（小泉農水相） 「コメ担当大臣だというような思いで集中して取り組んでいきたい」 5月21日の就任後、スピード重視で奔走する小泉進次郎農水相。 備蓄米の売り渡し方法について、それまでの「競争入札」を見直し、「随意契約」を活用する方針をいち早く打ち出すと…、先週5月30日･金曜日には、随意契約による備蓄米が販売業者に届けられました。その日のうちにネットでの予約販売がスタート。そして…。 （都内のスーパー） 「開店しま～す」 就任から10日後、都内のスーパーでは「2000円台の備蓄米」の販売が始まりました。 今週には、静岡県内の一部で店頭販売もスタート。このスピード感に県民は…。 （街の人） 「すごく行動が早くていいじゃないですか。小泉さんに頑張ってもらって、備蓄米だけじゃなくてね、これから本当にどうしたらおコメが下がるかってことを真剣に政府としては 考えてもらいたいと思います」 （街の人） 「やる気に満ち溢れてるように見えます。国民のために早く、なんとか早く行動を起こそうというその気持ちがガッツがあるなって」 （街の人） 「動きはいいでしょ。老人たちは、いろいろなこと言ってるけど、今はもう緊急避難が 1番だからさ、あれでいいんじゃないですか」 一方で、自民党内“農水族”といわれる議員からは苦言も出ています。 （元農水相　野村 哲郎 参院議員） 「あまり（自民党の農林部会に）相談せずに判断したことをマスコミに発表している。実に事務方は困っている」 この発言に対し、小泉農水相も反論します。 （小泉農水相） 「今回のような随意契約に切り替えるということも党に諮らなければいけないとしたら、5月31日に備蓄米が店頭に並ぶことはありませんでした。自分の判断と責任をもって決める。そしてその結果責任は大臣が取る」 備蓄米を巡る“小泉劇場”は、石破政権にどのような影響を与えるのか？そして、今後の農政改革の行方は？ （伊藤 薫平キャスター） 「小泉劇場」とも言われる就任から2週間の動きを振り返ります。 小泉氏が農水相になったのは5月21日。すぐに「随意契約」により備蓄米を放出する方針を固め、先週29日には備蓄米が販売業者の元に届けられました。 そして就任から10日後、都内のスーパーや量販店の店頭に並び、2000円台での販売がスタート。5日からはコンビニでの販売も始まっています。 青山さん、このスピード感は小泉さんでないとできなかった？ （政治ジャーナリスト　青山 和弘氏） そうですね、こうした大きな改革というのはですね、やはり、まず党内から、先ほどインタビュー、声もあったように反発もあるんですね。それと地元の農家とかJAとかからの批判も当然あるかもしれない。そんな中でもスピード感を持ってやれるっていうのは、選挙に強い人じゃないとできないんですね。小泉さんはやはり盤石の地盤を誇っているので、そういう選挙を怖がる必要がない。さらに国民、消費者を味方につけられるという小泉さんの、一種の人気ですね、こうしたものも持っている…そういう意味では今回、農水相として小泉さん以上のこういった改革ができる人は、自民党内にはいなかったということは言えると思います。評価していいと思います。 （伊藤 薫平キャスター） 適任だったということですね。一方で、自民党内からは、この農業政策に大きな影響を及ぼす農水族といわれる議員からは、苦言も出ているという状況なんですね。VTRにもあった元農水大臣の野村参院議員は、「自分で決めて自分で発表してしまう」と苦言。農水族のドンともいわれる森山幹事長は「コメ離れが起きてはいけない、当然のことをしっかりやっていただいた」と小泉大臣に一定の評価を与えています。石破首相も農水相の経験者。コメの安定供給に向け、関係閣僚会議を設置することを決め、その初会合が5日夕方に行われる予定です。 （津川祥吾アンカー） この農水もそうなんですが、族議員という言い方をすると…国会議員には、よく「いいや、それはマスコミが勝手に言っているカテゴライズだろう」と叱られるんですが、あえてここは言わせていただきます。