物事の核心に迫る「大石が聞く」。今回は、まさに大騒動になっているコメの高騰についてです。「古古米」の登場を複雑な思いで受け止めている卸売業者。さらに来年は騒動を起こさないよう備える農家に取材しました。 【写真を見る】“古古米”放出で市場は混乱 知られざる卸売業者の苦悩 農家は猛暑に強い新品種で試行錯誤【大石邦彦が聞く】 先月22日… (小泉進次觔 農水大臣) 「早ければ6月の頭には2000円台の備蓄米が並んでいる姿を実現できる可能性が出てきた」 就任早々、備蓄米の店頭価格を5キロ2000円程度と打ち出した小泉大臣。対象のコメは2022年産のいわゆる古古米など合わせて30万トン。古古米は本来、災害など緊急事態に備えて備蓄され市場には出ないはずのもの。 その古古米が販売された名古屋の「イオン熱田店」では開店前から約1000人が列を作り、用意されていた4200袋は3時間で完売しました。その気になる味は?購入した人の自宅を訪ねてみると… (購入した人) 「ちょっと古いなという感じは、口の中に入れた瞬間にするんですが。問題なく食べることはできる」 「白米では自分には厳しいかな」 台湾、アメリカから輸入もしたが… 消費者が一気に備蓄米へ向かう中、気を揉んでいるのが卸売業者です。岐阜市の米卸売業者「ギフライス」ではコメの高騰を受けて昨年末には既にコメの輸入も始めていました。 (ギフライス 恩田喜弘 社長) 「台湾のコメが短粒種という日本のコメとほとんど変わらないものが入庫してきた」 輸入する台湾米は全部で約100トン。 (ギフライス 恩田喜弘 社長) 「食感は日本のコメとあまり変わらない」 この他、アメリカ産の「カルローズ」も約400トン輸入します。 (ギフライス 恩田喜弘 社長) 「全国の卸売業者は国が備蓄米を放出することを、去年の段階では誰も思っていなかった。僕らも決意して輸入した。(備蓄米の放出が分かっていれば)輸入しなくて済んだか、ここまで輸入しなくて済んだ」 凶作とコメの高騰を受け輸入に舵を切ったときには、まだ国内の備蓄米が放出される見通しはありませんでした。 安すぎる備蓄米の登場で輸入米は 輸入米にかかる1キロあたり341円の関税を入れても小売価格は5キロ約3500円になるため、4000円を超えた国産米には勝てると見込んだのです。 (ギフライス 恩田喜弘 社長) 「基本、外国産米が(国産米より)少し安い位置にあったほうが、外国産米は売りやすいと思う。日本人なので国産のコメが、みんな欲しいのは当たり前。(備蓄米の方が安くなったら外国産米は)売れ行きが悪くなると思う」 しかし、放出された備蓄米。それでも少し安く売ることは可能で、何とか切り抜けられるはずでした。ところが予想以上の古古米人気、いくら何でも5キロ2000円とは勝負になりません。消費者が何より求めていたのは安さでした。 先月30日に行ったインタビューでは… (ギフライス 恩田喜弘 社長) 「(外国産米が)売れ残るのか。あるいは2000円の備蓄米をメインに売って、外国産米は後回しになるかな。(新米が入ってきたら新米と)並行して売ってはいきたいと思うけれど。契約をもらった分が後回しになるのか、キャンセルはないと思うが、その辺は心配ですね」 安すぎる小泉米が市場からなくなるのを待って、輸入米を売り出していくしかないのか。業者の悩みは続きます。 暑さに強い新品種に期待 一方、農家は…。愛知県長久手市にあるJAの施設では新たな品種の苗が準備されていました。 (北部営農センター 長谷川勇 副センター長) 「『あいちのこころ』という品種の苗。(『あいちのこころ』は)高温耐性に強い品種です。(Q:愛知の猛暑に強いコメ?)そうです」 去年のように猛暑による高温障害で凶作にならないよう、新品種で米作りが行われます。 「あいちのこころ」は暑さに強いのが特徴。来年は米の不作による異常な値上がりが起きないよう期待をかけています。 3分の1を「あいちのこころ」に置き換えたという農家は、ここ数年ひどい高温障害に悩まされていたといいます。 (農家 神谷時男さん) 「(去年の猛暑でコメは)かなりやられました。2割近くとれなかったと思う」 猛暑を乗り切って良いコメを 今年も猛暑が予想されますが… (農家 神谷時男さん) 「去年は規格外というコメも結構ありましたから。何とか(「あいちのこころ」が)良いコメに、つやつやでキレイなコメができるとうれしい。ある程度の価格で売れると一番いいですね」 気候変動と長く続く減反が引き起こしたと言える今の米騒動。これにどう対処するのか。古いコメを安く放出するのは、あくまで一時しのぎであることを国は真剣に受け止める必要があります。