“レトロな写り”だけじゃない…スマホを持たないネット編集者が教える「デジカメ」の“意外なメリット”

5つの理由  スマホのカメラ機能が充実している中、なぜかデジカメが人気なのだという。CNETは3月12日に「デジカメの人気が再燃している5つの理由--スマホに追いやられたはずがなぜ?」という記事を公開した。そこで示された5つの理由を以下に紹介する。 【写真で比較】どちらがスマホでどちらがデジカメ? 同じ風景を両方で撮ってみた結果わかった鮮やかな違い 【1】レトロ感 【2】特別感(スマホで写真を撮るのは特別ではなく、デジカメなら取り出し、電源を入れ、その一枚にフォーカスする) 【3】スマホ(インターネット)から切り離されている 【4】写真が良くなる、または少なくとも別物になる 【5】TikTok(#digitalcameraのハッシュタグを使い、自身のデジカメコレクション紹介やデジカメで撮影する様子をスマホで撮影する、などの若者が活発に投稿している) 【5】については、使い捨てカメラ(メーカーは「捨て」という言葉を嫌い「レンズ付きフィルム」と呼んでいたが)が2010年代以降プチブームになったり、チェキが未だに特別なイベントの時に使われたりすることに似ている。それは【1】【2】【4】とも関係していることだろう。 再注目のデジカメ  筆者はスマホを持っておらず、未だに2010年代のデジカメを使っている。元々NikonのCoolPixを使っていたが充電器をなくしてしまったため使用をやめ、その後はCanonのIXYを2台連続で使用。だが、両方とも海で水没させてしまい、本稿執筆時の5月23日、カシオのEXILIM到着を待っているところである。 ネットから切り離されている  自分自身の場合、スマホがないからデジカメを使っているだけだ。ここ10年間、スマホの方が、写真を撮る時に色々考えてくれ、キレイな写真を撮ってくれるのは分かっている。私が使用する2010年代のデジカメはピンボケも多いし、食べ物もマズそうにしか撮れない。同じものを家人のスマホで撮ったものと私の撮ったもので比較すれば一目瞭然である。  それなのになぜ人気なのかといえば、【3】の「スマホ(ネット)から切り離されている」が一番重要なのではないだろうか。とにかくスマホを常時手にしている人は、ありとあらゆるところで写真を撮る。食べたものは当然ながら、街中の行列やら変な看板なども撮る。さらに、いいねが欲しいあまり、それをその場でササッとSNSに投稿するまでがセットとなっている。スマホ中毒・撮影中毒・投稿中毒の起点が、スマホのカメラ機能なのだ。  しかも投稿した場合は、そのSNSに触れているわけだから、今度は他人の投稿を延々と見続けてしまう。デジカメは、当たり前だが撮影と、モニターでの閲覧にとどまる。スムーズにSNSにあげることはできないため、「スマホ脳の弊害」「デジタルデトックスの必要性」が叫ばれる昨今、デジカメが見直されているのではないだろうか、というのが私の考えだ。  さて、デジカメの利点はCNETの記事で紹介された5つ以外にもあるのではないだろうか。以下、6〜10として、私なりに挙げてみる。 なくしたのがスマホだったら 【6】小さい  2020年以降使っている計4台のカメラはいずれも短パンのポケットに入るもので、スマホよりずいぶん小さく持ち運びがしやすい。 【7】とにかく記録するだけのためならばデジカメで十分  別にプロの写真家になりたいわけでもないし、今のスマホはある程度の使いこなしができる人なら上手な写真を撮れるもの。あくまでもちょっとした記録のためだけに持っているので、写真の出来栄えを気にしない人間はデジカメでいい。 【8】なくしたり、水没させたりしてもそこまで凹まない  私の愛機IXYは2回連続で海水に水没させたが、1回目はSUP(スタンドアップパドルボード)中に落とし、2回目はシケの日にイカ釣り船に乗っている時のこと。カメラを取り出したところで船が大きく揺れ、甲板を伝って生簀に入ってしまった。さすがに水没(しかも海水)に勝つことはできず、すぐに買い換えを決定。  もしもこれがスマホだったら「クラウドにデータは全部入っているから大丈夫なはずだ」と自分に言い聞かせるために強がって、確認できるまで不安になる。新端末を入手するまでコミュニケーションが取れず、仕事もできないといった事態になる。たかが写真を撮るためだけにスマホを落として壊したり、どこかに忘れてドキドキする恐怖感がデジカメにはない。要するに、スマホという人生において重要過ぎるものと「たかが撮影」を同じ端末にさせてしまうことには弊害があるのだ。 撮影係にならずに済む 【9】他人と同じことをしているのが気恥ずかしい人間にはいい道具  7人掛けの電車の席に座っていたら、目の前の7人、そして自分の側の6人全員がスマホを見ていて、立っている乗客もスマホを見ているという状況に置かれたことはある。とはいっても、今や都会の電車の中では75%がスマホを見ているだろう。仮に自分がスマホを持っていたとしても、全員が同じことをやっている光景というのはどこか気恥ずかしいので、多分スマホは出さず、本を読んだりすることだろう。  それと同様に、先日国民民主党の玉木雄一郎代表らが博多駅前で演説していた時、聴衆の多くがスマホを出して玉木氏の撮影をしていた。祭りの山車の通過、観光地のランドマークや滝や鳥居等の前でも人々は一斉にスマホを出している。これと同じことをするのはやはり気恥ずかしい。デジカメで撮影をしていたら少し気恥ずかしさが消える。 【10】撮影係・送信係にならないで済む  仲間で集合写真を撮る際、カメラマンになる人は自分のスマホで撮影をする。その人も入るべきなので、私は撮影係を2枚目では買って出るが、その後LINEグループで送る時はノータッチ。デジカメユーザーには絶対にあり得ない係をやらないで済む。  花火モードなど各種モードを使いこなせればそれなりに上手に写真は撮れるかもしれない。スマホ(ネット)がリアルに入り込み過ぎた今だからこそ、デジカメを使うと煩わしい人間関係から逃れて写真を撮ることができるのである。皮肉にも、ライバルのスマホによって見出されたデジカメの魅力、味わってみてはいかがだろうか。 中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう) 1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。 デイリー新潮編集部

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