去年に比べ車の死亡事故が増加している栃木県。先月も高速道路の逆走事故で3人が死亡した。栃木県警交通部は21日、県警の公式YouTubeチャンネルで県民に直接「交通安全」を訴える動画を配信した。そこには県警本部長が。（社会部　清水彰） ■交通安全動画の作成、背景には死亡事故増加 栃木県警が21日、交通安全を訴える啓発動画を県警の公式YouTubeチャンネル「とちぽりチャンネル」で配信した。去年に比べ死亡事故が増えている状況に危機感を抱き、「これまでの対策に加え新しい取り組みを」と作成されたものだ。 栃木県内では今年、死亡事故が増加傾向にある。20日時点での交通事故による死者数は29人、去年の同時期から16人増加している。 県警は交通事故の危険性や傾向、対策などを視覚的に分かりやすく県民に届けるツールとして、動画を公式YouTubeで公開することにした。 ■交通部作成、タイトルは「警察本部長24時」 啓発動画のタイトルは「警察本部長24時〜『交通事故』との闘い編〜」。およそ3分間の動画は、栃木県警交通部が撮影したものや提供された事故の瞬間映像などを生成AIを使って独自に編集したもので、ほとんどコストをかけず、1か月ほどで完成したという。 その内容はまず、栃木県内で多い死亡事故例が紹介される。3位は車同士の正面衝突事故、2位は交差点での出合い頭の事故だ。 実際、21日に栃木県大田原市で起きた死亡事故は出合い頭の事故、前日に芳賀町で起きた死亡事故は正面衝突だった。 そして、1位を紹介するのは交通機動隊の制服に身を固めた杉本孝・栃木県警本部長である。意外にも多い車と歩行者の事故が1位だった。この後、歩行者への夜間の反射材着用や、ドライバーへの夜間のハイビーム運転を呼びかける内容になっている。 ■全国でも珍しい「本部長出演」 この春、栃木県警に赴任した杉本本部長は警視庁時代、全国でいち早くYouTubeを活用し、犯罪抑止の啓発動画を作成、公開したという。本部長は今回の啓発動画の中で、自ら出演した上で交通安全や取り締まり強化への理解を直接、県民に訴えかけた。メインのナレーションも杉本本部長によるものだ。 栃木県警が初めて公式YouTubeチャンネルを立ち上げたのは2020年11月、生活安全部だった。それ以来、本部長自らが動画に出演するのは初めてとのことで、県民に「興味、関心をもってもらうため」というのが理由のようだ。本部長も「自らが出演することへの関心は未知数だが、県警の責任者として話しかけたい」と、その理由を語った。 ■「本部長出演」今後シリーズ化？ 今後、街頭活動や交通講話などでもこの動画を活用していくという栃木県警。直接県民に届けられ、スマートフォンがあればいつでも何回でも視聴できるYouTubeをメッセージ発信のツールとし、交通部に限らず、他部署でも対策発信の検討が進んでいるという。「本部長出演」がシリーズ化しそうな勢いだ。 郄橋修司・交通部長は、「交通事故を決して他人事とは思わず、自らのこととして交通安全を考えてほしい」と呼びかけている。あの手この手で交通安全を訴えている栃木県警、ぜひ一人一人が加害者にも被害者にもならないよう願いたい。 動画は栃木県警察県民広報相談課公式YouTubeチャンネル「とちぽりチャンネル」か栃木県警交通企画課公式Xで視聴できる。