「株式会社MIXI」と聞いて、かつて一世を風靡したSNS「mixi」を思い浮かべる向きは多かろう。しかし現在、同社の売上の大半を稼いでいるのは、スマホゲーム「モンスターストライク(モンスト)」であることをご存じだろうか。そんな“モンスト一本足打法”からの脱却を図るべく、次なる柱へと育てようとしているのが、「スポーツベッティング」の事業だという。違法なオンラインカジノの問題が度々ニュースになるなど“逆風”の感もある中、同社が公営競技に基づくベッティング事業に注力する理由や社会的意義とは。 ※本稿は「週刊新潮」2025年5月29日号掲載の対談企画「経済アナリスト森永康平の ビジネスリーダーにドロップキック!」を再編集した記事です。 スポーツベッティングの事業が注目されている *** 競輪やオートレースネットの投票サービスをはじめ、「スポーツベッティング」の事業を展開するMIXI。これを「モンスト」に次ぐ収益の柱に育てたいと、同社の木村弘毅社長は言う。 「まず、大人が夢中になれるエンターテインメントって何だろうという課題が、我々の中にずっとあったんですよね。モンストなどのゲームは、どうしてもどこかで卒業するタイミングがある。そこで注目したのがスポーツでした」 MIXIは、バスケットボールの「千葉ジェッツ」やサッカーの「FC東京」など、スポーツチーム自体をグループに抱えている。 「もちろんそれらの事業も大切なのですが、一方で海外のスポーツビジネスを勉強していると、大きな経済循環を起こしているという意味では、ベッティングだなと。日本でも競馬や競輪などの公営競技は、大人どころかおじいちゃんおばあちゃんになっても楽しんでいらっしゃいますよね。こういう場を、コミュニケーションの機会に転換できないかなと思ったんです」 スポーツベッティングの社会的意義 若年層がメインの顧客層となる「モンスト」とは違い、“いくつになっても楽しめる”分野なのだという。 「みんなで同じスポーツを見ながら賭けることでわっと盛り上がる。海外では当たり前のようにやられていることを、日本でももっと取り入れられないかなと思いまして。年齢を重ねるほど、旧友と会う頻度ってどんどん減ってしまうと思うのですが、インターネット上で人と繋がって、一緒に盛り上がれるサービスを日本でもできればと」 そしてそれは社の理念とも合致していて、 「人が集まって盛り上がる機会をつくることこそ、当社が最も大事にしていることです。ですから単なるベッティングではなく、『ソーシャルベッティング』という呼び方を重視しています」 昨今では著名人のオンラインカジノ問題が話題になり、ベッティング自体にネガティブな印象を持つ層も一定数いるようだが、スポーツ振興など、社会的意義も大きいと木村社長が言う。 「こうして経済が循環するということは、スポーツ振興に貢献できている面もあると考えています。たとえば、教員の負担軽減を目的に部活動の地域移行が促進されていますが、財源不足で文科省も対応に苦慮しているのが実情です。そこで公営競技の収益をそのような取り組みの財源にできないか。私が委員長を務める経済同友会の『スポーツとアートによる社会の再生委員会』ではそうした提言や働きかけも行っています」 〈有料記事【「『mixi2』をどうマネタイズするか」「ベッティング事業に注力する理由」「『モンスト』の次なる狙いは」 森永康平氏が暴く「株式会社MIXI」の知られざる経営の実態】では、そんなスポーツベッティングの事業の詳細や、売上の大半を稼ぐ「モンスト」の実態と今後の戦略、さらに昨年末にローンチされて話題を呼んだ「mixi2」の戦略などについて、経済アナリストの森永康平氏の直撃によって明かされている。〉 デイリー新潮編集部