国内で唯一ラッコが見られる施設となった「鳥羽水族館」。大混雑のゴールデンウィークに、「ラッコの飼育係」の女性に密着しました! 【写真を見る】ご長寿ラッコの21歳「メイちゃん」 17歳「キラちゃん」国内唯一の2頭にささげる飼育員の“ラッコ愛” 三重・鳥羽水族館 ゴールデンウィークの鳥羽水族館には長蛇の列が… (来館者) 「(Q:今日は何を見に来た?)ラッコ」 「(Q:どういうところが好き?)かわいいところ」 (ファン歴3年)「推し活に近いと思う。メイちゃんとキラちゃんがすごく良いコンビだなと沼っちゃった(ハマった)」 鳥羽水族館でファンが急増しているのが、ラッコの「メイちゃん」と「キラちゃん」。ゴールデンウィーク中のこの日もオープンと同時に、たくさんのファンがラッコの水槽へ。 (来館者)「かわいい~」 鳥羽水族館では人気ぶりを受け、混雑緩和のためことし3月からラッコの水槽前の観覧に「1分間」の制限時間を設けました。10人ずつ順番に案内され、ラッコの近くでわずかな時間を楽しみます。 (奈良から)「かわいかった、貝をたたいているところ。(初めてラッコを見て)うれしかった」 (横浜から) 「1分間だけど、よく見られた」 「みんなが平等に見られるので満足する1分」 国内唯一のラッコ「メイちゃん」と「キラちゃん」の飼育員 ピーク時には国内で122頭が飼育されていたラッコですが、絶滅危惧種に指定されて以降、国同士の取引が規制され、年々減少。 ことし1月、福岡市の水族館でラッコの「リロくん」が死んだことで、国内で飼育されているラッコはメイちゃんとキラちゃんの2頭だけになったのです。 飼育されているラッコの寿命は20歳前後ですが、現在、メイちゃんは21歳、キラちゃんは17歳。国内で唯一の飼育施設となった鳥羽水族館で、ラッコの健康をどう守っているのか。飼育係に密着しました。 (ラッコ飼育歴7年 南理沙さん)「おはようございます」 ラッコの飼育歴7年の南理沙さん29歳。開館前のデスクにお邪魔すると… (鳥羽水族館 飼育係 南理沙さん)「これお客さんにもらった私のアクスタ。作ってくれて…」 机の上には常連客からもらったというオリジナルのラッコグッズがたくさん! 今回、特別にバックヤードに案内してもらいました。 ラッコの“もぐもぐタイム”何食べてる? 朝8時半、ラッコのエサの準備です。 1日3回、貝や魚などをおなかの上にのせて食べる愛らしい姿が見られる「お食事タイム」。まずは朝と夕方に与える「イカ」を丁寧にさばいていきます。 1日に食べる魚介類は3キロから4キロほど。傷んでいないか、しっかり確認して与えています。また、こんな工夫も… (飼育係 南理沙さん)「ここに薬を入れているので錠剤の食感が同じくらいの硬さになるように、食感を似せて気付かせないように(冷凍してあげている)」 凍らせたイカの内臓や貝の中に、一日1錠のビタミン剤を隠して入れ、エサだけで補えない分の栄養を補充しているといいます。 ラッコのエサ代もかなり高騰していますが… (飼育係 南理沙さん)「新鮮でいいものをあげるようにしているので、値段が高くてもあまり妥協はせずに、いいものを選んでいる」 南さんは鳥羽水族館に入社後、たまたまラッコの担当になったといいます。 (飼育係 南理沙さん)「(Q:目標の先輩は?)石原というラッコ界のレジェンドの上司です」 ラッコ界のレジェンド「ラッコおじさん」 南さんの先輩、石原良浩さん63歳はラッコの飼育歴40年以上。ファンの間では「ラッコおじさん」と呼ばれています。 (年間パスで通う静岡在住のファン)「楽しそうに接している姿は見ていて、ほんわかする。ほほ笑ましい。