この農水族というのはどういう議員の人たちなのか、そして小泉農水相はその農水族をどのように見ているのか…青山さんどうですか？ （政治ジャーナリスト　青山 和弘氏） 今、農水族というのは、やはり地盤に農家とか、農業団体、JA、農協に代表されますけれども…そういったところが多くて、そういう人たちの支持をあてにして、支持を得て、国会議員になっている人たちなんですね。自民党には農林部会という部会があって、そこに大体ずっと属してる議員が農水族と言われるのですけれども、その人たちは野村元農水相みたいに、こういった苦言を呈する人もちろん少なくはないんですけれども、一方で、今やはりおコメが高すぎるという認識は、一致はしているんです。やはりここを下げないと、では「輸入しろ」という話にもなりかねないし…なんといっても森山さんが代表されるように参議院選挙で勝てない…やはり「自民党無策だ」と言われてしまう…これは避けなきゃいけないという意味では一致しているんです。そういう意味では、このおコメの値段を、まず下げるということに関しては、小泉さんを容認しているし、ある意味、応援している部分もあると思うんです。ただ、その先に、本当にこれまでの生産調整、いわゆる減反政策をやめて増産に踏み切るかといった大規模な構造価格については、対立してくることもあるのではないかと思います。 （津川祥吾アンカー） 大変、国民的にも注目をされる小泉農水相ですけれども、青山さんは最近、石破首相に取材をされたということですが、首相はこの小泉農水相をどのように評価されてますか？ （政治ジャーナリスト　青山 和弘氏） 石破さんは私にこう話していたんです。「怪我の功名」だと。これどういうことかというと、今回、戦略的に石破さんが小泉さんを指名したわけではなくて、もし、あの江藤前農水相が失言をしていなければ、今も江藤氏なのですよ。あの失言があって、一度は守ろうとしたのだけれども、守りきれなくてかわった。そこで一気に形勢を逆転しようということで小泉さんになった…一種の失言というけががあったからここに至ったということなのですね。ただ石破さんは、そもそも小泉さんと同じような農政改革推進派の元農水相でもありますので、そういう意味では方向性は一致していますし、これまでやはり野党の言い分をどこまでのむか…ばかりで、ちょっと閉塞感が漂っていた石破さんが、今回のことを受けて、ちょっと活力を取り戻しているな…という印象を私は受けました。 （津川祥吾アンカー） ただですね…、国民の関心事としては、この備蓄米が手元に来るかどうかもさることながら、そもそもコメの価格がいつ下がるのかとか、あるいは国会でもよく指摘されますが、その改革が今後どうなってくのか…どうなる見通しですか？ （政治ジャーナリスト　青山 和弘氏） まず、この農政改革をどうするかですね。参議院選挙の後に、恐らく先送りすることになると思います。ただ、まず、コメの値段が下がるのかどうかについては、小泉さんも今一生懸命走っていますけれども、はっきり言うと『分かっていない』のですね。私も小泉さんを取材しますと、『とにかく下がるまでやる』と、そうすると備蓄前がなくなってしまうかもしれない…そうした時は「ミニマムアクセス米」という海外のコメを…それでは投入するのかどうか、それも決めていないわけです。さらに、下がり過ぎてしまう可能性もあるわけです。急にあふれ出したことによって、ではブランド米も下げないと売れない…ということになって価格破壊が起きてしまうかもしれない。その時に、それではそれをどう抑えるのか、こうしたことも、ある意味まだ決めていないわけですね。あと、地域差です。東京大阪では結構、備蓄前が売られていますけれど、今のVTRにもあったように、静岡では、まだなかなか手に届かない…こうした地域差で不満も出てくるかもしれない。こうしたいろいろな歪にどう対応していくか、これ次第によっては参議院選挙の結果にも大きく影響する可能性はあると思います。