「今月初めに、母親に数万円を振り込むように頼んだが断られた」── 5月7日、東京都文京区の東京メトロ南北線・東大前駅で、無差別に人を刃物で切りつけるという危険極まりない殺人未遂事件を起こし、逮捕された無職・戸田佳孝容疑者(43)。犯行に及んだ直接の動機が分かった。 【写真】母が所有するアパート、高価そうな自転車…“寄生”していた容疑者の「裕福な実家」 全国紙社会部記者は事件をこう解説する。 「切り付け事件は5月7日午後6時55分ごろ、東大前駅のホームで起きました。戸田容疑者は、ホームで並んでいた男子大学生が電車に乗ろうとしたところを、背後から突然、無言で切り付けました。男子大学生は首や額などに約10日間の入院を必要とするけがを負い、容疑者はすぐに周囲の男性らに取り押さえられました。戸田容疑者と男子大学生に面識はなく、無差別的な犯行だったとみられています。 その後の取り調べに対し、容疑者は『親から教育虐待を受けた。教育熱心な世間の親たちに、度が過ぎると子どもが犯罪を起こすと示したかった』と、自らの境遇に対する不満を供述しています」 犯行時、戸田容疑者は長野県に一人暮らしで、事件当日に上京したとされる。実家は名古屋市にあり、親族が繁華街近くに4階建てのアパートを所有するなど、裕福な家庭環境だったことがうかがえる。 一方、戸田容疑者は少なくとも直近で定期的な収入はなかったとみられ、経済的な困窮が事件の引き金の1つになったとも指摘されていた。 「戸田容疑者は『小学生の頃、テストの点数が悪いと親から叱責された』などとも話していますが、『教育虐待』の具体的な内容は判然としていません。 一方、『母親に振り込みを断られた』ことの他にも、『両親に毎月仕送りをもらっていたが、父親が亡くなってから定期的にもらえなくなった』などとも供述しており、老いた親に“寄生”してきたゆえに生活に困り、自暴自棄になって犯行に及んだのではないかという印象を受けます」(同前) 親からの仕送りを頼りに生活していた様子の戸田容疑者。高齢とみられる母親は43歳の息子からいくらの仕送りを頼まれていたのだろうか。 高齢者の「子への仕送り」データ 容疑者の母親と同世代の高齢者の仕送りについて、参考になるデータがある。厚生労働省が実施している国民生活基礎調査(2022年)によると、同調査に回答した、世帯主が70歳以上の1万9689世帯のうち、子に仕送りをしていると回答したのは298世帯(1.51%)だった。 また、70歳以上で子に仕送りをしている世帯の平均仕送り額は月8.3万円で、97世帯(子に仕送りをしている世帯の32.55%)が10万円以上の仕送りをしていると回答しているのだ。 「統計の種類は異なりますが、日本の高齢者は約3600万人以上。このうち1.51%が仕送りをしているとすれば、50万人以上という数字も試算されます。容疑者の世代はバブル崩壊後の就職氷河期に社会に出た『失われた世代』と呼ばれ、多くの人が就職などで苦しんだ世代だったことは間違いありません。 ただ、同容疑者は小学校の卒業文集に『ぼくは、アホです。頭が、ちょう、へんです。将来の夢は、お先まっ暗で、全然わかりません』『てめえら、いじめるぞ』『勉強なんか、やるものか』などとつづっており、すでに心の闇の片鱗をのぞかせていました」 容疑者に汲むべき事情などはあるのだろうか。現在、警視庁は戸田容疑者の責任能力を調べるために鑑定留置を行っている。 情報提供募集 ・情報提供フォーム:https://www.news-postseven.com/information XのDMはnews_postsevenまでお送りください。