話題沸騰『人が壊れるマネジメント』著者が徹底解説…若手社員を「5月に壊す」職場の「あるあるすぎる特徴」

会社員にとって、5月は「魔の季節」だ。GW前まで普通に出社していた部下も、内心、こんな不満を抱いているかも……。 前編記事【「お前の代わりはいくらでもいる」と言われ続けて…話題の書『人が壊れるマネジメント』著者が明かす「タフさを誇る職場文化」の限界と終焉】より続く。 「石の上にも三年」の終焉 前述した「モームリ」利用者の「退職理由」を見ると、入社直後には「入社前に聞いていた条件や待遇と、勤務実態が違う」ことを挙げるケースが最も多いが、日が経つにつれて、「いじめやパワハラなどの人間関係」を挙げる人も増えてゆく。 どんなにつらかろうと、どんなに罵倒されコキ使われようと、「石の上にも三年」の精神で職場にしがみつく時代は、このところの退職代行サービスの隆盛を見ても、終わりを告げたと言えそうだ。 あっさり転職してしまう 「若手のあいだで近年増えている退職理由が会社の古い文化と合わないことです。 人材派遣大手のパーソルが行った国際調査によれば、日本人は『イヤな仕事でも給料のため、会社の命令に従って我慢して働く』という意識が突出して高いことが分かっています。しかし、海外ではこうした意識をもって働いているビジネスマンは少数派ですし、さらにはいま、日本国内でも『就社意識』はかなり薄れつつあります。 とくに若手や海外在住経験のある社員は、『つらくても我慢して働け』という古臭い文化を押し付けられた、と感じた瞬間に意欲をなくしたり、最悪の場合は退職してしまうわけです」 ただし、蝶よ花よと丁寧に扱われたとて、辞めない保証はないのが、いまどきの若手の難しいところだ。あまりに仕事がラクすぎると、それはそれで「ゆるブラック企業」と呼ばれて、忌避されるという。 「『ゆるブラック企業』とは、『仕事はラクだけど、成長や昇給も望めない』会社のこと。昨今の若者は『定年まで同じ会社に勤めて尽くそう』とは思っていません。そのため、いつか来る転職の日に備えて、自分の市場価値を高めることができないと感じると、『ここで働き続ける意味はない』とあっさり転職してしまう。 ここ最近は、転職で給料が倍増するようなケースも出てきていますから、ひとつの会社にしがみつく必要性自体が薄れているのも事実です」 古い体質を一変させなければ生き残れない なぜいま、橋本氏の本が注目を浴びているのか。それはかつてのような「モーレツ社員」の時代が本格的に終わり、大半の日本企業が、古い体質を一変させなければ生き残れなくなっているからだろう。 橋本氏は、ここまで見てきたような「人が壊れるマネジメント」の根本には、「そもそも日本人が『マネジメント』の考え方を軽視してきたこと」があると指摘する。 「日本企業では、基本的にプレイヤーとして優秀な人が昇進し、部長などのマネージャーになりますが、欧米の企業では、プレイヤーとマネージャーは入り口からして違います。大きな組織になるほど、一流大学でMBAを取った専門家がマネジメントを担当するのが普通なのです。 マネジメントの素人が組織を運営せざるを得ない日本企業では、仕事の目標や評価基準が不明確になりがちなうえ、中間管理職のマネジメント能力を見極められる、役員クラスのマネージャーも育ちません。これからは、マネジメント不在の会社で働くことはそれ自体が『リスク』だと考えられるようになり、そうした会社からは、ますます人材が離れていってしまうでしょう」 部下を壊さないための「6W2H」 では、若手がまったく寄りつかない職場にしないために、上司や先輩社員は何から取り組めばいいのか。橋本氏は「まずは、部下にうまく『任せる』技術を身につけることから始めましょう」と言う。 「丸投げを避け、部下の意欲を引き出す任せ方の基本は『6W2H』を意識すること。すなわち『何の仕事(What)を何のために(Why)、誰が(Who)誰に(Whom)、どこで(Where)いつまでに(When)、どのように(How)どれだけ(How much)やるのか』をしっかり伝えることです。 もちろん、上司がこれらすべてを把握できているとは限りませんから、その場合は、部下と話し合いながら決めればいい。このとき、『部下は自分よりも立場が弱い』ということを忘れず、イライラしても決して態度に出さないように気をつけてください」 ほんの少し考え方を変えるだけで、いまや貴重な存在である若手社員が「壊れる」ことを防げるかもしれない。しかるべき立場にある人は、5月が終わる前にさっそく実践してみてはいかがだろうか。 「週刊現代」2025年5月26日号より 「お前の代わりはいくらでもいる」と言われ続けて…話題の書『人が壊れるマネジメント』著者が明かす「タフさを誇る職場文化」の限界と終焉

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