3月の大地震後のミャンマーの現状や支援について、在日ミャンマー人が伝え、訴えたいこと

「在日ミャンマー人の若者たちが、3月の大地震の被災地への支援を呼びかける」 5月5日「こどもの日」。 さいたま市のJR浦和駅東口の広場で、「SAITAMA市民・こども多文化MIRAIフェスタ」という、様々な国や地域の文化を知って、暮らしやすい街づくりにつなげようというイベントが開かれました。 【写真を見る】 「ミャンマーを知ってもらう」浦和駅で行われたイベント スリランカ、ベトナム、韓国、バングラデシュ、イランなどのブースがあり、訪れた人たちは「スタンプラリー」の形で回るようになっていました。 「イベントに出展、ミャンマーの現状や文化、地震の被害を知ってもらう」 「ミャンマーの人々に寄り添う会」のブースでは、立ち寄った人に、ミャンマーの人が日常やっている、伝統的なお化粧「タナカ」を体験してもらっていました。 「タナカ」という木をこすって粉にして、顔に塗ります。親子連れの父親がまずやってもらい、「暑い日につけるとひんやりして気持ちがいいですね」と自分の子供に勧める姿が見られました。 ステージでも様々な文化が次々と紹介され、在日ミャンマー人の女性は、人形芝居「ヨウッテー・ポエー」を披露しました。 観ていた子供たちの中から3人が、教えてもらいながら、糸を動かし、人形を操って動かすのにチャレンジしました。 1人の子供は「動かせて面白かった。人形芝居は、手だけであんなに、ぐるんぐるん動かせて、すごかった」と話していました。 日本に暮らすミャンマー人は約13万5000人 日本で暮らすミャンマー人は、2024年の年末で約13万5000人で、もちろん埼玉県内にも暮らしています。 「ミャンマーの人々に寄り添う会」ではタナカや人形芝居のほか、伝統衣装の試着体験や、ミャンマーの地図や写真、絵を使って、多民族・多宗教であることや、あいさつの言葉、食文化、伝統行事などについて展示しました。 立ち寄ったある家族に、ミャンマーのイメージについて聞くと、父親は「これから発展する国」、母親は「いま、軍事政権で、人々がかなり追い詰められていると聞きます」、子供は「大地震があって大変だなって思ったから、街で寄付をしたことがある」とそれぞれに答えが返ってきました。 ミャンマーでは、4年前に軍がクーデターを起こし、政府の実権を握って以降、元の政府関係者を中心に民主化を求める人たちや、様々な少数民族の抵抗で、内戦状態が続いています。 そういう状況の中、3月28日に大きな地震が起きて、少なくとも4000人が亡くなり、建物の倒壊などで避難生活を送っている人も大勢いるとみられます。 しかし、被害が大きい地域は、軍が支配する地域とそうでない地域が入り混じり、被害の全容がなかなか伝わってきません。 諸外国から派遣されたNGOや国際機関も、移動するのに軍の許可や制限があり、支援に向かえない地域もあります。 また、飲料水や食料、医薬品などの支援物資が十分行き渡っていない状況もあるとみられます。 それに加え、軍と民主派・少数民族の武装勢力の双方は地震後、戦闘停止を宣言しましたが、形骸化していて、5月12日にも、民主派勢力が運営する学校を軍が空爆、20人以上が死亡したと独立系メディアが伝えています。 軍事政権であるため、国外からの支援が難しく、届きにくい状況 「ミャンマーの人々に寄り添う会」は、現地の被害の状況について、写真の展示で伝えました。 またステージでは、会が協力して、埼玉県内などで募金活動を行っている在日ミャンマー人の女性が現状について、「普通の募金、と言っても説明が難しいですが、例えばコンビニとかスーパーとかに置いてある募金箱にお金を入れると、そのお金は政府の実権を握る軍を経由します。 もしかすると、寄付したお金が、本当に困っている人たちのための寄付にならなくて、民主化勢力が強い地域への空爆に変わっていたり、武器に変わっていたりっていうこともあり得るんじゃないかと思われます。 寄付してくださることはすごくありがたいことなんですが、そういうことがあり得るということも考えていただきたいと思います」と訴えました。 司会が「どうすればいいでしょうか?」と問いかけると「浦和駅、埼玉県内だけでなく、各地でミャンマー人コミュニティが街頭募金を行っています。 また、民主化を求める国民統一政府が様々な在日ミャンマー人団体と協力して行っているクラウドファンディング(「ミャンマー中部で発生した大地震で被災したミャンマーの人々に緊急支援を!」一般社団法人国際ミャンマー学者・専門家協会)もあります。 街で見かけたり、インターネットで見つけて、支援に利用してほしい」と答えました。 確実に届けるため、在日ミャンマー人たちが行う街頭募金 同じ浦和駅東口で4月に行われた「Saitama Pamphlet Campaign」の街頭募金も取材しましたが、取材した日は、震源に近く、深刻な被害が出たザガイン管区出身の若い男性がいて、これまでは自分や友達の間でお金を集めて送っていたけど、初めて募金活動に参加するということでした。 「実家はザガインの街の中です。家族は大丈夫だったけど、家は倒れました。周りの人で、死んだり、けがした人もいます。自分の力で何ができるだろうかと思っていたところに誘われ、できることをやろうと、きょうは、職場でシフトを代わってもらい、休みも取ってきました」と話します。 一時的に帰国しないのですか?と聞くと、「心配だけど、去年、軍が徴兵制を敷いたので、帰ると徴兵され、日本に戻れなくなる可能性がある。日本からできることをするしかない」ということでした。 全国各地で行われている街頭募金では、同じ日本で身近に暮らすミャンマーの人たちのこうした思いに触れることがあります。 街頭募金や国民統一政府が中心のクラウドファンディングだけでなく、地震の以前から、ミャンマー現地の民間の支援団体や個人との関係を生かしてきた、様々な日本の支援団体もあります。 複雑な事情があるからこそ、それぞれに信頼できる窓口を探して、支援につなげることが必要とされています。 TBSラジオ「人権TODAY」担当: 崎山敏也記者

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