「もう無理かも…」中学受験を辞めたいと打ち明けた日 夫がかけてくれた意外な言葉 “塾なし受験”の回想

長男(現在高校1年生)は、小学4年生から6年生までの3年間、塾に通わず家庭学習で中学受験の勉強に取り組んだ。じつは、その間で「もうやめたい」と言ったことが1度だけある。だが、それは長男ではなく筆者の口から出た言葉だった。 【写真】「E判定」から半年弱で!驚がく勉強術で超難関大に合格したミス・ワールド日本代表モデル 3年間を通じて、長男は一度たりとも「やめたい」と口にしなかった。心の中では揺れたこともあったかもしれないが、少なくとも親に対して弱音を吐くことはなかった。あきらめの言葉を口にしたのは、本人ではなく、そばで見守っていた筆者だった。 その出来事は、長男が小学4年生の年末頃だった。表向きは順調に見えていた中学受験生活だったが、筆者の心の中では「もう続けられないかもしれない」という思いが芽生えていた。理由は、サポートの負担が想像以上に大きかったことだ。 当時、夫が関わっていたのは、算数の新しい単元の解説と間違えた問題のフォローのみで、それ以外はすべて筆者が担っていた。例をあげると、毎日の学習計画の作成、教材の選定と準備、暗記の手伝い、丸付け、模試や学校の情報収集と申込みなどである。それに加えて、長女の家庭学習の準備、丸付け、教材選定なども担当していた。 さらに当時は幼稚園児だった次男の世話、家事全般、図書館での本の貸し借り(子どもたちに多くの本に触れてほしいという思いから、毎週数十冊の本を借りていた)。こうした状況により、筆者の1日はすでに限界に達していた。加えて、始めたばかりの仕事に対する緊張感も重なり、体力的にも精神的にも大きな負担となっていた。 そして、限界を感じたある晩「もう続けていく自信がない。長男がやりたいなら、できる範囲で支えるけれど、今まで通りは無理だ」と相談するに至った。 筆者の話を静かに聞いた夫は、まず「ごめん」と謝った。そのうえで「今後は算数全般を自分が担当する」「できるだけ早く帰って日は他の科目の勉強もみる」「家事ももっと協力する」と申し出てくれた。 このとき夫が算数を全面的に引き受けてくれたことで、筆者の負担は目に見えて軽くなり、学習の効率も上がった。今振り返れば、「最初からもっと分担しておけばよかった」と思う。 もちろん夫の仕事が急に変わるわけでもなく、家事分担が劇的に改善されたわけではなかった。しかし「しんどい」と正直に伝えたことで、気持ちは大きく軽くなった。筆者の心に「ひとりで抱え込まなくていい」という安心感が生まれ、少し肩の力を抜いて受験に向き合えるようになった。 おそらく筆者は本当に受験をやめたかったのではなく、自分の苦しさに気づいてほしかったのだろう。夫に話を聞いてもらい理解されるだけで、こんなにも心が軽くなるのかと実感した。今になって思えばこの問題の本質は、夫婦間の役割分担ではなくコミュニケーションの不足だったのかもしれない。 中学受験は子どもの努力だけでなく、家庭全体、特に夫婦の協力があって初めて成り立つものだと感じている。筆者はこの出来事を機に、夫と意識的に話す時間を持つようにし、受験のことに限らず日々のことも共有するようにした。 中学受験は親子だけではなく、夫婦関係も試される。なかなか厳しい挑戦だ。 ◆野田 茜(のだ・あかね) 2男1女のママライター2022年に長男が完全塾なしで中学受験をし、偏差値60半ばの中高一貫校へ進学。現在、小5次男が通信教材を利用し自宅学習で中学受験に挑戦中。自身は中学受験未経験で大学まで公立育ち。中学受験の問題の難易度にまったく歯が立たず、逆に子供に教えられる。「ママ、教えてあげよっか?分かる?」と次男に心配される日々。 (よろず~ニュース特約・野田 茜)

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