“ママの写真がネットにいっぱい…”お天気キャスターから会社員へ「高樹千佳子さん」の今 芸能界への未練は「ないです」

『めざましテレビ』のお天気キャスターや、ラジオのパーソナリティーなどで活躍した多田(高樹)千佳子さん(45)。忙しい日々を送ったフリーアナウンサー時代や転職を決意した経緯などをお聞きした前編に続き、後編では、キャリアチェンジ後の働きかたを中心とした現在の活躍について語ってもらった。(前後編の後編)  *** 【写真9枚】「芸能界への未練は?」と尋ねると…すっきりとした表情「ないです」。インタビューに応じる多田(高樹)千佳子さん  最近では、元女優の片瀬那奈さんがファッション通販サイト「ロコンド」に就職したり、アイドルを辞めたあとの就職支援をするサービスが展開されたりと(関連記事「職歴も学歴もない?『アイドル』を辞めた子はどうするのか 元アイドルが解説する“就活事情”」参照)芸能人のセカンドキャリアも多様化してきた。多田さんは6年前に転身を決断したから、その先駆けといえるかもしれない。 「私を覚えていてくださった方にはありがとうございますという気持ちです」。現在はNECグループのフォーネスライフ株式会社に勤務している  40歳という節目を前に、芸能界での仕事にひと区切りをつけようと考えた多田さんは、大学時代の専攻とも重なる不動産業界を志望。育児をしながら難関資格である宅地建物取引士を取得したあとは、自ら転職エージェントに登録し、就職活動を行ったというから驚きだ。 「履歴書には、担当していた番組や、業務内容などを書きました。エージェントさんはそれを見て“これはなんだ”と思われたかもしれません(笑)。子どもがいるので残業もほぼできない。しかも年齢的に40歳も近いとなると、どこが雇ってくれるのだろうと不安がありました。転職エージェントを利用し、応募書類は何通出したのか覚えていないのですが、2社から声をかけて頂きました」  そして入社を決めたのが、前職である株式会社オープンハウスグループだった。 「未経験にもかかわらず採用して頂けたのは、広報というポジションで、これまでの経歴を生かせるからだったのではと思います。すごく元気の良い会社で、みんなでスローガンを声に出したり、全社朝礼も毎週行われていました。社長との距離もすごく近くて、驚きました。入社当初は、後ろの席から大きな声が聞こえて“なにかあったのかな”と思ったのですが、同僚から“毎日こんな感じです”と言われたり(笑)。そういう社風にはすごくびっくりしました」  入社は2019年5月。当初はパソコン操作に苦労したようだ。 「パワーポイントや、エクセルというような基本的なソフトの使い方がわからなかった。入社してから少しずつ勉強していこうと思ったのですが、現場で使いながら覚えていけました。最初はメールに資料を添付して送る方法もわからなかったですし、経費精算もやったことがなく“どうやればよいのですか”と上司や隣の席の同僚に聞いて、本当にゼロから教えて頂きました。あとはライフスタイルの変化に慣れるのも大変で、通勤ラッシュでギュウギュウの満員電車に戸惑いましたね。キャスター時代も電車には載っていましたけれど、たとえば朝8時に放送が終わる『めざましテレビ』帰りはピークタイムを過ぎていましたし、都心へ向かうのとは反対方面の電車だったので、ガラガラだった。世の中を本当に知らなかったのだなと痛感しました……」 フリーランス、音楽の道は選ばなかったのか  自ら芸能界を飛び出し、会社員生活を選んだ多田さん。これまでのキャリアがあれば、フリーランスとしてワークライフバランスを保ちながら活動を続けることもできたはずだ。 「もちろんそういう選択肢もあったと思います。でも私の場合は、今後も20代、30代と同じような仕事量はこなせないと感じていました。不動産の仕事をしたいと考えると、どこか組織に入らないと思ったんです。企業勤めだと就労時間が決まっていますから、子どもを保育園に預けている間に仕事ができる。