幸せをお裾分けしてもらっている」 (年間パスで通う 奈良在住のファン)「おじさんの飼育員さんは、ラッコとのギャップでかわいさが増す」 (飼育係 南理沙さん)「ラッコに対する愛がお客さんに伝わっている証拠なので、目指せたら」 朝のミーティングに姿を現した石原さんに、動画の人気について聞いてみると… (鳥羽水族館 飼育係 石原良浩さん) 「うれしいこと。それだけラッコという生き物に興味を持ってもらえている。私ら飼育員は黒子なので、メイとキラさえ目立てばそれでいい」 午前9時40分、1回目のお食事タイムが始まりました。息の合ったかわいらしい動きもただのファンサービスではなく、一つ一つに意味があるといいます。 (飼育係 南理沙さん)「目がよく見えているか、足や手がしっかり使えているかを、トレーニングを通して確認している」 お食事タイム終了後、向かったのは地下。 命に関わる「水槽の水」 (飼育係 南理沙さん)「水槽の水をきれいにしている装置。ラッコにとってすごく重要で、ラッコは毛が多くて毛で保温している動物。毛が汚れてしまうと命に関わるので、水がきれいなのは大切」 ラッコの水槽2つに対して、水をきれいにするための装置はなんと全部で14台。 (飼育係 南理沙さん)「これだけの規模の装置を使ってるのはラッコだけ」 水をきれいにするために、二重三重の工夫が。 抜け毛がかなり多いというラッコ。毛の密度が1平方ミリメートルあたり人間が2本から4本なのに対して、ラッコは1200本。 その毛はやわらかく保温性が高いため、海外では「柔らかい金」と呼ばれるほど価値のあるものです。昔、乱獲が起きた原因でもあります。 ラッコの抜け毛「他の動物にはない感触」 (飼育係 南理沙さん)「これです、抜け毛。(Q:メイちゃんとキラちゃんの抜け毛?)(2頭の抜け毛が)混ざっている」 ろ過槽などにつまらないように、毎朝、メイちゃんとキラちゃんが寝ていた場所に落ちている抜け毛を回収しています。 (飼育係 南理沙さん)「ぬれているのにふわふわ。他の動物にはない感触なので、一番最初はびっくりした。ぬれてるはずやのに!表面しかぬれていないので、かき分けるとぬれていない毛が出てくる」 専門家も、飼育環境の整備が、ほかの動物に比べて難しいと指摘します。 (京都大学野生動物研究センター 三谷曜子教授) 「陸場もなければいけないし、ろ過をしなければいけないし。食べ物が高価なのなので、餌代を確保しなければいけない。条件が限られてしまう」 午後1時。お昼休憩を挟み、2回目のラッコのお食事タイム。外のエリアまで長蛇の列が! 今は、ラッコとの相性はバッチリだという南さん。しかし、過去にはこんなことも… 絶滅危惧種のラッコ…関心を持って見守って (飼育係 南理沙さん)「キラにかまれて穴があいたというか、ギュってやられた。内出血で周りが青白くなる」 ラッコはかむ力が強く、南さんの腕には数年前の傷が今も残っています。 (飼育係 南理沙さん)「基本的にはかまれるときは、飼育員のアプローチの仕方が悪いので、加減が分かってきた。このライン越えたらかむんだろうなというのを見定めながら(接する)」 1日3回のお食事タイムを終え…勤務終了。国内の水族館で、唯一ラッコを飼育していることについて聞いてみると。 (飼育係 南理沙さん)「多少プレッシャーと責任も感じているけど、変わらず接していけたらいいな。トレーニングを通して体調管理も行いながら、一日でも長く元気に生きてもらえるように頑張っていきたい」 京都大学の三谷曜子教授によりますと野生のラッコは北海道でも見ることができますが、乱獲や環境汚染によって絶滅危惧種となっています。 「かわいい」だけで終わるのではなく、その背景まで関心を持って見守ってもらえれればと話していました。