ついに負傷者リスト入り「佐々木朗希」が不調に陥った最大の原因とは…「結果として直球が“棒球”になっている」と専門家

 第1回【米メディアが「佐々木朗希」を“期待外れの10傑”に選出 新人王候補が「最も失望させられた選手のひとり」と名指しされる事態に】からの続き──。ドジャースは14日、佐々木朗希(24)が「右肩インピンジメント症候群」のため負傷者リストに入ると発表した。(全2回の第2回)  *** 【写真】目元がソックリ? 佐々木朗希と同じく地元・大船渡高校で活躍した、弟の佐々木怜希選手。兄のメジャー挑戦と時を同じくして中央大学に進学  順天堂大学医学部の整形外科・スポーツ診療科の公式サイトは、インピンジメント症候群について以下のように解説している。 《肩を上げていくとき、ある角度で痛みや引っかかりを感じ、それ以上に挙上できなくなる症状の総称です(略)投球動作など腕をよく使うスポーツ選手にも発症します》  もともと日本の野球ファンの間では「投球を見ても佐々木がメジャーで通用する気がしない。じっくりとマイナーで鍛え直すべきだ」との意見が根強かった。 正念場に立たされた佐々木  もし、もっと早くマイナーに降格していれば、右肩を痛めることもなかったのかもしれない。メジャーリーグ研究家の友成那智氏は「マイナー降格の議論が白熱するのも当然の投球内容でした」と言う。  友成氏が注目するのは、佐々木のWAR(Wins Above Replacement)という指標だ。複数の定義が存在するが、この稿では「FA市場において最低年俸で獲得できる選手Bと比較し、選手Aがチームの勝利を上積みできた貢献度を示す指標」と説明しておこう。  メジャーリーグの統計データなどを配信するFanGraphsの発表では、昨年最もWARが高かった打者はヤンキースのアーロン・ジャッジ(33)で11・2だった。  打者の3位には大谷翔平(30)が入り、数値は9・1。投手の1位はブレーブスのクリス・セール(36)で6・4だった。 ドジャースの“メンツ”  平均的な野手と先発投手のWARは2・0と言われている。ところが佐々木のWARは5月14日現在、何とマイナス0・3なのだ。「FA市場において最低年俸で獲得できる選手」よりも勝利に貢献できていない。 「佐々木投手のWARマイナス0・3は防御率4・72と並んで非常に悪い数字です。他の日本人投手と比較すると、ドジャースの山本由伸投手(26)は防御率が1・80で、WARは1・2。メッツの千賀滉大投手(32)は防御率が1・16でWARは0・9です。メジャーで30イニング以上を投げた投手63人のうち、佐々木投手の防御率は47位とも報じられました。また佐々木投手の奪三振率は6・29で、これも首脳陣を満足させられる数字ではありません」(同・友成氏)  ちなみにナ・リーグで奪三振率のトップはナショナルズのマッケンジー・ゴア(26)で12・82。昨年投手で最もWARの高かったセールが12・08で2位、山本由伸は10・60で7位につけている。 「佐々木投手の抱える問題は山積しており、その一つに与四球の多さが挙げられます。ロッテ時代のワーストは昨シーズンの32四球でしたが、今シーズンは早くも22四球です。8試合に先発して34イニングしか投げていないのも良くありません。1試合平均で4・25イニングですから、リリーフ陣に過度の負担を強いています。マイナー降格が取り沙汰されるのは当然ですし、アメリカの一部メディアも降格の可能性を報じていました。それでもドジャースが先発起用を続けていたのは、球団の“メンツ”も大きな影響を与えていたと考えられます」(同・友成氏) 実質はマイナー降格!?  友成氏によると、ドジャースの選手育成力、特に投手を育てる力はメジャーリーグの中でも随一と評価が高いという。だからこそ「なぜか佐々木の育成には失敗しました!」では名門球団として格好が付かない。  しかも佐々木の獲得にあたっては、ドジャースの共同オーナーを務めるピーター・グーバー氏の自宅で最終交渉が行われた。寿司職人が呼ばれてディナー・パーティーが盛大に開かれ、大谷、ムーキー・ベッツ(32)、フレディ・フリーマン(35)のMVPトリオも同席した。  ドジャースは、いわば“三顧の礼”で佐々木を招聘したわけだ。