バルカン半島に位置する小国・コソボを、山梨の身近に——。 　山梨学院大（甲府市）の研究室の一つに「在山梨コソボ共和国名誉領事館」が開設された。同国の駐日大使との交流が縁で同大学長代理を務める秋田辰巳教授が、４月から名誉領事となった。「ヨーロッパで一番新しい国であるコソボについて広めていければ」と意気込んでいる。（籾井智行） 　名誉領事館は主に現地に領事館のない地域に置かれる機関で、両国の交流や現地に住む国民の利益保護を行う。 　コソボの名誉領事は、これまで石破政権で内閣官房参与の飯島勲氏が務めてきた。その後、交流を重ねてきた秋田教授がサブリ・キチマリ駐日大使らから名誉領事就任を打診されたという。 　秋田教授と同国は、２０１９年に同大でレオン・マラゾーグ駐日大使（当時）が講演して以来の関係だ。 　大使交代後やコロナ禍後も交流を続けており、パリ五輪前の２３年１１月には、コソボで最も盛んなスポーツである柔道の代表チームを同大に招くことに尽力した。東京五輪金メダリストを含む代表チームは同大柔道部と合同稽古を行い、数日間にわたって共に汗を流した。 　このほかにも、秋田教授は自身のゼミでコソボを取り上げ、２〜４年生の学生たちが次世代を担うコソボの子どもたち向けの教材を作っている。教材は、同国で深刻な課題となっている廃棄物問題がテーマで、完成したものは実際に学生たちが在日コソボ共和国大使館を訪れて、贈呈するなどしているという。 　１９日には甲府市内で名誉領事就任式が行われ、秋田教授は「教育、スポーツ、文化交流などを通して相互理解と世界平和の歩みを進める拠点の一つとなることを祈念している」とあいさつした。 　キチマリ大使は日本の高等教育や県が推進する水素事業にも興味があるとした上で、「コソボが山梨県内に住所を持つことになったような感覚で、友好を示す印になったと思っている。水素社会の発展に向けて協力できれば」と笑顔をみせていた。 　◆コソボ＝国土は岐阜県と同規模の面積約１万１０００平方キロ・メートルで、約１６０万人が生活している。旧ユーゴスラビアを構成したセルビア共和国の自治州だったが、１９９０年代に分離独立を目指す住民とセルビア治安部隊の対立が激化。９８〜９９年のコソボ紛争後、国連の暫定統治を経て、２００８年に独立を宣言した。日本を含む１００か国以上が独立を承認したが、セルビアやロシアなどは承認していない。