【特集】戦後80年 絵画が語る「子どもたちが描いた戦争」 作品が訴える今後の未来《新潟》

新潟県十日町市の下川手集落では大正時代から戦後にかけて子どもたちが手がけた書画2700点余りが残されています。 時代を追うごとに描かれ始めたのは兵士や戦場の様子。 子どもたちの目に戦争がどうに映っていたのか、作品を通して見つめます。 約2700点の下川手少年団の書画作品 銃弾が飛び交う戦場に……。 ケガをしながらも勇敢に戦う兵士の姿が色鮮やかに描かれています。 これは大正時代から戦後にかけて十日町市松之山地区の下川手集落の子どもたちが描いた作品です。 案内してくれたのは集落の区長・福原諭祐さん。 【下川手集落の区長 福原諭祐さん】 「学術技倆報というタイトルで書や絵が綴られて先生に赤字で採点を評価していただいてそれが集落内に回覧されていたものになりますね」 学力向上のための作品 集落の子どもたちが学力の向上を目的に書いた習字や絵画。 教員の評価を受けた後、「学術技倆報(がくじゅつぎりょうほう)」としてまとめられ、大切に保管されてきました。 その数2700点あまり……。 時代の移り変わりが読み取れる歴史資料としてことし3月、十日町市の文化財に指定されました。 子どもたちは当時の雑誌や漫画、身の回りの景色などを見ながら描いていたといいます。 日中戦争が始まった1937年ごろから戦争を題材にした作品が少しずつ増え始めました。 【下川手集落の区長 福原諭祐さん】 「ここが昭和11年で12年に行くとかなり兵隊さんの絵が出てきますけども……おそらく見本となるものにそういうものが増えてきた時代が移り変わったところで子どもたちの絵も題材が変わってきたのかな」 絵や書を書いた当時の子どもは 力強く咲く真っ赤な一輪の花…… この絵を描いたのは下川手集落で暮らす福原ツイさん(97)です。 Q)どんな絵を描きました? 【福原ツイさん】 「ツバキを描いたり……お花とか、男の人はいい絵を描いてね」 2700点の作品の中にはツイさんの習字や絵画も残されています。 ツイさんは戦争を題材にした絵は描かなかったといいいますが、当時の様子を今でも覚えています。 【福原ツイさん】 「赤い召集令状が来たりして、国旗に寄せ書きをしていくんだけど、寄せ書きした人から”お前の寄せ書きの名前があって”って言って……たまに慰問みたいにしてやったりね」 作品を研究する教授が思うこと 下川手集落の作品を研究してきた新潟大学の柳沼宏寿教授です。 集落からも戦地へ向かう人がいる中、こうした絵画には応援する気持ちを込めて兵士などが描かれたといいます。 【新潟大学教育学部 柳沼宏寿教授】 「子どもたちは戦争の実態を情報でしか知らないんですけども、身近な方が必死になって戦っていることから戦争に対しての思いが高まっていたのかな。自分たちの代わりに戦地に赴いている兵隊さんを 応援する純粋な気持ちで書いていたようです」 戦地の兵士を想った手紙 これは、戦地へと向かう兵士を想って書かれた子どもたちの手紙。 日本のために戦う兵士への励ましや感謝の気持ちがしたためられています。 子ども達の手紙よりー 「私は兵隊さんのことを 毎日一度は考えています」 「兵隊さんは國のため 君のためにつくすことは ありがたい」 福原ツイさんの兄も戦争へ ツイさんは5人きょうだいの3番目……1942年には長男の仁一郎さんが陸軍に入隊し、満州やパラオへ向かいました。 しかし、戦況が悪化すると県内にも被害が広がります。 1945年8月1日、長岡市ではアメリカ軍の空襲によって多くの人が犠牲となりました。 爆撃機が上空を飛ぶ音は下川手集落でも鳴り響き、恐怖を感じながら身を隠したことを今でも覚えています。 【下川手集落 福原ツイさん】 「電気を暗くしたり、白壁を黒くしたり、そういうことはしたんだけどね」 そして、1945年8月15日、日本が降伏を宣言。 その翌年……。 生き延びたツイさんの兄は帰還しますが、戦争のことは何も話さなかったといいます。 【下川手集落 福原ツイさん】 「リュック背負って青々した顔で帰ってきた。言わないあの人は、いやなんだろうね言うのが。人に申し訳ないという気もあったりね、帰ってきて。子どもの時だけど大変だと思った」 アメリカ軍の飛行機の音。そして、戦地から帰還した兄の様子。 子どもながらに戦争の恐ろしさを感じました 【下川手集落 福原ツイさん】 「戦争はよくないし、軍隊をつくることもよくない」 大学生が作品を鑑賞 この日、新潟大学で行われた柳沼教授の授業。 美術の教員を目指す学生が戦争を題材にした下川手集落の作品を鑑賞しました。 【大学生】 「明るい色使いで戦争のことが描かれているんだなと思いました」 「日本がかっこよく描いてある。かっこいい印象があります」 【新潟大学教育学部 柳沼宏寿教授】 「子どもたちの兵隊に込める思いを感じてくれました。ありがとう」 ポーランドの子どもたちが描いた作品は 柳沼教授が次に配ったのはポーランドの子どもたちが描いた戦争。 そこには兵士によって支配されるまちの様子などが描かれています。 学生たちは日本の子どもが描いた作品とのある違いを感じていました。 【大学生】 「日本の兵隊に対する憧れを表現している絵じゃなくて、戦争を悲しいものと捉えているような感じがしました」 「日本の子どもが描いた絵は実際に子どもはこんな映像を見ていないだろうなと思ったんですけど、ポーランドの子どもが描いた絵は実際にこういう場面があって目で見たものを描いたのかなって」 ドイツがポーランドに侵攻したことで始まった第二次世界大戦。 これらは終戦後に描かれた作品です。 戦場となったまちの様子、ドイツ軍によって捕虜収容所へ連れていかれる人々。 子どもたちの目に映った様子は過酷な記憶として鮮明に焼き付いていました。 日本の子どもが描いた戦争……ポーランドの子どもが描いた戦争。 どちらも今の私たちに訴えかけるものがあります。 【新潟大学教育学部 柳沼宏寿教授】 「もしこの子たちが戦争じゃない絵を描いていたら、どんな絵を描いていただろうか」 「あの絵は子どもたちの無垢な純真な気持ちが表れている。その目線から見た描かれているものを私たち大人は今なにを捉えるのか、何に気づかなくちゃいけないのかということだと思います」 【大学生】 「戦争をモチーフにした題材を間近で見ることによって戦争があった事実を再確認して」「戦争が良くないものだと自分も思っているので、そういったことは悲しいことで繰り返されてはいけないことだなと思いました」 戦争の中に生きた子どもたち……。戦後80年の今、未来の子どもにどんな景色を見せるべきなのか。 残された作品が私たちに考えるきっかけを与えてくれています。

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