国民民主の人気に便乗 　岸田文雄前首相は9日、国民民主の玉木雄一郎代表に言及し、首相候補の1人と持ち上げる発言をした。その理由を明かさなかったこともあり永田町全体は真意をはかりかねているように見える。実際どういった考えなのだろうか。 【写真を見る】「兄よりイケメン」　玉木雄一郎氏の弟・秀樹氏 　岸田氏が発言したのは5月9日放送のTBSのCS番組。国民民主の玉木代表が「総理候補たり得るか」について話を向けられ、「色々な世論を聞くたびに、首相候補の1人だと思う」と答えた。 「この発言自体、大きな注目を集めたわけではありませんが、永田町では批判的な声が目立ちます。一応色んな人に聞いてみましたが、“なんであんなこと言うんだろうね”“首相経験者ですよね、軽率のそしりをまぬかれない”“敢えての発言なんだろうけど、他党の人でしょ。あり得ないよ”“国民民主の人気が高いことに便乗しようってことなんでしょう。だからって自分の存在感が高まるってことはないと思うけど。軽薄でしょう”などといった内容で、散々な評価でした」 岸田前首相と国民民主の玉木代表 　と、政治部デスク。 再登板願望 　岸田氏はここ最近、動きを活発化させている。5月3日からインドネシアとマレーシアを石破茂首相の特使の立場で歴訪。ちょっと変わったところでは4月29日には夫人を伴って東京ドームのバックネット裏に陣取り、巨人—広島戦を観戦した。これも完全なプライベート行動とは受け止められないという。 「その日程を私は知らなかったのですが、テレビ中継を確認すると最前列に座った2人の姿が常に映るので、“あぁこれは敢えてテレビに映るように座っているんだなぁ”と感じました。東京ドームには球場を一望できるスイートルームのような施設があり、テレビに映りたくないならそういった場所を選んでも不思議ではありません。この試合、延長になっても最後まで席を立たなかったのは、プラチナチケットを得ての野球観戦のマナーとしては良かったという気もしますが、総じて“自己アピール”臭が強く、鼻白んでしまったほどです」（同） 　昨年8月の退陣表明から8カ月。岸田氏なりに再始動というところなのだろうか。 「そうですね。永田町で誰に聞いても“岸田氏には再登板願望がある”とのことで、そのために常に準備しておきたいということなのでしょう」（同） 林氏への強烈な対抗意識 　岸田氏は首相在任時、自民党派閥の裏金事件の捜査をめぐって、派閥の解消を主張した立場だ。 「岸田派もなくなったわけですが、それでも岸田氏はいまだに“岸田派は自分の組織だ”と話しているようです。旧派閥内ではナンバー2だった林芳正官房長官を推す声が強く岸田氏再登板への期待はほとんど聞こえてこない。林氏への対抗意識が強すぎて、岸田氏からそういった言葉が出てくるようです」 　加えて岸田氏自身、世代交代に敏感ということもあるのだろう。 「小泉進次郎氏や小林鷹之氏の世代が首相になってしまえば完全に自分の出る幕はなくなるが、例えば加藤勝信氏や茂木敏充氏の世代ならまだ自分の存在感は残せるとの読みもあるのではないかと。ただ、加藤氏や茂木氏と同じ世代に属する林氏がトップになってしまうと“自分の組織”もなくなってしまう。岸田氏は去年の総裁選で決選投票に残った高市早苗氏とは相当な距離がありますが、仮に高市氏と林氏とどちらを選ぶかとなった際には“高市氏以外にない”との声もあるほどです」（同） 首相候補発言の背景には何が 　では再登板を念願としつつも今回、玉木氏を首相候補と持ち上げた背景に何があるのだろうか。 「参院選がどうなるかまだまだ読めず、参院選後の勢力図もはっきりしない中で、『玉木首相』の可能性はなくはない。そんなことはみなわかっているのですが、誰もそれを言わないのは仮にそうなった場合、“参院選で負ける”“自分たちの仲間から首相が出てこない”のを認めないまでも否定しないことにつながるからです。それでも岸田氏が言及した理由は本人以外わかりませんが、“最初に流れを作った”ということを既成事実として存在感を示し、キングメーカーの座をうかがっているということなんでしょうね」（同） 　ちなみに首相候補と名指しされた玉木氏自身、表向きには意欲を隠さないが、岸田氏の言及については「素直に喜べず当惑している」（同）様子だという。 デイリー新潮編集部