そういうメリットもありました」  所属していた事務所セント・フォースも、温かく送り出してくれたという。 「これまでも事務所を離れて事業を立ち上げる方や、ママ業に専念するために退所された方もいました。結婚や出産というライフスタイルが変わるのを機に、このまま続けるのか、新しい道に進むのかをいろいろと考えたのだと思います。ただ私のように会社員になる方はあまりいなかった。宅建の資格を取ったタイミングで、就職先が決まったら退所したいと伝えていました」  ところで多田さんといえば、音楽番組やパーソナリティーを務めていたラジオ番組でもたびたび明かされる、音楽好きの一面が知られていた。音楽業界に進もうとは思わなかったのだろうか。 「音楽はすごく好きで、雑誌の連載のお仕事を頂いたり、音楽番組を担当させて頂いたりもしました。でも、音楽のほうは趣味で止めておこうかなと思いましたね(笑)。好きではありましたけれども、子どもが生まれてからなかなか新しいものを聴けていないんです。子どもがもう少し大きくなったら、一緒にライブに行ったりできるようになるかなと期待しています」 さらに転職、ご自身の強みは  オープンハウスへ入社した後、2023年に現在の勤務先であるNECグループのフォーネスライフ株式会社に転職した。「誰も病気にならない未来。誰もが自分らしく生きられる社会へ。」を掲げるヘルスケア事業会社で、少量の血液から約7,000種類のタンパク質を一度に解析する世界初(※1)の技術を活用し、認知症、心筋梗塞・脳卒中、肺がんに将来罹患する確率等を可視化する「フォーネスビジュアス(※2)」を提供している。 ※1米国SomaLogic社の約7,000種類のタンパク質を一度に測定する世界初の技術。※2フォーネスビジュアス検査は医療機関の医師を通して提供。  多田さんは引き続き広報・PR業務を担当している。 「前職のオープンハウスも大好きだったのですが、子どもが小学校に入学し、いわゆる“小1の壁”にぶつかった。保護者会にも出席しなければならないし、朝も登校時間が早く、宿題やテストもあり、親のフォローが保育園時代以上に必要になってきたんです。働き方を変えられたらと思い、リモートワークやフレックスなど柔軟な働き方が叶う職場を探しました。  現職ではフレックス制なんですが、子供の習い事の送迎や通院で中抜けすることもできるのでありがたい。職場には同じように育児しながら働いているママさんもいますね。転職先には、働きやすい環境で仕事と育児を両立できること、そのなかでも企業理念や展開しているサービスに共感できる企業を選びました。フォーネスライフは『誰も病気にならない未来。誰もが自分らしく生きられる社会へ。』という企業理念があるのですが、その実現を目指し提供しているフォーネスビジュアスに魅かれて、入社いたしました」  転職をする上で避けて通れないのが収入の変化の問題である。多田さんの場合はどうだったのだろうか。 「今のところはありがたいことに、前職からの給与と同じくらいです。ただ環境が変わると、維持するのは難しいこともありますよね。20代、30代の時は会社員時代よりも多い年収を頂く年もありました。でも仕事量に増減があるので、フリーランスだと年ごとのアップダウンがある。そういう意味では、会社員はある程度収入が安定しているのもありがたいですね」  2度の転職、それも社会人経験が少ないなかでの30代、40代での決断。それを可能にしたご自身の強みは何であるか聞いてみた。 「これまでは社内の表彰式イベントの司会や、入社式、内定式の司会、プロモーション動画出演等をさせて頂いたりしました。そういう面では、アナウンサー経験が少しはお役に立てたのではないかなと思います。元の業界の方々との交流も細々とですが続いていて、フリーアナウンサー時代にお世話になった方がテレビ局や制作会社などに在籍している場合には、自社の業務に関連した企画を提案できる人脈も強みでしょうか」 “ママの写真がいっぱいある”と娘さん… キャリアに悩める人へのアドバイスは  大学時代からほぼ休みなく働いてきた。