「私はコメは買ったことがありません。支援者の方々がたくさんコメをくださるので。売るほどあります」 5月18日、自民党佐賀県連政治資金パーティでの江藤拓農相の発言が物議をかもした。騒動は収まらず「実際には定期的にコメは買っている」などと“言い訳”を重ねたものの、21日、辞表を提出することとなった。同日、小泉進次郎元環境相が後任に任命された。 昨年9月、突如全国で発生したコメ不足。“令和のコメ騒動”と呼ばれ、スーパーには「入荷ナシ」という虚しい貼り紙が散見された。あれから半年が経ち、間もなく暑い夏がやってくる──。 今年も猛暑になるのだろうか。その場合、コメ不足は続くのだろうか。三重大学大学院の気候ダイナミクス研究室の立花義裕教授に話を聞いた。 「猛暑だった1年前と状況はほとんど同じです。なので、最初に結論をいうと、今年も猛暑になると思います。猛暑の原因の1つとして挙げられるのが偏西風の蛇行。西の中国大陸から東へと吹いていくのが偏西風です。北極の寒気と熱帯の暖気の間を通るので、その南側は暖かく、北側が寒くなる傾向があります。 これまでは真っすぐ吹いていた偏西風ですが、近年は温暖化の影響で暖気が北へせり出してルートが極端に北側へ蛇行し、その分、暖気に包まれる範囲が大きくなって全国的に気温が上がりやすくなっています」(以下「」内の発言は立花教授) 猛暑はやはりコメ不足と関係しているという。 「コメの需給バランスが崩れた原因は、ここ数年続いている猛暑ですよ。とくに、いちばん打撃が大きかったのは2023年度です。2023年はただ暑いだけじゃなくて、雨がまったく降らなかった。とくに新潟県を中心にほとんど降らず、干ばつ状態だったんです。結果、コシヒカリの一等米比率が3・6%まで下がったんです。去年も猛暑でコメの取れ高は減っています。味も落ちています。こういう不作がだんだん世の中に影響を及ぼしてきています。 コメ不足の理由をほかに挙げるとしたら、消費者が皆さん、コシヒカリを欲しがったからです。そしてコシヒカリは暑さに弱いのです。そのため、コシヒカリが狙い撃ちされるように不足し、需給のバランスが崩れたんです。消費者はコシヒカリを求めるが、ないので結果として値上りしてしまう。このような消費者が特定の銘柄一辺倒であるという状況も影響しているでしょうね。今はコメ自体がないので、選んでいる余裕はありませんが。今年も猛暑になる可能性が高いので、コメ不足問題はしばらく解決しないでしょうね」 猛暑の影響で“大凶作”だというが、それは豪雨の影響もある。 「近年は世界中の海面水温が高い影響で、例年以上に水蒸気が海から上がり雨になっています。つまり、豪雨も増えています。普通に降る分には問題ないのですが、豪雨になると水害が起きる可能性があり、その地域のコメはもちろんダメになりますよね。今年は陸地の温度がぐんぐん上がっているので、水温の上昇と相まって梅雨期の雨は例年よりも多くなると思います」 最後に来年以降のコメの展望についても尋ねた。 「来年以降、さらなる地球温暖化が予想されるなかで、西日本のコメはだんだんダメになっていくんです。品質が著しく悪くなるでしょうね。逆に北海道は美味しいコメが増えるでしょうね。作付けさえ増やせば今後の成長が期待できます」 地球温暖化は、ついに日本人の主食までも脅かし始めた……。