一向に解消されないコメの高騰。備蓄米の放出で収まるとの農水大臣の言葉はウソだった。いまさら聞けない素朴な疑問を識者にぶつけた。 中編記事『【兼業農家にとっては「退職金代わり」】減反をやめればコメの価格が下がるのに、農水省とJAが減反にこだわる「納得の理由」』より続く。 Q11 輸入米に頼るしかないのでは? 「こんなに国産米が高いのでは、輸入米のほうがいいという話になってくるでしょう。すでに外食産業では米国産米にシフトしています。商社の兼松は年内に1万トンを民間貿易で輸入する見込みです。大手牛丼チェーンの松屋も米国産米を使っていますね。硬直的な農業政策をやって、国産米の価格が高いままだと、輸入米が増えるでしょう。完全に農政の失敗です。 政府は年間77万トンの無関税の『ミニマムアクセス米』を輸入し、うち10万トンを主食用として利用しています。これまで国内の業者は見向きもしなかったのですが、国産米が高くなったので、昨年12月には10万トンすべてが落札され、もっと出してくれと要求しています。しかし、米価を下げたくない農水省はミニマムアクセス米を増やさない。江藤拓農水大臣は、輸入米の活用拡大に否定的です。 ちなみに、飼料用米も機動的に活用できます。驚くかもしれませんが、飼料用米もれっきとしたコメで、主食用米に転用することが可能です。味も申し分ありません。ところが、政府は飼料用米を転用しないばかりか、まずいコメに品種改良しようとしているくらいです。コメ高騰は、備蓄米や減反政策でコメの生産を減らしてきた農水省と農水大臣に責任の一端があると思いますね」(前出・大泉氏) Q12 米国産米っておいしいの? 「日本が輸入しているのは、カリフォルニア産のカルローズという品種で、日本のコメの食味に近いという触れ込みです。しかし、用途を見るとチャーハン向けと書いてある。すでに牛丼チェーン店やコンビニ弁当で使われていて、知らない間に輸入米を食べていますよ。ただ、毎日家で炊いて白米として食べると、違和感を持つはずです。まあまあ美味しいのですが、パサパサしていて、国産米とは明らかに違います」(前出・松平氏) Q13 どうすれば安く買えるのか? 「元の米価が下がらない以上、一般の国産米を小売店で安く買うことは難しいでしょう。ただ、備蓄米なら安く買うことができます。一般のスーパーではお目にかかることは少ないですが、調べたところ、AコープなどJA系列の店舗なら、5kg3500円程度の価格で購入できるようです。 また、大手スーパーのイオンでは、国産米とカリフォルニア米をブレンドしたものが4kgで3002円という価格で並び始めています。国産米を2割混ぜていて、日本人でもおいしく食べられると評判です」(前出・石橋氏) Q14 おいしくおコメを炊くコツは? 「冷たい水を使って、しっかりと吸水させることが大事です。冷たい水だと吸水に時間がかかりますが、そのほうがおコメの細胞のすみずみまで水分が行き渡ります。水分は熱伝導の役割を果たすので、じっくり吸水させたほうが、熱をすみずみまで入れながら炊きあげることができます。それから、冷たい温度で炊き始めることで沸騰までの時間がゆるやかになり、ふっくらと炊くことができます。 なお、炊く水は基本的に水道水で構いません。夏場は水道水もぬるいので、ペットボトルに入れて冷蔵庫で冷やして使うといいでしょう」(お米ライター・柏木智帆氏) Q15 結局、米騒動の犯人は誰? 「農水省の見通しの甘さがあって、価格が高騰したのは事実です。しかし、結局は日本人がおコメを食べなくなったことが一番の原因ではないでしょうか。消費量が減ったために減反政策が行われ、米価下落を防ぐギリギリのところで需給が調整され、そこに猛暑による品質劣化や収量減が起こり、いとも簡単にコメ不足になってしまったのです」(柏木氏) * 令和の米騒動が起き、改めて感じたコメのありがたみ。今年も再び騒動が生じるのか。 「週刊現代」2025年5月26日号より はじめから読む【なぜかJA全農にばかり放出】備蓄米がそう簡単にはスーパーには出回らない「農水省とJAの責任」