家庭でもできる、子どもの 「人間力」 の伸ばし方。親がやりがちなNG行為とは?

小学生の1年間の学校生活1200時間に対し、放課後の時間は1600時間。この未来の貴重な「資産」となる時間を、塾や習い事だけで埋めていませんか? なんてもったいない!! 1600時間を「未来への投資をする時間」と考えると、小学生のうちにまず優先してやるべきことは、学校や塾の勉強での認知能力の向上ではなく、社会につながるための人間力=非認知能力をいかに育むか。 民間保育園・学童を広く展開する著者・島根太郎が、多くの子どもたちと接し、キッズコーチと子どもたちのかかわりを通じて学んできたヒントを明かした書籍『子供の人生が変わる放課後時間の使い方』より、抜粋してご紹介します。 教えてもらう教育ではなく気づき学べる教育 「こうしたらいいんじゃない」「次は○○だから準備して」 学校の授業では、どうしても先生から児童への一方通行の指導になりがちです。家庭でも、ついつい親が先回りして答えを教えてしまったり、やり方を指示してしまったりすることが多くなります。 しかし、私たちは学童保育の現場で異なるやり方を心がけています。大切にしているのは、子どもたちに「気づかせる」「考えさせる」こと。そのために、KBCではコーチングの技術を活用しています。 例えば、友達同士でケンカになってしまったとき、遊んでいて施設の備品を壊してしまったとき、ふざけすぎてルールを破ってしまったときなど、何かトラブルが起きても、すぐに叱るのではなく、まず子どもたちの話に耳を傾けます。 その子の言い分がたとえ言い訳のように聞こえても、どういう背景があってそうなったのかをしっかりと聞く。興奮して怒りが収まらないようなら、気持ちが落ち着くまでじっくり待つ。寄り添ううち、子どもたちとの間に信頼関係が築かれていくからです。 また、子どもに何かを促すときは、「〜しなさい」という命令形は使いません。代わりに「そろそろ○○の時間だけど、この後どうしようか?」「何から準備する?」といった質問を投げかけ、子ども自身に考えてもらい、自分なりの答えを見つけ出してもらいます。 なぜなら、問いについて考えるうちに、子どもたちの思考は主体的になっていくからです。 具体的な例を挙げると、学童で学校や塾の宿題に取り組むとき、私たちは「早く終わらせなさい」とは言いません。その代わりに、「どの宿題からはじめる?」「今日は何時までに終わらせる目標?」などと問いかけ、具体的にどう取り組むかを考えてもらうように促します。場合によっては、ストップウォッチを取り出し、「最初の3問、何分で解けるかな?」「さて、今日の〇〇くんは、今から5分の間に何問までできるでしょうか? 昨日と同じ5問かな……? ちょっとがんばって6問かな……?」などと子どもがゲーム感覚で取り組めるような声かけをしながら、さりげなく子どもの自発性を引き出します。 難しい宿題に困っている場面では、子どもが「この問題わかんない……教えて」などとキッズコーチを頼ってくることもあります。そんなときにも「たしかにこれは難しい問題だね……」と子どもの気持ちに寄り添いつつ、「問題文はしっかり読んでみたかな?」「辞書で調べるとわかりそうだけどどうかな?」と、解決の糸口になりそうなヒントを与えつつ、問いかけます。すると、「あっ、そっか! たしかに辞書を使えばできそう! やってみる!」と自発的に取り組んでくれるのです。 また、勉強は個室に閉じこもらせるのではなく、開放的な空間で大人とコミュニケーションを取りながら進めていくようにしています。宿題をやりながら、ちょっと飽きてきた様子が見えたときは「今日、学校ではなにしてきたの?」といった雑談をしてみると、子どものほうから「この問題、どう思う?」と相談してくれて、対話を重ねるうちに自然と学びが深まっていくこともあります。 そうやって物事がうまくいったとき、子どもたちから気づいて行動してくれたときの褒め方も工夫しています。ポイントは具体的に、その場で褒めること。うまくいかなかったときでも、途中までのプロセスや努力を認めること。「ここまでよくがんばったね。丁寧に取り組んでいたのを見てたよ。すごいね」という言葉かけを心がけています。 個性の伸ばし方も重要です。長所と短所は、コインの表と裏のようなもの。短所と思われがちな特徴も、見方を変えれば個性として輝く可能性があります。キッズコーチは子どもの個性をしっかりと認め、それを本人も受け入れられるよう導いていきます。 なぜなら、個性と自信は密接につながっているからです。 