エベレスト入山料を最高220万円に値上げ…登山者増加対策、排せつ物の持ち帰り義務化や技量調査

 ネパール政府が、世界最高峰エベレスト(標高8848.86メートル)の登頂を目指す外国人向けの入山料を9月から大幅に値上げする。  登山者の増加に伴い環境汚染や救助作業が増え、登山道の整備や維持管理が急務となっているためだ。 富士山は1人4000円  入山料は現行から36%増える。改定は2015年1月以来、約10年ぶりとなる。  料金は、登山者を分散させる目的で季節ごとに異なっており、新たな入山料は、ピークシーズンの3〜5月が1人あたり1万5000ドル(約220万円)、9〜11月はその半額、これ以外の時期はさらに半額となる。  富士山で今季から徴収される入山料(1人4000円)と比べても格段に高い。  エベレストをはじめとする山々に登る人からネパール政府が徴収する入山料は、貴重な観光収入源だ。今回の増額は、インフラ整備や環境保全、救助などに充てる費用を確保する狙いがある。  世界で初めてエベレスト登頂の成功者が誕生したのは1953年だ。ニュージーランドの登山家エドモンド・ヒラリー氏が登頂した5月29日は「エベレスト登頂記念日」に制定されている。これ以降しばらく、登山家や登山協会のメンバーなど「玄人」による挑戦が続いた。90年代からは欧米などの登山会社や山岳ガイドが参加希望者を募る「商業公募隊」による登山が始まった。  登山用品の高機能化と軽量化によりエベレストへの門戸が一般人にも開かれ、大衆化が進んだ。登山道や山間部の通信環境も向上した。標高約5300メートルにあるベースキャンプでも「太陽光発電で街灯がともり、テントにベッドも備え付けられ、離れた家族とテレビ電話で話すなど、今は地上にいるのと遜色ない過ごし方ができる」とネパール山岳協会のニマ・ヌル・シェルパ会長(59)は話す。  山頂まで張られたロープの傷みの点検や取り換えなど、登山者の安全確保にもさらに重点が置かれるようになった。  登山者増加の代償として、使用済みの酸素ボンベやテント、生活ごみなどの投棄が増えた。山岳協会などが2019年に1か月半実施した清掃キャンペーンでは10トン以上のごみが回収された。人々の排せつ物が屋外に蓄積され、雪解け水が汚染されていることも明らかになった。  登山者の技量や体力不足も顕著だ。民間の救助隊員として20年以上活動するラクパ・ノルブ・シェルパさん(44)によると、09年からはエベレストでヘリコプターを使った救助が本格化し、近年、救助者は年600人を超える。「疲れすぎて歩けない」「筋肉痛だ」といった理由で要請を受けるケースも珍しくないという。  ネパール政府は、対策としてエベレストでの排せつ物の持ち帰りを義務化し、単独での登山も禁じた。今後は、登山者の技量を事前にチェックする仕組みの導入も検討している。  入山料の支払いは、登山者が委託した専門の登山会社が担っている。エベレストでは極寒や吹雪、雪崩にさらされ、高山病の予防策も講じる必要があるため、こうした厳しい条件に対処するノウハウを持つ会社を利用することが法令で義務づけられている。  登山会社から観光庁への料金の振り込みが確認され、登山者の旅券の写しや健康診断書などの提出書類に不備がなければ、登頂の許可証が即日発行される。  観光庁のアーラティ・ヌーパネ課長補佐は「我が国の宝であるエベレストを持続可能で、人間と共存し続けられる存在にしたい」と話す。

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