石破首相が、大阪・関西万博に合わせて来日する各国首脳らとの「万博外交」を本格化させている。 　米国の関税措置をきっかけに米中対立が深まり、新興・途上国「グローバル・サウス」との連携が重要性を増す中、１００か国以上の要人が訪れる機会を生かして日本の存在感を高め、個人的な信頼関係を深めたい考えだ。（井上暢、上村健太） 「米中に挟まれる国々に日本の重要さを伝えられる」 　「法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、東南アジア諸国連合（ＡＳＥＡＮ）諸国との関係を一層重視したい」 　首相は２９日、ラオスのトンルン・シースリット国家主席にこう語りかけた。ラオスは米国から４８％の高関税を課され対応に窮しており、同国の経済成長への貢献もアピールした。 　首相はこの日、タンザニア、クウェートも含めた３か国の首脳らと首相官邸で立て続けに会談した。クウェート皇太子との会談では、防衛長官時代に自衛隊のイラク派遣で協力を得たエピソードを披露し、関係強化を呼びかけた。 　４月の万博開幕以降、首相が国内で会談した外国要人はこの日までに１７人に上る。１０月までの万博期間中、各国の文化を日替わりで発信する「ナショナルデー」出席などのため、続々と日本を訪れる首脳らと今後も会談を重ねる予定だ。 　外務省幹部は「外遊で訪れる機会が限られる中小規模の国々と、戦略的な連携を深める上で万博はまたとない機会だ」と語る。 　就任当初両手での握手など不慣れな所作で外交経験の不足を指摘された首相にとっても、経験を積む貴重な舞台となっている。 　首相周辺によると、国会図書館から取り寄せた外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」を夜な夜な読み込むなどし、各国の事情を頭に入れている。首相は周囲に「万博はチャンスだ。米中に挟まれる国々にも日本の重要さを伝えられる」と語るなど、連日の会談に自信を深めている。 　日本留学の経験があるモンテネグロのミロイコ・スパイッチ首相と２８日に会談した際には通訳を介さずに日本語で話し、「歴史に残る会談だ」と持ち上げて場を和ませる一幕もあった。 　首相は、７月１９日の米国のナショナルデーに合わせたトランプ大統領の来日にも期待していたが、実現の見通しは立っていない。日米関税交渉を巡って、６月には首脳間で打開が求められる場面も予想され、首相の外交手腕が問われることになる。