異年齢の仲間たち、学童にいる大人たちに認められることで自己肯定感が育まれるだけでなく、1つでも得意なことが見つかると、それが大きな自信となって、他のことにも挑戦しようという気持ちが芽生えます。特にみんなの前で褒められる経験は、子どもたちの心に深く残るもの。その場では照れくさそうな表情を浮かべている子も、その経験を次の挑戦への原動力としてくれるはずです。 私たちの役割は、子どもたちの主体性を育み、個性を認めて伸ばしていくこと。そのために必要なのは、押しつけるのではなく、寄り添い、見守るという姿勢なのです。そして何より大切なのは、子どもたち自身が「できた!」という達成感を味わうこと。その経験の積み重ねが、困難に直面したときでも乗り越えていける粘り強さを育んでいきます。 「安全安心・楽しさ・成長」のピラミッド 私たちが大切にしているのは、「安全安心・楽しさ・成長」というピラミッド型の考え方です。土台となる安全があってこそ、子どもたちは心から楽しむことができ、放課後時間の楽しさを通じて成長していく。この三層構造が、子どもたちの放課後を豊かにしていくのです。 この考え方をよく表しているのが、私たちがイベントプログラムのサマーキャンプで実施している川遊びです。 「とにかく危険なものは禁止」 そう判断する教育関係者も多いですし、実際、毎年のように川や海での水難事故が報道されています。しかし、それでも私たちは徹底的なリスク管理のもと、あえて川遊びを実施しています。 なぜなら、プールとはまた違う自然の中での水遊びは、子どもたちの心を大きく揺さぶり、成長させてくれるからです。 安全面の準備として、場所の選定では過去の水害履歴を調べ、入念な下見を行います。当日の天候はもちろん、上流の水量の状況をチェックし、水位が子どもの膝を超えないことを確認。全員にライフジャケットを着用させ、安全に遊べる範囲と人数を計算してローテーションを組み、子どもたちと遊ぶキッズコーチとは別に、上流、下流に安全管理を担当する人員が立ち、見守ります。 さらに、クマの出没情報も確認し、見張り役を配置。万が一の鉄砲水に備えた避難訓練も実施して、笛の合図で1分以内に全員が川から上がれるよう練習し、流された場合のキャッチ役も下流に二重で配置。日本一と胸を張って言えるレベルの万全の備えをしている理由は、シンプルです。 思い切り川遊びをしている子どもたちは、本当にいい笑顔で過ごしてくれるから。 また、ライフジャケットを着けて流される訓練は、それ自体が子どもたちにとって最高の遊びです。キッズコーチに水鉄砲を仕掛けたり、川の生き物を探したり、子どもたちはそれぞれの個性を発揮しながら夢中になっています。 川遊びを含め、さまざまな自然活動を行うサマーキャンプは、親元を離れて自分のことを自分でやり、仲間と協力して過ごす貴重な機会です。ほんの2〜3日で、子どもたちは大きく成長します。「やんちゃで言うことを聞かない」と思われていた子が、班のリーダーとして責任を持って行動し、皆から慕われる存在に変わることも珍しくありません。 私たちのピラミッドの考え方は、ご家庭でも活用できます。 例えば、お子さんが木登りに興味を示したときに「危ないからダメ」と禁止するのではなく、まず安全な木を選び、大人が見守れる環境を整える。子どもの気持ちに寄り添いながら少しずつ挑戦させていく。ときには足を踏み外しそうになることもあります。でもその経験を通じて、子どもは自分の今の限界を知り、危険を回避する能力を身につけていきます。 これは家事をお手伝いする場面でも同じです。初めて包丁を使うとき、最初はにんじんやだいこんなど、切りやすい野菜から始めていく。楽しく取り組めるよう、「お母さんのシェフ見習い」といった遊び感覚を取り入れる。すると、子どもは自然と安全な包丁の使い方を覚え、「次は何を切ろうかな」「どんな料理をつくろうかな」と意欲的になっていきます。 安全と楽しさは、時としてトレードオフの関係です。心配する大人の過度な安全管理は子どもの自由を奪い、楽しさと成長の機会を失わせてしまいます。逆に、楽しさだけを追求すると危険が増していく。 大切なのは、このバランスを見極めること。私たちは安全を確保しながらも、主体者である子どもたちの「やってみたい」という気持ち、自己決定する自由を尊重しながら、その思いを実現できる場を用意します。そうすることで、子どもたちは自然と成長の階段を上っていってくれるのです。 【オススメ】家庭でもできる、子どもの 「人間力」 の伸ばし方。親がやりがちなNG行為とは?

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