【解説】続投から一転“更迭”に…首相決断の裏側は?

江藤農林水産相が「続投」から一転「更迭」となったのはなぜなのでしょうか? 政治部官邸キャップの平本典昭記者が解説します。 【石破首相決断の裏側 3つのポイント】 1.続投→更迭2つの「想定外」 2.小泉“新農相”でコメ価格下がる? 3.大打撃 どうなる?石破政権 鈴江奈々キャスター 「まず、続投から更迭、2つの『想定外』とは何があったのでしょうか?」 政治部官邸キャップ 平本典昭記者 「石破首相の方針転換には『ぶれた』『決断が遅かった』など批判が出ています。実は決断の裏側で2つの想定外の事態が起きました。1つ目は江藤氏の説明のひどさです」 「失言をリカバーしようと放った言葉がさらなる反発を招きました。江藤氏は『コメは売るほどある』との失言について『宮崎弁的な言い方だった』と言い訳をするなど、反省の色が感じられない発言が続きました。低姿勢が求められる場面で江藤氏の態度が『逆』に入り、野党や世論の批判に火をつける想定外の事態になったと」 桐谷美玲キャスター 「苦しい言い訳だなと感じましたし、あれを『宮崎弁的な言い方』というのは、宮崎の方もいい気持ちはしないですよね」 平本記者 「まさに宮崎の方にも失礼という声を多く聞きました」 「2つ目の想定外は野党の対応。中でも国民民主党の態度です。玉木代表は失言の直後『辞めるような話ではない、ちゃんと仕事をしてほしい』と続投容認の姿勢でしたが、きのうになって江藤氏の釈明の問題もあり『辞めるべき』との姿勢に転じました。野党はまとまれないのではとの見方もあった中で、野党がそろって江藤氏の辞任を求め、不信任決議案の提出に向けて足並みをそろえたことが決定打となりました。石破首相も周辺に『不信任案が出ればもうもたない』と追い込まれた理由を話しています。読みが甘かったと言えます」 鈴江キャスター 「2つめのポイント。最大の関心事ですが、大臣が代わったところでおコメの価格は下がるんでしょうか?」 平本記者 「大臣が誰になるかではなく、そこが一番気になると思います。小泉氏自身は自分で『コメ担当大臣』と言っていました。それくらい短期間でコメの価格を下げる結果が求められています。石破首相は農水省の一連の対応に『消費者ではなく農家に向きすぎているのではないか』と不満を持っていました。そこで小泉氏の改革姿勢に期待を寄せ起用した面があると言えます。ある自民党幹部は『ピンチをチャンスに変える狙いがある』と話しています」 「ただ、複数の政府関係者は『そんなに甘くはない。コメ対策はやれることは全てやってる。トップが代わって下がるぐらいならとっくに下がっている』と悲観的な見方を示しています。ある野党幹部は『小泉氏になってコメの価格が下がらなければ、参院選の最大の争点として徹底的に攻める』とも指摘しています。小泉新大臣は短期間での結果が求められる厳しいタスクを背負った船出となります」 鈴江キャスター 「石破首相は小泉氏の改革姿勢に期待してということでしたが、小泉氏は『いまこの局面で大事なことは組織・団体に忖度のない判断をすることだと思います』と話しています。どこまで切り込んだ改革ができるとみていますか?」 平本記者 「そこはまさにポイントだと思います。江藤氏は農水関係との関係が強いという意味で農水関係を味方にして改革を進めようと思った面があると思います」 「小泉氏は逆に、改革姿勢で『農水族』に対しても切り込んでいくという姿勢をいま全面的に出しています。そうした改革姿勢と、『敵』をどう『味方』に巻き込みながら進めていくか、どう結果を出していくかは非常に難しい問題だと思います」 「2つの大事な点があって、1つは短期的にコメの価格を下げること、もう1つは長期的に構造的な問題にどれだけメスを入れられるか。その2つに注目していくべきだと思います」 鈴江キャスター 「そういった改革を進める政治決断をしていく上でも、1人ではできないと思います。そうなると気になるのは石破首相との距離感ですが、その辺りはどうでしょうか?」 平本記者 「実は2人は距離が近いと思います。石破政権を取材していると、近い議員、頼れる議員が少ないと言えます。その中で、石破首相が困ったときに、アドバイスしてくる数少ない議員の1人が小泉議員です。農水相の後任をめぐる名前があがった人の中には、支持率が低く政権を取り巻く環境が厳しい中で、『自分は受けない』と消極的な人もいました。こうした中、距離の近さも起用の裏側にあったと言えます」 鈴江キャスター 「3つめのポイントです。閣僚の辞任は消せません。石破政権にも大打撃なんでしょうか?」 平本記者 「国会の会期末まであと1か月。与野党の攻防は一気にヒートアップしていきます。最大の焦点は国会の最終盤における石破内閣への不信任決議案への対応です」 「ここまでなかなか野党も野党でそれぞれの党に思惑のズレがあり、まとまらない状況が続いていました。それが今回、江藤氏への対応をめぐっては野党が一致したことで、事態は急転しました。ある立憲民主党幹部は『野党がまとまれば大きな力になることが証明できた』と手応えを感じています。内閣不信任決議案を出すか出さないか、最終的に野党が結束するかまだまだ不透明な中で、ある立憲幹部は『大きな一歩だ』と手応えを話しています」 「石破政権にとっては閣僚の辞任というダメージに加え、バラバラだった野党が結束するというきっかけも与えてしまい、政権運営はさらに厳しい状況になりそうです」

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