【第8回】サイトウサトシのタイヤノハナシ〜雨のドライブは楽し! 奥深きウエットグリップ〜

雨の日のタイヤの感触、タマリマセン 雨の日のドライブが好きです。 雨に濡れた路面を踏むタイヤの、何割かグリップが乏しくなった感触、その心許なさというか、危うい感じがいい。 雨の日はグリップ限界が身近になり、クルマを操る感覚が濃くなると筆者は感じている(写真はイメージです)。 佐藤亮太 最近のクルマは、タイヤも含めて性能が高くなって、普段ドライ路面を走っていてもグリップの限界を意識することはありません。 でも雨が降ると、グリップ限界が身近になって、クルマやタイヤのいろいろな動きが感じられるようになります。 雨で冷えて硬くなるトレッドゴム、トレッドブロックの変形する感じ、あるいはエッジが立った感触。徐々に滑り成分が多くなってくる手元に届く感触。 そんな時、クルマを操っている感覚がググッと濃くなってきます。 みなさんはいかがでしょうか? さて、今回のテーマは、前回に引き続きウエット。特にウエットグリップにフォーカスしてみたいと思います。 最近は国内でタイヤラベリングが行われているので、乗用車用サマータイヤの場合、ほぼすべて(日本自動車タイヤ協会加盟メーカー)のタイヤで転がり抵抗とウエットグリップがテストされ、カタログやWEBページに掲載されますし、新品タイヤにもシールが貼られています。 この制度は2010年1月から運用が始まっているので、それなりに認知度が高いんじゃないかと思っています。 また、この制度の優れている点は、販売しているタイヤサイズを全数テストしていることです。 同じ基準でテストしているので、メーカーに関係なく性能を横比較できるところも、画期的な点です。 ですから、このグレーディング制度は、転がり抵抗とウエットグリップの絶対的な評価として、タイヤを選ぶときの参考になります。 キーワードは『適正作動温度』 で、このタイヤグレーディングの評価を見ると、興味深い点があるのに気付きます。 ウエットグリップのいいタイヤを探そうとハイグリップタイヤを調べてみると、ウエットグリップが最高点のaではなく、bだったり、cだったりするのです。 ハイグリップタイヤのウエットグリップが、必ずしも高いとは限らない(写真はイメージです)。 佐藤亮太 なぜ? と思われるかもしれませんが、これはタイヤの適正温度が大きく影響しているのです。 例えばエコタイヤの適正作動温度は10〜60℃、コンフォートタイヤは20〜70℃、ウルトラハイパフォーマンスタイヤや超ハイグリップタイヤは50〜100℃、スタッドレスタイヤ-20〜10℃くらいといわれています。 ちなみにタイヤグレーディングでテストするときの気温と水温は、 路面温度 5〜35℃ 大気温度 5〜40℃(通常は20℃前後で管理) 路面散水水温 5〜35℃(目標値20℃±5℃) となっているそう。 つまり適正作動温度よりも低い温度でテストしているわけです。雨の日に超ハイグリップタイヤのウエットグリップ評価が高くないのはこういう訳なんです。 実際、雨天時における超ハイグリップタイヤのグリップ性能は高くないので、注意が必要です。また、ミシュラン・パイロットスポーツやコンチネンタル・スポーツコンタクトなど、ウルトラ・ハイ・パフォーマンスタイヤ(UHP)にカテゴライズされるプレミアムハイパフォーマンスカーや欧州のハイパワースポーツカーに装着されるタイヤは、ひと世代前まではウエットグリップbでしたが、現行モデルはaを取得しているようです。 この2つのタイヤには、以前ちょっと試乗しているのですが、コンパウンドがウエットグリップを考慮した方向に少し変わったように感じました。それでいながら、従来と変わらないか、上回るドライパフォーマンスを発揮したのです。タイヤ開発にコストを掛けられるUHPならではということでしょうか。 つまり、コンパウンド開発や材料にお金をかけて、より幅広い温度域でグリップ性能を発揮できるように作られているということです。 同じグレードでも幅がある? 気温とタイヤのグリップの関係にまつわる逸話は、わりと多くあります。 例えば、あるオールシーズンタイヤの試乗会でのこと。サマータイヤとオールシーズンタイヤのウエットブレーキテストを行いました。ウエットブレーキの制動距離は、サマータイヤのほうが若干短くなるはずだったのですが、実際に試乗してみると、オールシーズンタイヤのほうが短くなってしまったのです。 ウエットグリップは温度依存性が強いため、テストの時期などが影響することも(写真はイメージです)。 佐藤亮太 これは、テストしたのが11月で、気温がかなり低くなっていたのが(具体的には気温10度以下)理由だと考えられます。 先に書いたように、タイヤには適正作動温度域というものがあるわけですが、オールシーズンタイヤは一般的にサマータイヤより低い気温でもゴムが仕事をするように作られています。一方でスタッドレスほどは適正作動温度が低くはないものの、ある程度低く設計されているため、こういう事態になったのでしょう。 また、こんなこともありました。 銘柄は書けませんが、ウエットbのグレーディングを得ているタイヤを履いていた時のこと。乗り心地も燃費も良いので、わりと気に入って履いていたのですが、秋も終わりころになって冷たい雨が降った時、路面が凍結しているの? というくらい盛大に滑って、肝を冷やしたことがあったのです。 それまでグリップが優れているわけではないけれど、特に問題なし、と思っていたのですが……。ビックリしました。 同じb評価でも、いくらかウエットグリップには幅があるのです。考えてみれば上限と下限があるわけですからこれは当然。 しかもウエットグリップは温度依存性が強いので、路面温度、大気温度、散水温度などが好ましい時期であれば、良いグレーディングが取れることもあるでしょうし、設計時ターゲットにしたグレーディングが取得しやすい適切な気温、気候を敢えて選んでテストすることが……ないとは言い切れません。 冒頭に雨が楽しいというようなことを書きましたが、実際のところいろんなことがわかったり感じられたりするので、楽しいのは嘘じゃありません。まあ、それはそれとして、ウエットグリップのいいタイヤを履くと、雨でもヒタッと路面に吸い付くような安定感、安心感を手に入れることができます。 それに加えて排水性のいいトレッドパターンの組み合わせは、雨の日のドライブを楽しく安心したものにしてくれると思います。 タイヤが古くなるとウエットグリップはどんどん悪くなりますし、摩耗して溝が浅くなれば耐ハイドロプレーニング性能は落ちていきます。 まだ時期には少し早いですが、梅雨や夏のスコールのような雨のシーズンがやってきます。タイヤのメンテナンスを忘れずに。

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