「どうしてあのタイミングだったんだ…」長嶋さんが直面した「悲運」と、それでも諦めなかった代表監督

精魂、尽き果てるほどに 6月3日に亡くなった「燃える男」長嶋茂雄さん。そんな長嶋さんがひとかたならぬ熱い思いを抱いていたのが日本代表チームだった。2004年のアテネ五輪では病に倒れてタクトを振るうことができなかったが、再び日の丸のユニフォームをまとうことを諦めなかった。見せていた、その懸命な姿を記憶に刻みたい。 長嶋さんをよく知る長年の友人は、アテネ五輪のアジア予選を終えたばかりの長嶋さんと会った際、その疲弊した様子に驚いたという。 「本当に精魂、尽き果てていました。長嶋さんは代表監督を全身全霊かけて務めていた。だから選手たちも長嶋さんについていった。野球に育ててもらったという感謝の気持ちが強く、野球という文化を通して日本のために尽くすことを義務と考えていましたね」 8月の本大会前の3月に脳梗塞で緊急入院した長嶋さん。右半身にまひが残った。それでも復帰を目指して懸命にリハビリに励んだ。決戦の地に立つことはかなわなかったが、長嶋さんのリハビリメニューは緩むどこから、一層ハードになっていった。 「体の回復は誰もが驚くほどで、歩行のストライドも広がり、スピードも速くなっていましたし、右手もゆっくりなら挙げられるまでになり、話し方もスムーズになってきていた。そこまで頑張って回復できたのは、『こうなってしまったことはかまわない。でも、どうしてあのタイミングだったんだ』と度々、漏らしたようにアテネのときの心残りがあったから。 そして、次の08年の北京五輪で采配を執るためでした。アテネ五輪に就任した際、契約期限はもうけられておらず、長嶋さんもそのつもりでいた」(親しい球界関係者) 驚異の回復具合を見せるも しかし、大役を担えるまでには体調は戻らず、監督に指名されたのは星野仙一さんだった。 「午前中は毎日、散歩を欠かさず、午後は日曜日以外はリハビリ施設に行って2時間も体を動かす。体重や足の太さなんかも現役時代とそん色ないほどでしたが、無理はさせられないという結論に至った。それはしかたがなかったと思います。 ただ、長嶋さんは星野さんが就任することを事前に知らされていなかったそうです。当時は日本代表編成委員会の強化本部長でもあり、疑問に思いました。体のことを気遣ったのかもしれませんが、会議に出ることくらいはできた。意見を聞くだけでもすべきだった。長嶋さんも口に出すことはなかったものの、そのことを快くは思っていなかったそうです」(スポーツ紙デスク) 日本代表が北京五輪でメダルなしの4位に終わると、長嶋さんは危機感を募らせたという。 「日本の力になりたい」 「長嶋さんは星野さんの監督としての資質は認めていましたし、『代表監督は誰がやるにしても大変』と気遣う一方で、『日本の野球がどんどん後れを取ってしまう』と漏らしていた。翌年に開かれた第二回WBCで侍ジャパンを統率した原辰徳氏について『自分の遺伝子を受け継いでいる』と話したこともありましたが、長嶋さんの意欲にかげりは見られなかった」(前出・球界関係者) 教え子が侍ジャパンをWBC連覇に導いたとき、長嶋さんはすでに73歳。それでも、メークミラクルを信じてやまなかった。 「長いペナントレースは無理でも、第3回のWBCや正式種目から除外されていたものの復活した際の五輪の代表監督の座を諦めていませんでした。だから苦しいリハビリにも耐えられた。とにかく日本の力になりたいという一心だったんです」(前出・友人) プロ野球史上、最も愛された長嶋さんは、誰よりも日本を大切に思っていてくれた野球人でもあったのだ。 【こちらも読む】『元チームメイトが明かした、知られざる「長嶋茂雄」抱腹絶倒エピソード』 【こちらも読む】元チームメイトが明かした、知られざる「長嶋茂雄」抱腹絶倒エピソード

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