お笑い界随一のインフルエンサー 粗品の「1人賛否」がすごすぎて、バズリまくる理由

SNSで話題になり拡散  霜降り明星の粗品は、いまやお笑い界随一のインフルエンサーである。彼が何か発言をしたり、行動を起こしたりするたびに、それがネットニュースに取り上げられ、SNSで話題になり、大きく広まっていく。  *** 【写真】「フェアではない」と苦言…意外過ぎる“超大物芸人2人”。“鬼ヅメ”された瞬間の粗品の“素”の表情も  最近では読売テレビが主催する「ytv漫才新人賞決定戦」というお笑いコンテストで審査員を務めて、鋭い審査コメントをしていたことも話題になっていた。  そんな彼が手がける大ヒットコンテンツの1つが、自身のYouTubeチャンネルの企画である「1人賛否」だ。これは、SNSなどで話題になっている最新のニュースをいくつか取り上げて、賛否両方の意見を言っていくというもの。週1回のペースで更新されており、公開されるたびに彼の発言が切り取られてネットニュースになっている。 粗品  この企画の優れている点は、偏った意見を言いたくないという立場の粗品が「あえて賛否両方の立場から意見を言う」というスタンスをとっていることだ。どちらも自分の意見ではないので、ここで話したことを自分の本心だと思わないでほしい、あくまでも一種のコントとして見てほしい、と粗品はことわりをいれている。  動画の基本的な構成としては、粗品がニュースの概要を紹介して、いったん無難な意見を述べた後、「ただぁ!」と叫んで、あえて厳しいことを言ったり、面白おかしい話をしたりしてオチをつける。この一連の流れが見事な話芸として成立している。 「自分の意見ではない」という前提があるので、粗品は取り上げるトピックに関して気軽に強い主張をする。多少過激に思われるようなことを言っても、「本心ではないから」と逃げを打つことができる。安全が確保されている状態で、真に迫った本音っぽい意見を言えるところに面白さがある。  通常の賛否両論というのは複数の人間のあいだで存在するものだが、粗品は他者の声を自分の中に取り込むことで「1人賛否」という芸を成立させている。彼は単に賛否両方の意見を言うだけではなく、それぞれの意見について批判を想定して、それに対してどう返すのかということまでその場で語ってみせる。 「全自動批判ループ」を逆手に  現代のSNS文化では、誰が何を発言しても、それに対する批判や罵詈雑言がついて回る。その中には低レベルな悪口や理不尽な揚げ足取りも含まれている。  粗品はそんな「全自動批判ループ」の状況を逆手に取って、1人でその状況全体を再現することで笑いに変えている。誰もが批判されることを前提に発言しなければいけない時代に、責任を回避しながら複数の意見を同時に言って、それらを面白く見せるという離れ業を演じているのだ。 「ytv漫才新人賞決定戦」の審査員を務めたときにも、粗品の審査コメントが際立っていたのは、彼がさまざまな切り口で出場者のネタを評価して、それらを踏まえた総合的な評価を下すことができていたからだ。おそらく、彼にはあらゆる物事を俯瞰的に見るような「神の目線」が備わっている。ニュースに対する分析においてもこの能力を発揮することで「1人賛否」は成り立っている。  粗品の「1人賛否」は、単なる毒舌ではなく、SNS以後のメディア状況を前提にした新時代の話芸である。粗品の発言が大きな話題になるのは、彼が誰よりも時代の空気を敏感に察知して、質の高いパフォーマンスを見せているからなのだ。 ラリー遠田 1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。 デイリー新潮編集部

もっと
Recommendations

女子高校生に“パパ活もみ消してあげる”と性的暴行か 男逮捕

パパ活をしていた女子高校生に「警察署長と知り合いだからもみ消して…

イスラエル軍がガザ南部ハンユニスの病院を空爆 少なくとも16人が死亡

【エルサレム=福島利之】イスラエル軍は13日、パレスチナ自治区…

「触ったことに間違いない」 夜の住宅街で10代女性にわいせつな行為 37歳男を逮捕 室蘭市

北海道・室蘭警察署は2025年5月13日、不同意わいせつの疑いで室蘭市に…

犯人の狙いは「中国株」?──証券口座“乗っ取り”で不正売買、被害は3000億円超 手口と対策は【#みんなのギモン】

証券口座が乗っ取られ、顧客になりすました犯人に勝手に売買される被…

【独自】路上で男性の顔蹴り財布奪った疑いなど ウズベキスタン国籍の男5人逮捕 余罪十数件か 総合格闘技の試合出場経験者も 東京・渋谷区 警視庁

東京・渋谷区の繁華街で男性に暴行を加え、財布やバッグを奪ったなど…

他人名義で賃貸契約を結んだか「打越スペクター」実質的トップ4度目の逮捕

東京・中央区のマンション群、「晴海フラッグ」の一室を借りるために…

【速報】路上で面識ない男性殴り財布奪ったか ウズベキスタン国籍の男5人逮捕 -警視庁

2024年12月、東京・渋谷区の路上で面識のない20代の男性2人に因縁をつ…

熊本県警の捜査を「一部違法」と認める 熊本地裁

覚醒剤取締法違反などの罪に問われた男の裁判で、熊本地方裁判所は、…

トランプ氏、シリア制裁に対して全面的解除の考えを示す アメリカ

【リヤド=池田慶太】米国のトランプ大統領は13日、訪問先のサウ…

佐々木朗希が右腕に張り訴え…前回は初の中5日、ロバーツ監督「見極めたい」

【ロサンゼルス=帯津智昭】米大リーグ・ドジャースのロバーツ監督…

loading...