毎日放送(MBS、大阪市)が放送したドキュメンタリー番組の内容を巡って、兵庫県豊岡市日高町の観光協会が「事実と異なるもの」があったと主張したことを受け、MBSは2025年5月29日、「取材に基づき適切な内容を報道しております」と公式サイトで反論した。 「帯同していた秘書課の職員=知事側」は「拡大解釈」なのか MBSは25日、ドキュメンタリー番組「歪んだ正義〜止まらぬ攻撃の先に〜」を放送。同番組では、兵庫県・斎藤元彦知事の内部告発文書問題をめぐる百条委員会の委員を務めた丸尾牧県議らを取り上げ、丸尾氏を誹謗中傷したり虚偽の情報を拡散したりする人々に取材していた。 番組の途中で、丸尾氏が調べていた「知事スキーウェアたかり事件」に言及。スキー場を視察した知事がスキーウェアを欲しがっていたという疑惑について、このスキー場がある地域の「日高神鍋観光協会」が否定したとし、MBSがこの観光協会の会長に事実関係を確認するシーンがあった。 観光協会の会長への取材シーンでは、次のようなナレーションが流れた。「会⾧は一昨年2 月、知事側から視察のときに借りたスキーウェアを無償で提供してほしいと打診があったことを認め、『必要であれば購入してほしい』と返答したと話しました」。 このシーンを受け、観光協会は27日に「事実と異なるもの」があったと主張。聞き取り調査を行った結果、同協会の会長は、MBSの取材を受け、「一貫して齋藤知事からおねだりはなかったと証言している」と説明した。そして、問題点を次のように指摘していた。 「取材には『帯同していた秘書課の職員からスキーウェア提供の打診があった。知事から直接おねだりをされたという事実はない。』と回答。ドキュメンタリー(6分55秒頃)では、あたかも知事から直接おねだりがあったと認めた事になっており、齋藤知事と職員を合わせて【知事側】からおねだりがあった、と拡大解釈されている」 最後に、観光協会は「上記が放送され、SNSでは当協会に危害を加える事を仄めかす過激な投稿がなされている事に対し、随時法的措置を講じる」などと方針を示した。 MBS「協会が主張する『拡大解釈』ではないと考えます」 観光協会の主張を加え、SNSでは「捏造」「偏向報道」などの批判が上がった。こうした内容を受け、MBSは29日、「取材に基づき適切な内容を報道しております」などと反論する文章を番組のウェブサイトに掲載した。 MBSは、観光協会が「事実と異なる」と指摘する2点について見解を示した。 1点目は、スキーウェアの「おねだり」について反論。会長は「スキーウェアの無償提供の打診があったとする一方で、『おねだり』ではなかったとしている」とし、MBSは「会⾧が『おねだり』と認識していなかったと理解しています」と説明した。この点は番組内容にも反映されたとしている。 「そのため、番組では『無償で提供してほしいと打診があった』と取材内容をそのまま報道しております」 番組では、第三者委が「知事の要望でスキーウェア提供の打診が行われたと認定」したことを報じている。また、第三者委の報告書で「外形的に見て『おねだり』したと見られる可能性がある状況であったことは事実とみてしかるべきである」と記されていた箇所があったことについても報じている。 MBSは、この第三者委の認定や見解については「報道しています」としている。 2点目は、番組で「知事側」という表現を使ったことについて反論。会長は「秘書課からの問い合わせを受けた県民局の職員からスキーウェアの無償提供の打診があったとしています」とした上で、次のように説明した。 「兵庫県の秘書課の業務内容は『知事・副知事の秘書事務』とされています。また会⾧は、知事も必要であれば購入して欲しいと返答したとも証言しており、番組では『知事側から無償で提供してほしいと打診があった』と報道しました。協会が主張する『拡大解釈』ではないと考えます」 最後に、MBSはメッセージを伝えている。「誤った情報があたかも事実のように拡散される状況こそ、当番組で問題視していたことです」。 「今回の放送後、観光協会に対する SNS での攻撃的な投稿や迷惑電話が多数確認されているとのことです。番組では観光協会や会⾧を批判する意図は一切ありません」 MBS のディレクターに対しても誹謗中傷が寄せられているという。MBSは「不確かな情報をもとにしたネット上の攻撃などに対しては厳しい措置を講じていきたいと考えています」との方針を示している。