タワマン価格の下落を異常に気にする人たち 〈1階に常駐する管理人さんの匂いが気になりますね。あんな人がいると、内見に来た人の印象が悪くなるのではないでしょうか〉 〈週末になると、3階ロビーで子どもたちがお菓子を広げて騒いでいますよね。警備員や管理人はいったい何をしているんでしょうか。ロビーも含め、このタワマンの近くで子どもたちが遊んでいると印象が悪くなり、資産価値が下がるのでは、と心配です〉 タワマン価格の高騰が止まらない。空前絶後のタワマンバブルのなかで生まれているのが、資産価値の下落を異常に気にしすぎる人たち、だ。 部屋を買ったときの値段より、数千万円も高く売れてしまう時代。日々、自分の住むタワマンの相場を確認して、少しでも売却価格が上がっていれば大喜び。反対に「もし何かの拍子で資産価値が下がったらどうしよう……」と思い悩む人が、タワマン界隈には続出しているのだ。 「タワマン掲示板」の人間性を疑う書き込み 関東圏にあるタワマンの理事長を務め、その経験を『タワマン理事長』にまとめた竹中信勝氏も「理事会にはいろんな要望が寄せられましたが、なかには『資産価値が下がるから、あれをなんとかしてほしい』という声もありました」と明かす。 「『屋上に雑草が生えている。このまま放置するとコンクリに根を張って、ひび割れが起きて水漏れが発生してしまう。資産価値が下がるのでなんとかしたほうがいい』という要望がありました。業者に見積もりをお願いすると、年間で80万円かかることがわかったので、仕方なく私が草むしりをしました。資産価値に直結する問題は住民の方も敏感になるので、できるだけ迅速に対応していましたね」 理事会に要望を出す住民はまだ真っ当だ。近年、資産価値を気にしすぎる「病めるタワマン住人」たちが集う場がある。「タワマン掲示板」だ。 各タワマンに住む人同士で情報交換を行うことを目的として作られた、ウェブ上の掲示板。多くは「近くにこんな美味しいお店がある」といった生活お役立ち情報を交換して盛り上がっているのだが、一部のタワマンの掲示板では、その価値の上がり下がりを気にしすぎる人たちによる、人間性を疑いたくなる書き込みがたくさん見られるのだ。 デカいバッグは見苦しいから 冒頭のものは湾岸エリアの高級タワマン掲示板の書き込み。「タワマンを美しく保ちたい」という気持ちが捻れて、目に入ってくるものすべてが邪魔になったのだろう。さらに港区のとあるタワマンの掲示板を覗いてみると、こんな書き込みが。 〈ウーバーイーツを頼む住民が多くいますが、あのデカいバッグを背負った人がエントランスを出入りすると、見苦しくないですか？　このマンションの資産価値を下げると思うので、禁止すべきだと思います〉 この書き込みに、掲示板では住民から賛同の声が続出。その後、理事会に諮られることとなり「このマンションで宅配を頼む際、配達員には裏口から入ってもらうこと」という規約が定められたという。 「掲示板に書かれるような不安要因でタワマン自体の資産価値が大きく落ちるようなことは、実際にはほとんどないでしょう。いまは不動産価格高騰期なので資産価値の上下が気になるのは仕方がないでしょうが、度を超えた書き込みを行い、それが他の住民の目に触れマンション内にギスギスした空気が生まれるほうが、よほどマンションの価値を毀損してしまうのではないでしょうか」（個人向け不動産コンサル・さくら事務所副社長の山本直彌氏） 資産価値の下落よりも、人としての品位が下がっていることに気づくべきだと思うのだが……地上から高く聳え立つタワマンに住む彼らには、そんな庶民の声は届かないのかもしれない。 「週刊現代」2025年5月26日号より 「現場はパンク寸前…」タワマン建設ラッシュの裏で崩壊する「マンション管理」の悲惨な実態…！