入国者の手荷物をチェックし、密輸を水際で阻止する税関。訪日客が増える中、取り締まりを強化しています。5月、羽田空港の検査場で密着取材。茶葉と偽ってたばこの葉を持ち込もうとする人を問い質す、違法薬物の検査をするなど、緊迫の場面を目撃しました。 ■1人で大量の荷物を…中身は? 5月、羽田空港。多くの人が入国していきます。入国者の手荷物をチェックし、密輸などを水際で取り締まるのが税関です。日本政府観光局によると、今年4月の訪日外国人は390万8900人。過去最多を記録している中、税関は取り締まりを強化しています。 東京税関の羽田空港にある税関検査場で取材していると、ベトナムへ帰省していたという女性が、税関職員に話し掛けられていました。1人で大量の荷物を持っていたことが不審に思われたようです。 税関職員 「全部自分で使うやつ?」 女性 「そうです」 税関職員 「たばこない?」 女性 「たばこない」 ■追加の税金を払えず、全量「放棄」 すべての荷物の中身を調べます。税関職員が「開けてもらってもいいですか?」と頼みますが、なぜかスーツケースが開かない様子です。そこで工具を用意。了承を得た上でカギを壊し、開けてみました。入っていたのは、大量のたばこでした。 税関職員 「ないって言ってたのに、全部たばこ」 女性 「友達に言われてた。(中身は)全部服」 税関職員 「でもたばこだよ、これ。たばこダメ、こんなに」 たばこはその数、1万7600本。友人に頼まれ、中身を確認しないまま日本に持ってきたと女性は主張します。税関職員は「友達から頼まれて持ってきたんでしょ。それで持ってきたのはあなただから、『私は知らなかった』は無理だよ」と伝えました。 紙巻きたばこは国内へ持ち込む際、1人200本を超えると税金がかかります。今回は追加の税金が26万1000円。女性は払えず、すべてのたばこを放棄しました。 ■「ベトナムティー」の袋、重さ違う? 税関は、不審な点があれば徹底的に検査を行います。4つの段ボールを運ぶ男性は、日本に住む弟に会いにベトナムから来たといいます。職員が目を付けた赤い袋を計量してみました。 税関職員同士が「重さが200グラム重いんですよ、表示より」「なんだろうね」「お茶っ葉らしいんですけど」「切っていいかな。開けてみます」とやり取りしています。側面には「VIETNAM TEA(ベトナムティー)」の文字がありました。 税関職員が「開けちゃ嫌だ?」と尋ねます。ベトナムから来た男性は「空気入るから」と、中身の確認を嫌がりました。 税関職員 「ちょっと重さが違うんですよ。開けて確認させてもらいたい。中身が本当かどうか」 何が入っているのでしょうか。袋を開けた税関職員が「大麻じゃないですよね」「たばこ」と確認し合います。そして、男性に「これ中身違う。お茶じゃない。たばこ」と指摘しました。 男性はお茶の葉だと偽り、たばこの葉を10キロ以上密輸しようとしていたのです。 ■高級ブランドのロゴが入ったバッグも 税関職員から「ルイ・ヴィトン出てきました」という声が上がりました。この男性が持っていた別の段ボールからは、高級ブランドのロゴが入ったバッグなどが80点以上出てきました。 商品をよく見ると、隙間があるなど粗悪品でした。バッグの購入価格もおかしな点がありました。 ベトナムから来た男性 「1つ500円くらいかな」 税関職員 「安い」 男性 「ベトナムの給料は安い。値段も家賃とかも全部安い」 税関職員 「本物ならベトナムでも何十万円で売ってる」「前も税関に見つかって怒られてない?」 男性 「たばこはまだ」 税関職員 「たばこ以外で何か怒られてない?」 男性 「怒られました」 荷物の大半を放棄した男性。税関は、『二度と持ち込まない』と念書を書かせ、厳重注意しました。男性は「すみません」と頭を下げました。 ■「ケタミン」を探知、厳重検査に 24時間警戒を続ける税関。夜中の11時すぎ、緊迫の場面がありました。 マレーシアから来た男性の荷物をチェックする際、職員が白い布を取り出しました。スーツケースの中を拭き取ると、薬物などを探知する検査機に入れます。結果を見た職員は「ケタミン探知したので、厳重検査お願いします」と伝えました。 ケタミンは、幻覚作用のある違法薬物です。別の場所に移動して詳しく調べることになりました。ここからは、検査室での音声のみの取材が許されました。 税関職員が「もう1回チェックしていいですか?」と確認すると、男性は「いいですよ」と応じました。 税関職員 「ケタミン探知したって言いました?」 男性 「ノーケタミン」 税関職員 「ノーケタミン?」 男性 「ノーケタミン。ケタミンは好きじゃない」 ■別の男性からも反応…2人の関係は 男性への厳重検査が進む同じタイミングで、別の場所に税関職員が集まっていました。男性と同じ便に乗っていた別の男性の荷物からも、違法薬物のケタミンの反応が出ました。組織的な密輸の可能性も視野に、この男性にも検査室で厳重検査を行います。 税関職員 「MDMA、マリフアナ、コカインは持っていませんか?」 男性 「持っていません」 税関職員 「ケタミンは?」 男性 「持っていません」 ■2人は所持を否定、X線に通すと…? 男性は2人の関係について、「空港で会っただけで、一緒に来たわけじゃない」と説明します。2人は違法薬物の所持を否定。スーツケースをX線に通しますが、「異常はないですね」と税関職員は言います。 反応は出たものの、違法薬物は出てきませんでした。検査機の精度は高いため、職員によると海外で使用した時の成分が荷物に付着していた可能性があるといいます。 ただ、違法薬物の密輸は増えていて、東京税関は取り締まりを強化しているということです。 (6月4日『news every.』より)