どうしても日本の野球ファンの目は、ドジャースの大谷翔平(30)に注がれてしまう。だが大谷がいなければ、日本のスポーツニュースはカブスの鈴木誠也(30)一色になっていたはずだ──。鈴木の快進撃が止まらない。5月29日現在、メジャートップの51打点。鈴木は出場51試合で50打点を達成しており、これはカブス史上では20年ぶり9人目の快挙だという。 *** 【写真】鈴木の快進撃を支える“元日本代表”美人妻(30)の清楚な和服姿。鈴木のインスタグラムに登場するたび話題に 本塁打の数も飛躍的に増えている。鈴木は2022年のシーズンにメジャーデビューを果たしたが、この年に放った本塁打は14本だった。 23年は20本、24年は21本。ところが今シーズンは既に14本を打っている。シーズン30本塁打を期待する声も非常に多い。 絶好調が続く鈴木誠也 今シーズンは“覚醒”と呼ぶにふさわしいスタートダッシュを見せているわけだ。しかしながらメジャーリーガーとしての鈴木は、これまで苦難の連続だったと言っていい。 メジャーリーグ研究家の友成那智氏は「昨シーズンは文字通りの崖っぷちに追い詰められました。今シーズンは見事な復活を果たしたと言えます」と高く評価する。 「広島時代の鈴木選手は強打者というだけでなく、“強肩の外野手”としても活躍していました。ところが鈴木選手に限らず、日本人の外野手はメジャーで評価が低くなる傾向があります。アメリカの広い球場を守るためには生まれ持った高い身体能力が必要です。特にアメリカ人の野球選手は幼い時から複数のスポーツを経験しており、基礎体力のレベルが高い。恵まれた体格を持ち、走力、遠投力、俊敏性といった能力が傑出しているため、どうしても日本人では敵いません。鈴木選手も守備でそれほど評価されなかったことが、つまずきの始まりだったと思います」 ドジャースとのトレード報道 もちろん例外はある。イチロー氏(51)や新庄剛志氏(53)は外野手としてメジャーでも高く評価された。友成氏は「両選手とも身体能力の塊みたいなタイプでした」と言う。その一方で、 「鈴木選手は打撃でもムラがありました。ホームランを連発したかと思えば、1カ月にわたって快音が全く響かない、という具合です。また昨シーズンは途中からDH専門を指示されました。守備にこだわりのある鈴木選手にはショックだったのではないでしょうか。さらに“プラトーン・プレイヤー”として起用されたこともありました。右投手と左投手でスタメンを変える戦術をアメリカでは“プラトーン・システム”と呼びます。鈴木選手は右投手の時はベンチスタートで、左投手の時だけ先発するという“プラトーン・プレイヤー”だった時期があったのです。これも鈴木選手のプライドを傷つけたことは想像に難くありません」 昨シーズンのオフにはトレードの対象となった。ドジャースが獲得に向けて動いたのだ。 もちろんドジャースが興味を持ったということ自体は、野球選手として評価されていることを意味する。これを「名誉」と解釈することも可能だ。 その一方で、カブスが「不要」と判断したと受け止めることもできる。実際、昨シーズンのオフでカブスは外野手の補強に成功。シカゴの一部地元メディアが「鈴木が弾き出される」と報じたのは事実だ。 守備が与えた影響 「結局、トレード話は流れ、鈴木選手は今年3月、日本で行われた対ドジャース開幕戦に出場しました。テレビでご覧になった方も多いと思いますが、DHで2試合に出場したものの、全くいいところがありませんでした。アメリカに戻ってからも不調は続き、3月の成績は打率1割6分2厘、出塁率2割2分2厘、得点圏打率は0割0分0厘という深刻な内容だったのです」(同・友成氏) ところが鈴木に転機が訪れる。4月3日の対アスレチックス戦にDHではなくライトで出場したのだ。すると2回表にスリーラン、4回表にソロホームラン、そして7回表にはタイムリーヒットを放つ大活躍を見せる。 「鈴木選手は守備にこだわりがあります。昨年12月には代理人が『DHではなく外野手としての出場を望んでいる』と明かしていました。これに対し、カブスのクレイグ・カウンセル監督は1月のファン感謝イベントで、鈴木選手をDH専任で使うと明言しました。ところがケガ人が出た関係で、4月から鈴木選手が外野を守る必要が生じたのです。やはり嬉しかったのでしょう。打撃成績が劇的に上向いた理由だと思います」(同・友成氏) もちろん今でもDHでの出場が多いのは事実だ。しかし「絶対に外野を守れない」と「外野を守るチャンスがある」の違いは大きいだろう。 2番と3番が大活躍 昨シーズンの屈辱的な起用、シーズンオフのトレード報道、3月の不調という崖っぷちを経て、鈴木は4月に奇跡の復活を果たした。4月の打撃成績は打率3割4分2厘、出塁率4割1分1厘、得点圏打率4割2分9厘、本塁打6本だった。 友成氏は「今シーズンの鈴木選手は非常に勝負強いです」と言う。 「5月27日のデータになりますが、面白いことにランナーのいない場面だと鈴木選手の打率は2割5分です。ところが得点圏打率だと3割7分3厘に上がり、満塁時には5割5分6厘という凄まじい打率です。鈴木選手の勝負強さは、打点と得点圏打率で大谷選手を上回っているのが何よりの証拠です」 さらに友成氏は「2番がカイル・タッカー選手、3番が鈴木選手、というスタメンも機能しています」と指摘する。 タッカーは昨年12月にトレードでアストロズからカブスに移籍した。2021年と22年の30本塁打、23年の29本塁打も素晴らしいが、注目ポイントは出塁率だ。昨シーズンは4割0分8厘という驚異的な数字だった。 「タッカー選手が塁に出てくれるので、ランナーを背負った投手は勝負強い鈴木選手と対戦せざるを得なくなります。そして見事に鈴木選手がホームランやヒットを放つというパターンが定着してきました。鈴木選手の勝負強さは配球を読み切り、山を張って見事に仕留めるところにあります。崖っぷちから復活を果たした強靱な精神力を考えれば、今シーズンの大活躍は間違いないのではないでしょうか」(同・友成氏) デイリー新潮編集部