでやりたいという思い。これらが宮城野部屋入りを決めた要因のようです。 実際に会ってみると、宮城野親方はすごく気さくで気配りも絶えない。自分からファンに『写真どうですか』と声をかけるなどフレンドリーです。親としては、相撲だけではなく人間性も見習って成長してほしいとの思いでした」 照ノ富士の付き人 だが、予想外の事態が待っていた。 「学生横綱と入門を祝うパーティーの当日、宮城野部屋の閉鎖が決まりました。正直動揺しましたが、お世話になることになった伊勢ヶ濱部屋では照ノ富士関の付き人を務めることになり、目をかけていただいた。直哉は『横綱はあたっても全然動かん』『あのピリピリ感は半端ない。すごい経験をさせてもらっている』と話していました。入門してすぐ、毎日横綱の胸を借りることができたのは幸運でした」 草野は「目標は大関、横綱」と公言する。 「自分は競輪選手としてそこまでの選手ではなかった。『横綱を目指してほしい』『大関を目指せ』なんて言えません(笑)。親としての思いは、人間としてみんなに好かれる力士になってほしいというもの。怪我をせず、頑張ってほしい」 白鵬に見出され、照ノ富士に鍛えられた「令和の新怪物」の今後に注目だ。 「あの人の下では無理」「師匠と呼びたくない」…退職報道の宮城野親方が抱える「照ノ富士との確執」

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