「日枝久氏も訴えるべきでは」「いつもの後手後手感が否めない」フジテレビの港前社長提訴発表を元テレビ朝日法務部長が解説 

 6月5日、フジテレビは、港浩一前社長と大多亮元専務を提訴する方針を固めたと発表した。なぜこのタイミングでの発表となったのか。そして、その狙いはーー。元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔氏が解説する。  *** 【独占写真】「中居くん、やせた?」 変装姿で友人に会いに行く中居正広氏 ほとんどの社員にとって「寝耳に水」だった  突然の発表を受けた社内の様子はどうだったのか。まずは社内の声から聞いていこう。  昨日は朝から中居正広氏の問題に関与した幹部たちの処分がいよいよ発表されるという話が出回り、社員たちは皆身構えていたという。 「処分は1〜2週間前に発表されるはずだったのですが、中居氏が反論に出たことが影響して延期になっていると言われていました」(ベテラン社員)  ところが蓋を開けてみたら、処分の話題が吹っ飛ぶような話が発表されたわけである。 港浩一前フジテレビ社長と大多亮元専務 「役員や法務、報道などのごく一部の関係者以外、提訴の件についてはウチが午後5時30分に流したニュースで初めて知ったはず。もちろん港さんらの責任を問う声は大きかったですが、実際、この間まで社長をやっていた人を会社が訴えるとなると衝撃が走りました。2人ともバラエティやドラマでフジテレビの黄金期を支えた、フジを象徴する人物でもありますし。そもそも、こんな展開はウワサにすら上ったことはなかったのです」(同) 元編成部長は「4階級降職でも年収1300万円」  提訴方針と合わせて発表された元編成部長A氏の処分内容は、4段階の降職と1カ月間の懲戒休職処分だったが、 「なんで解雇じゃないんだ、という声が社内では大きい。4階級の降職だと主任クラスになりますが、年収1300万円くらいは貰えますし、甘いんじゃないかと。タイミングを考えると、港さん提訴は株主総会を見据えての動きなのでしょうが、Aさんへの甘い処分内容を薄める効果を狙ったのでは、という声もあります」(同)  元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔氏も今回の港氏ら提訴に向けた動きは、「株主総会に向けてのメッセージ」とみる。 「まさに今は株主総会の招待通知が出され、水面下で票集めが進行しているタイミングです。株主に向けて、現経営陣が前経営陣の経営責任を追及している姿勢をアピールしたかったのでしょう」(西脇氏) なぜ日枝氏を訴えないのか  だが、「後手後手感が否めない」と続ける。その理由は、フジの親会社であるフジ・メディア・ホールディングス(FMH)が今年初頭の段階で、一度、港氏らの提訴を見送っているからだと言う。 「ちょうど昨日、FMHの株主の男性が、現旧経営陣15人に対して233億円の賠償を求める株主代表訴訟の第一回口頭弁論が東京地裁でありましたが、株主代表訴訟は、まず株主が会社に対して役員を責任追及する裁判を起こすよう請求し、会社が応じなかった場合にはじめて株主が提訴できるというルール。つまり株主代表訴訟が行われているということは、FMHとしては株主からの役員責任追及の要求を断っていたのです。フジはこれまでも、中居氏の問題について一度はクローズで記者会見を開き、批判を受けてもう一度フルオープンの会見を開くなど、世間の批判を受けた後手の対応が見受けられた。今回も一貫性がないと見られてしまうのではないでしょうか」(同)  さらに西脇氏が指摘するのは、フジが訴える旧経営者に、一連の問題を引き起こした“元凶”と言われている日枝久フジ前取締役相談役が入っていない点だ。 「港氏と大多氏は、中居氏から被害を受けたと訴え出た女性社員からの訴えに適切な対応を取らなかったという直接的な責任を負う立場。一方、日枝氏は中居氏の問題には直接的には関与していないとされているので、日枝氏を訴えたとしても法廷でどこまで責任が認められるかは不透明です。ただ、取締役であり大きな影響力があったとされる以上、経営責任を問うこと自体は可能。“過去との決別”のアピールが狙いなのであれば、日枝氏も訴えた方が明確なメッセージになったのではないでしょうか」(同)  今後、注目すべきはフジが港氏らに「いくら賠償金を請求するか」だという。 「株主代表訴訟では233億円を請求していますが、それに類するような額になるのか、それとも数億円といった額になるのか。金額次第で、フジのこの訴訟に対する“本気度”が見えてくると思います」(同) 西脇亨輔(にしわき・きょうすけ) 1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうま』『ワイドスクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。弁護士登録をし、社内問題解決などを担当。社外の刑事事件も担当し、詐欺罪、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反の事件で弁護した被告を無罪に導いている。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。 デイリー新潮編集部

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