首相、森山氏と方針共有 「内閣不信任案なら衆院解散も」との記事を複数メディアが報じた。石破茂首相と自民党の森山裕幹事長との間でその方針が共有されているという内容だったが、その後、森山氏はこれを否定した。実際はどんなやりとりがあり、官邸はどう考えているのだろうか。 【実際の写真】石破佳子夫人の“2万円花柄ワンピ”姿 安倍昭恵さんのファッションと比較してみると 朝日新聞は6月2日付で《内閣不信任案なら解散検討 首相、森山氏と方針共有 立憲の動き牽制》というタイトルで、こう報じた。 《石破茂首相は2日、立憲民主党から内閣不信任決議案が提出された場合、採決を待たずに衆院を解散する方向で検討に入った。首相は自民党の森山裕幹事長とこうした考え方を共有。首相側には不信任案提出をめぐる立憲側の動きを牽制(けんせい)する狙いがあり、6月22日の通常国会の会期末に向けた与野党間の駆け引きは激化している》 同じ日付で産経新聞は《石破首相「内閣不信任案なら衆院解散も視野に」 森山裕氏と認識共有、立民の対応が焦点に》とのタイトルで、こう続けた。 石破茂首相と自民党の森山裕幹事長 少し前から語っていた 《石破政権で、立憲民主党が内閣不信任決議案を提出した場合、採決を待たずに衆院を解散するとの見方が浮上した。石破茂首相は自民党の森山裕幹事長と認識を共有しているとみられる。内閣不信任案提出を巡る立民の対応が焦点となる。政権関係者が2日、明らかにした。首相は「不信任案を出してきた場合は衆院解散も視野に入る」と周囲に話している。森山氏も同様の認識を自民幹部に伝えた。昨年10月の衆院選以降、自民、公明両党による少数与党下で厳しい政権運営を強いられてきた。解散すれば、夏の参院選に合わせた衆参同日選となる可能性がある》 つまり朝日も産経もほぼ同じ見立てである。政治部デスクに解説してもらおう。 「立憲が内閣不信任案を会期末に提出する可能性は当然想定され、というか出さない理由はないので、それにどう対応するかはこれまで話し合われてきたことです。少し前から今回記事になったようなことを森山氏がオフレコで語っていたことはありますね」 奇策で奇襲 「少し前」というのは江藤拓前農水相が失言で更迭される前で、内閣支持率が低空飛行を続けていた頃だ。 「衆院で過半数割れする去年秋まではどう否決するかを考えるまでもなかったわけですが、内閣不信任案が出たら否決するというのが常です。そのため、記事にあるように内閣不信任案なら解散というのは奇策と言うか奇襲になるでしょう。少数与党として可決されないための多数派工作をするだろうと思いきや、解散に打って出るということですからね。このタイミングなので参院選とのダブル選になる可能性が高く、当然、勝算や大義名分がなければこんなことをオフレコでも言わないはずですが、“自公与党は勝てる”“こういうテーマを訴えたい”という話を聞いたことはありません。もちろん私は今回報じられたような森山氏の考えを事前に聞いていましたが、あくまでもオフレコのレベルで頭の体操程度かなと捉えていました。基本的にはオフでも解散に言及するような発言を慎むものですが、政権運営を事実上担っているという森山氏の自負心の現れだったのかもしれませんね」(同) オフレコ発言がどうして 事前に語られていたオフレコ発言が今回どうして日の目を見ることになったのだろうか。森山氏は3日の会見で「野党が不信任決議案の提出を決定したとは、まだ承知していないし、その件について私が石破首相と相談したということもない」「仮に不信任決議案が提出されれば、石破首相が適宜適切に判断されるものだ」と述べた。報道内容を完全に否定した格好だ。 「オフの文言が報じられたのは森山氏が“書いてもよい”とゴーサインを出したからです。一方、3日の会見ですべてを否定するのは既定路線。“仮の話”に対応する必要はないんですが、つい口が滑ってしまったんでしょうか……。それはともかく、ゴーサインを出した背景にあるのは、6月22日の通常国会の会期末を見据えて情報戦を仕掛けたということになるでしょうか。が、うーん、会期末までの残りの日数を考えるとちょっと早すぎるかなという印象を受けました。現時点で聞いているのは、内閣不信任案なら解散という戦略ではなく否決するために維新などに声をかける方向へとシフトしているとのこと。いろんな意味でややこしい展開になっていますね」(同) いずれにせよ匕首(あいくち)を突きつけられた立憲がどうするのか、に焦点が集まっている。 デイリー新潮編集部