そのモチベーションは「働くことが好きだから」だという。 「セント・フォースでの17年間はものすごく忙しい時もありました。仕事が忙しい時は辛いし文句を言うこともありますが、一晩寝ると、わりとリセットできちゃうタイプなんです。女性もどんどん社会に出て、才能や経験を生かした仕事で社会貢献できる時代。自分の娘にも働いている姿を見せたい気持ちがあります。母親が働くことで娘の視野が広がってほしい。あとは何かとお金がかかりますからね(笑)。収入は多ければ多い方がよいかなと」  お子さんは、テレビで活躍していた頃はご存じなのだろうか。 「娘が2歳くらいの時に転職したので、テレビに出ている姿はほぼ見ていないですね。前職でラジオ番組を担当していた時に、どうしても収録現場に娘を連れて行かなければならない時はありましたが。その時はヘッドフォンをしてマイクに向かって話している私を見て“ママは何をしているのだろう”と驚いていました。それでも小学生になった今は、インターネットで私の名前を検索して“ママの写真がいっぱいある”と言っています(笑)。どんどん色々なことがわかってくる年齢になるので“どうやってなったの”とか“なんで辞めちゃったの”と聞いてきます」  数々の経験をしてきたからこそ、娘に教えられることもある。 「ずっとその職業というわけではないよということですね。ライフステージやいろいろな要因で仕事を変える人もいますし、それによって得られる経験もある。もちろん長く続けることで得られることもある。そういう選択肢が沢山あるということは伝えたいです」 「芸能界への未練」を尋ねると、すっきりとした表情で「ないです」と答えてくれた。 「そうですね。もう戻ることはないと思います。それよりも、私を覚えていてくださった方にはありがとうございますという気持ちです。引退して6年も経ちますが、今回のように取材などの依頼を頂くこともあります。芸能界時代の過去があることで現職の仕事に生かせることもあるので、ありがたかったなと思います」  最後に、自分のキャリアに悩みながらも次の一歩に踏み出せない人へのアドバイスを訊ねた。 「私の場合は、宅建の勉強をしたことで次のキャリアにつながった。そういう意味では、自分の強みを作ることから始めても良いかと思います。自分がこうなりたいという目標があったら、そのためには何が必要で、どれくらいの期間がかかるかを考え、その目標から逆算することが大事。仕事でもよく言われるのですが、まずゴールから逆算して、なるべく無理のないスケジュールを組むことが必要です。無理をするとストレスも溜まってしまいます。同時に、私は宅建でしたが、なにか動き出すのは勉強でなくても良いとも思います。いろいろな人に会って話を聞くことでも得られる情報があると思います。そこから発見もあったり、ヒントを得られたりすることもあります。まずはやっぱり動くことが大事ですよね」  ***  新しい業界に自ら飛び込む多田さんの姿からは勇気をもらえる。“チカちゃん”として親しまれたフリーアナウンサー時代の思い出は【記事前編】で語ってくれた。 【多田(高樹)千佳子 プロフィール】 1979年生まれ。『めざましテレビ』(フジテレビ系列)のお天気キャスターとして芸能界デビュー。その後も、『すぽると!』などアナウンサーとして活動。2023年12月から現職であるNECグループのフォーネスライフ株式会社のプロダクトユニットに所属。社内外への情報発信や各種メディアに向けた広報活動業務を担当。 池守りぜね(いけもり・りぜね) 東京都生まれ。フリーライター。大学卒業後、インプレスに入社。ネットメディアで記者を務めた。その後、出版社勤務を経て独立。育児、グルメ、エンタメに関する記事のほか、インタビューも多数執筆。『一瞬と永遠』、『絶叫2』など、映像脚本も手掛ける。プライベートでは女児のママ。 デイリー新潮編集部

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