変わる中国人の「都内マンション購入事情」 数字が語る“買い方”と“素顔”の変化

 中国人を対象にした日本最大級の不動産情報サイト「神居秒算」。この記事の前編では、同サイト掲載データの定点観測をしてきたマンションブロガー「マン点」氏の分析をお届けしてきた。旺盛なチャイナマネーの流入は、東京23区のマンション高騰の一因とも言われているが、一口に中国人と言っても、日本のマンションを購入する理由は実に様々だ。後編では、その“内訳”について、引き続きマン点氏の分析レポートをお届けする。 (前後編の後編)  *** ※外部配信先では一部のグラフが表示されない場合があります。全てのグラフはデイリー新潮サイト内で閲覧可能です。 【写真を見る】「人民元建て」で見た23区マンション価格の推移と、都内中国人の「在留資格」内訳 人民元建てマンション価格が示す“割安”な日本  中国人が日本のマンションを購入する理由としては、主に次の3点が挙げられている。 中国人の不動産取得の目的に変化が? (1)地政学的リスクが相対的に低く、資産の避難先として安定していること (2)子どもの留学や将来的な移住を視野に入れた実需的なニーズがあること (3)円安によって、相対的に日本の不動産が割安に見えていること  特に気になるのが、(3)の円安の影響である。  中国では厳しい外貨規制が存在する。そのため、富裕層が海外不動産を購入する際には、合法的な送金手段や海外口座を活用することになる。つまり、為替は中国人にとっても重要なファクターになる。  では、実際の為替の影響はどの程度だろうか。 中国人から見ると日本のマンションは「値上がりしていない」  2001年以降の東京23区における中古マンションの平均成約価格について、円建てと人民元建てで比較した。  円建てで見ると、中古マンションの価格はアベノミクス以降、一貫して上昇を続け、2024年には7000万円に迫る勢いとなっている。  一方、人民元建てで見れば、2015年から2020年にかけては上昇傾向にあったものの、その後は円安の進行により横ばいに転じていることが分かる。  つまり、中国から見た日本のマンション価格は、この数年「上がっていない」のと同じなのである。  円建てでは高騰している東京の不動産も、人民元建てでは依然として“割安感”が残っている。為替というフィルターを通して見ると、日本の中古マンションは今もなお魅力的な投資対象に映るのである。 在留資格から探る「東京に住む中国人」  では、そうした物件を実際に購入しているのは、どのような人々なのか。その手がかりは、日本に滞在する中国人の在留資格のデータに表れている。  日本にマンションを購入し、実際に移り住む中国人の在留資格は多岐にわたる。  主なものとしては、「永住者」や「留学」のほか、高度な専門知識や技術を持つ人材に与えられる「高度専門職」、企業経営者や投資家に与えられる「経営・管理」、日本人の配偶者や永住者の配偶者などに与えられる「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」がある。  また、就労を目的とする場合は、「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザを取得するケースもある。  次の円グラフは、東京都に在住する中国人の在留資格別の割合を示したものである。  最も多いのは「永住者」で、全体の33%を占める。以下、「留学」(25%)、「技術・人文知識・国際業務」(15%)、「家族滞在」(9%)と続き、これら4つの在留資格で8割超(82%)を構成している。 「単なる投資」ではなく、「住生活そのもの」に移る軸足  では、どの在留資格の人口が増えているのだろうか。在留資格上位4位の人口の推移を比較した。 「永住者」は一貫して増加傾向にあり、2023年末には9万人に達しようとしている。「留学」は、東日本大震災を機に一時減少したが、回復基調に転じた後、コロナ禍で再び落ち込み、現在は持ち直して6万人を超えた。  日本が少子高齢化に直面する中で、今後の社会を支える多様な人材の受け入れや定住のあり方が重要な課題となっている。そのような中、都内では中国出身の「永住者」が年々増加しており、存在感を増しつつある。  たとえば、東京の一部の有名公立小学校では、在日中国人家庭からの入学希望者が増加傾向にあるとされる。こうした動きの背景には、中国人富裕層の教育への関心の高まりや、将来設計への考え方の変化がありそうだ。  中国人が日本の不動産を取得する動きが、「単なる投資」ではなく、「住生活そのもの」に重心を移しつつある兆候とも言える。記事前編では都心3区よりも「大田区」や「板橋区」の需要が高い可能性があることを紹介したが、背景にはこうした中国人の購入意識の変化があるといえるかもしれない。  本稿は、そうした現象の一端を、あくまでエビデンスベースで可視化しようとする試みにすぎない。感情や先入観ではなく、事実に基づく認識が、今後の議論の出発点となることを願いたい。  ***  この記事の前編では、「いま東京で最も中国人に買われている場所」はどこなのか、マン点氏のレポートをお届けしています。中国人投資家向けの不動産サイトのデータを分析して分かった“興味深い傾向”とは——。 【著者プロフィール】 マン点(まんてん)マンションアナリスト。一級建築士。20年以上続けている不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」の管理人 X(旧Twitter):https://x.com/1manken デイリー新潮編集部

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