そんな投手を簡単にマイナー落ちさせることは球団の沽券に関わるらしい。 「佐々木投手についてドジャースは負傷者リスト入りを発表しましたが、実質的にはマイナー降格に等しい可能性もあります。と言うのも、これまでケガの治療にあたっていたクレイトン・カーショウ(37)、タイラー・グラスノー(31)、ブレイク・スネル(32)の3投手は、復帰が現実味を帯びてきたからです。特にカーショウ投手は18日のエンゼルス戦に先発することが決まりました」(同・友成氏)  なぜ佐々木の調子は悪かったのか、友成氏は「謎を解く鍵が回転数です」と指摘する。 使えないスライダー 「メジャーリーグのデータ解析で知られるスタットキャストが、佐々木投手の投げるボールの回転数に関して興味深いデータを公開しています。一般的に回転数が多いほうが球にキレがあり、バットに当てられてもファウルになる傾向があります。まず注目すべきは直球(フォーシーム)の回転数です。佐々木投手はロッテ時代の2023年に165キロの日本投手最速タイを記録しましたが、ドジャースに移籍してからの直球は2080回転しかありません。千賀投手の2373回転、山本投手の2203回転より劣り、佐々木投手の直球はいわゆる“棒球”になっていることが分かります」(同・友成氏)  棒球なので当たると前に飛ぶ。ロッテ時代、佐々木の被本塁打は2022年の7本がキャリアワーストだった。ところがドジャースに移籍した今シーズンは早くも6本を打たれてしまっている。 「スライダーの回転数も悪いと言わざるを得ません。佐々木投手は1869回転に過ぎず、千賀投手は2544回転、山本投手に到っては2753回転もあります。これではメジャーの並みいる強打者にスライダーを投げるのは怖いでしょう。実際、スタットキャストの分析によると、スライダーの使用率は17%に過ぎません。直球が50%、スプリットが33%と、実質的に2種類のボールで打者に対戦していることが分かります」(同・友成氏) ロッテ時代の“予兆”  回転数の高い直球でファウルを誘うことも、キレのあるスライダーでカウントを稼ぐことも難しい──これが佐々木の直面している大問題だ。 「相手チームの打者は『佐々木投手の奪三振率は低い』というデータを念頭に置いて打席に立っています。ホームランを恐れて慎重にならざるを得ない佐々木投手に対し、余裕を持ってボールを待つことができるのです。佐々木投手が神経質な投球でボールが先行すると、落ち着いていれば四球で出塁するチャンスが増えます。バッターズカウントになっても、佐々木投手は怖くてスライダーを投げられません。直球かスプリットで勝負しても、最悪の場合はホームランを打たれてしまいます」(同・友成氏)  スタットキャストのデータを見ると、ボールの回転数が低いことから佐々木の悪循環が始まっていることがよく分かる。そして、その“予兆”はロッテ時代からあったようだ。 「佐々木投手は2022年4月のオリックス戦で完全試合を達成し、次の日ハム戦でも8回まで完全試合のペースを継続しながら降板しました。この頃、佐々木投手の球にはキレがあったのでしょう。ところが、これを境になぜか佐々木投手の回転数は下がっていったというデータがあるのです」(同・友成氏) ドジャースの“処方箋”  どんどん自分の球威が衰えていく──どうやら佐々木も自覚していたようだ。 「佐々木投手はメジャー挑戦に際し、面談を希望した各球団に『2024年のシーズンで速球の球速が落ちた理由を診断し、再発防止の計画を説明すること』を求めました。私は佐々木投手の球威が落ちた理由の一つは回転数の減少だと考えていますが、なぜ回転数が落ちたかとなると見当も付きません。今後、ドジャースがどのような“処方箋”を佐々木のために準備するのか、要注目のポイントだと思います」(同・友成氏)  第1回【米メディアが「佐々木朗希」を“期待外れの10傑”に選出 新人王候補が「最も失望させられた選手のひとり」と名指しされる事態に】では、アメリカのメディアも佐々木朗希について厳しい記事を配信していたこと、マイナー落ちも取り沙汰されていたことなどを詳細に報じている──。 デイリー新潮編集部

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