松本若菜がヤクザにすごんで修羅場に…!異様なドラマ『Dr.アシュラ』が魅せる「緊迫の手術現場」

見どころは「彼女の働き」 大きく話題にはなっていないが、おもしろいドラマがある。 松本若菜主演の『Dr.アシュラ』である。 フジテレビ水曜10時のドラマ。 主人公は救急科の医師である杏野朱羅(あんのしゅら)。 通称アシュラ。 アシュラは「失敗しないので」と自分で言っていいレベルの凄腕の医師である(言ってないけど)。 ドラマ第1話冒頭で、いきなり心肺停止状態の女性が運び込まてくる。 研修医の薬師寺(佐野晶哉)とDr.アシュラの二人しかいない当直の夜である。 蘇生措置の最中、いきなり銃で撃たれたらしいヤクザの親分を乾分(こぶん)が運び込んできた。事態はさらに緊迫する。 このドラマの見ものは「Dr.アシュラの働き」にある。 彼女の動きは無駄がない。 しかも多岐にわたる。 見守ってしまう生き物として 女性を心臓マッサージから蘇生させたあと、脳の損傷を見つけて脳手術をして、さらにヤクザの親分の心臓の手術をする。 研修医の薬師寺は、ただ驚いている。つぎつぎ手術しようとすDr.アシュラに「無理です!」と叫んで立ち往生しているばかりである。それでも「ボウズ!」と呼ばれていろいろ手伝わされる。 まさに修羅場である。 修羅場における「阿修羅の働き」を見るドラマなのだ。異様なドラマである。 ドラマ冒頭に、患者たちの細かい説明はなかった。 救急隊員の説明はあるが、簡潔な伝達だけで、私たちにはよくわからない。 運び込まれた人が死にそうだ、ということだけがわかる。 だから見てしまう。 私たちは、死にそうな人がいて、助けようとしている人がいたら、それをずっと見守ってしまう。そういう生き物である。 道端で出会ってもそうだろうし、ドラマで見かけても同じである。 そこに訴えるドラマに出来上がっている。 際立つ冷静沈着ぶり Dr.アシュラは全力を尽くして、目の前の人を助けようとする。 その松本若菜に見入ってしまう。 修羅場のドラマである。 研修医を演じる佐野晶哉もいい。 初期研修医で、何もできないため、修羅場ではただあたふたしているばかりである。 Dr.アシュラ松本若菜に「ボウズ!」と呼ばれ、あたふたしつつ手伝う。 松本若菜と佐野晶哉のコンビが、いい。 研修医のあわてふためきぶりで、Dr.アシュラの冷静沈着がより際立ってくる。 Dr.アシュラは人としてのキモが据わっている。 第1話冒頭の修羅場では、まず心肺停止の女性が運び込まれたあとに、ヤクザの親分が運び込まれる。早く見ろ、と言われるが、そっちの心臓はまだ動いているだろ、こっちは止まってるんだと、相手にしない。 研修医が親分処理にもたつくので、苛立ったヤクザの若い衆がDr.アシュラに拳銃をつきつけて、うちのオヤジを優先しろと脅す。 Dr.アシュラは鼻で嗤い、私が死んだらオヤジも死ぬわよとあしらう。 若い衆はいったん引き下がるが、親分の心肺が停止したので、Dr.アシュラが施術している女性患者に拳銃を向けて、その女よりオヤジを助けろとまた脅した。 そのときDr.アシュラは手にしていたメスをヤクザの若い衆の喉につきつけて、「私の患者に手を出すな」とすごんだ。 気迫に押されて、ヤクザが引き下がる。 めっちゃかっこよかった。 「現場の緊迫」と「経営の退屈さ」のギャップ ドラマは、彼女の強さにとても惹きつけられる。 迫力がハンパではない。 そのあと、病院内の人間模様が描かれる。 これがまた、見事にどうでもいい世界であった。 緊張した現場とは無縁の、病院内の「政治」の話である。 病院経営をどうするかという話と、救急科は金がかかるから閉鎖するという話が進んで、大人の人たちがいろいろと動く。 見ていてふつうに、どうでもいいな、とおもってしまう。 リアルな病院世界には、そういう病院経営という側面も大事なのだろう。 でも最前線の医師には関係ない。 そういう現場の緊迫と、経営の退屈さのどちらもが描かれる。 病院内政治のために動いているのは、院長だった不動(佐野史郎)、部長だった金剛(鈴木浩介)、理事長の阿含(片平なぎさ)たちである。 ちなみにこのドラマの主要登場人物の名前は、かように独特である。 不動。金剛。阿含。 あと、大黒(田辺誠一)や六道(小雪)もいる。 仏教世界の言葉である。 修羅の世界を、そういう人たちが救うということなのかもしれない。わからないけど。 かっこよくなった「ヤバい医者」 Dr.アシュラは、政治には興味がない。 凄腕の医師のパターンどおり、人の命を救うことのみ興味があって、病院内での地位を上げることや、病院そのもののステータスを上げることには興味がない。 だから政治がらみでは退屈している。 彼女に同化して見ている私たちも同様に退屈する。 すごい緊張と、どうでもいい退屈と、どちらも見せるすごいドラマである。 途中、ゴッドハンドと呼ばれる医師・梵天(荒川良々)がこの病院にやってきた。 心臓外科医である彼の手術成功率は99%とされ、だからゴッドハンド。 しかし、その実態は、事前に患者の状況を徹底的に調べて、ぜったいに助かるとわかっている患者だけを手術して成功率を高くキープしているだけのヤバい医者であった。難しい手術はすべて断っている。だから成功率は99%。 それがDr.アシュラのいる病院にやってきて、化けの皮が剥がれる。彼は突然倒れたVIPの手術ができず手術室で倒れてしまう。 その場をDr.アシュラが救う。あとで取り繕われて、ゴッドハンドの名は残ったままだが、現場では軽くあしらわれるようになる。 このままでは梵天医師も「政治的な存在」だったのだが、化けの皮が剥がれてから、変わった。 医師をやめようとするが、同僚が瀕死状態で運び込まれたとき手が足りずに手伝うことになる。 確実な手術をおこなった。 梵天医師がかっこよくなった。 「病院政治」的存在として、つまらなかった梵天医師は、「修羅場」をくぐる医師となっておもしろくなった。 見ているだけでテンションが上がる! 世界は退屈な経営と、スリリングな現場で成り立っていることを見せてくれて、おもしろい。 まあ、何といっても松本若菜の手術ぶりが見ものである。 そこを見ているだけで、テンションが上がる。 こういうドラマもいいとおもう。 【さらに読む】遅咲きアラフォー女優・松本若菜…テレビの限界に挑む「脱ぎっぷり」のスゴさ

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