同じ年齢でも「若々しい人」がいるのはなぜなのでしょうか? そのカギを握る物質が、老化を遅らせる可能性を秘めた「DEL-1(デルワン)」。 研究の先駆者である新潟大学医歯学総合研究科の前川知樹研究教授に詳しく聞きます。 【写真を見る】「同じ年齢でも“若々しい”」差は『DEL-1』にあり!?40代で激減…増やすには?老化研究の最前線を研究者に聞く【ひるおび】 健康寿命を延ばすカギ!?「DEL-1」 「DEL-1」は腎臓・腸管・血管・眼・脳神経で作られ全身を巡り、炎症を抑えるタンパク質です。(※脳のDEL-1は脳にとどまる) 最近は、体内にある唯一の抗老化タンパク質ではないかとして研究が進められています。 実際に、40代の年齢が同じ人の肌を比べてみても、「DEL-1」が多い人は肌ツヤがよくシミも少ないことが分かっています。 新潟大学医歯学総合研究科 前川知樹研究教授: 歯周病・歯槽膿漏が起きると骨が溶けるんですが、歯周病のマウスに対して「DEL-1」を投与すると骨の再生と、骨の吸収が抑制されます。 より人に近いサルを使った実験も行っておりまして、こちらでも「DEL-1」を投与すると非常に炎症と腫れが改善するような効果が見られました。 さらに、通常マウスは600〜800日で寿命を迎えますが、「DEL-1」の値が常に高いマウスは800日〜1000日以上生きるなど、「DEL-1」が全身の再生に関わっている可能性があり、健康寿命を延ばす鍵となると考えられています。 40代で激減!?「DEL-1」の働きは ≪DEL-1の働き≫ ▼「DEL-1」が老化細胞に自らを除去するように指令を出す ▼指令を出された老化細胞は、死ぬと同時に「食べてくれ」というシグナルを出す ▼免疫細胞と呼ばれるマクロファージが老化細胞を食べることで元気な細胞だけが残る 「DEL-1」は年齢とともに減少し、特に40代で激減してしまいます。 すると老化細胞がどんどん増え、炎症が起きると傷や病気が治りにくくなり、様々な病気の要因となってしまうのです。 前川知樹研究教授: なかなか傷が治りにくいとか、風邪をひいたら元に戻りにくいのは「老化」のせいと言われていたんですけど、実はこの「DEL-1」が減少しているせいではないかということがこの頃の研究でわかってきました。 「DEL-1」チェックリスト 以下の項目に1つでもあてはまったら「DEL-1」が減っている可能性が・・・ 【1】シミ・そばかす・シワ・たるみが増えた 【2】傷やニキビ跡が治りにくい 【3】見えづらくなった 【4】疲れやすい、疲れが取れない 【5】骨が痛む、骨折しやすくなった 【6】歯や口の中に関する異常や違和感が増えた(痛み、渇き、口臭など) 【7】急激な体重の増減があった 【8】高血圧、血圧が高め 前川氏によると、中でも注意すべき項目は【5】と【6】です。 前川知樹研究教授: 「DEL-1」は出る場所によって効果が異なるんですけど、一番よく作用するのは、骨や 歯の周りなので、「DEL-1」が低くなるとそういうところに一番影響が出てきます。 今回特別に、唾液を分析して「ひるおび」スタッフの「DEL-1」を測定。 これで体内の“再生年齢”が分かります。 40代スタッフ16人の「DEL-1」を測定すると、 再生年齢が最も若かったのは26.3歳(実年齢44歳)。 「肌が綺麗」とよく言われ、食生活に気を使い定期的な運動もしています。 そして最も高かったのは56.2歳(実年齢45歳)。 運動しているのに…と、本人は結果にびっくりしていました。 恵俊彰: 自分の感覚とずれるのはなぜですか? 前川知樹研究教授: 健康的な生活をしているのに、「こんなに低い」と思うのは、多分隠れた疾患があったり、自分でいいと思っていても実は夜ふかしをしていたり、食べ物に気を使っていなかったりする可能性があります。 「DEL-1」はどうすれば増やせるの? まずは、『オメガ3脂肪酸』を多く含む食材がおすすめです。 前川教授の実験では、毎日の食事に『オメガ3脂肪酸』サプリを与えたサルは、4か月後に「DEL-1」が約1.6倍になったという結果もあります。 管理栄養士の浅野まみこ氏によると、『オメガ3脂肪酸』は体内で合成できない必須脂肪酸で、食物から摂取する必要があります。 例えば、αリノレン酸は▼アマニ油▼エゴマ油▼クルミ DHA・EPAは▼サバ▼イワシ▼アジ▼マグロ(トロ)などに多く含まれています。 厚生労働省が定めている成人の1日の摂取基準は、年齢や性別にもよりますが1.7〜2.3gとなっています。 サバ缶は一日に約1/2缶(1缶)、クルミは一日に10粒程度が目安ですが、浅野氏おすすめなのが、「アマニ油」。一日に小さじ1杯ほどでいいので手軽に摂取できます。 そのまま飲んでもOKですし、市販のドレッシングに加えたり、味噌汁に足すことでコクもアップします。 ただし油が酸化すると体に害となるため、 ▼加熱はしない ▼なるべく空気に触れさせない ▼直射日光があたらないところに保管 ▼2週間〜1か月ほどで使い切る などに注意をしてください。 「DEL-1」は運動でも増やせます。 前川教授によると、週3回30分のウォーキングを1か月することで、40代で1.3倍、60代で1.5倍になったという実験結果もあります。 前川知樹研究教授: 40代の方ももちろん運動するとよくなるんですけど、60代の方が運動することでもっともっと効果が出てくるんですよ。 無理をしない形で1日30分くらい運動を増やしていただければ、「DEL-1」の数値もみるみる上がってくると思います。 「DEL-1」研究 将来的には・・・ 前川教授は「DEL-1」の量を簡単に調べられるキットを開発中です。 また、「DEL-1」が増加する薬の研究・開発も進めているそうです。 前川知樹研究教授: 老化したマウスに「DEL-1」誘導薬を投与したところ、スカスカだった骨が1回打っただけで若いマウスと同じくらいまで再生するような形になっています。 例えば骨粗鬆症とか、脳神経系の病気(多発性硬化症)だとかリウマチ関節の治療だとか、様々な疾患に対して使えるような薬を今開発しています。 今は長寿というよりも、健康で動いて長生きできること(健康寿命)が一番重要だと考えておりますので、そのための研究を行っています。 (ひるおび 2025年5月29日放送より) ========== <プロフィール> 前川知樹氏 新潟大学医歯学総合研究科研究教授 日本歯周病学会認定医 DEL-1研究の先駆者