公明党は６日、夏の参院選の公約として掲げる重点政策を発表した。 　原案にあった食料品を対象にした消費税率の引き下げは削除した。社会保障に充てる代替財源を見つけられていないことに加え、消費税減税を実施しない自民党との不一致を回避すべきだとの判断も働いたとみられる。（田ノ上達也） 　「消費税は社会保障の貴重な財源だ。引き下げるのであれば、安定した財源を見つけなくてはいけない」 　公明の斉藤代表は６日の記者会見でこう述べ、食料品を対象とした軽減税率の引き下げを公約に盛り込むことを断念する考えを明らかにした。「消費税のあり方を論じるのは少し時間がかかる」とも語り、消費税に代わる恒久財源探しが難航したことも認めた。 　２０１２年に当時の民主、自民両党と消費税増税で合意した公明が、減税を強く訴えるようになったのは今年４月だった。斉藤氏は１０日の党会合で、物価高騰などに触れ、「最も効果的な対策は、減税で家計や企業の負担を直接軽減することだ」と主張した。 　同２４日には、「軽減税率の引き下げも俎上（そじょう）の一つだ」と踏み込み、自民、公明両党の幹事長による会談の場でも、公明側は消費税減税を繰り返し働きかけた。 　５月末にまとめた重点政策の原案では、８％の軽減税率について「社会保障政策と位置づけ、５％への恒久的な引き下げを目指す」と明記した。ただ、党幹部らが協議を繰り返す中で慎重論が強まり、公約から外した上で、参院選に向けてまとめる「重要政策課題」の中で、「税率の引き下げなどについて検討を進める」と記すことを決めた。 　党内では、消費税減税を公約の目玉と見込む向きが多く、見送りへの不満は強い。党関係者によると、今月５日の党会合では「いま訴えなければ、もう言う時はない」「選挙に勝つために明記するべきだ」などの意見が相次ぎ、岡本政調会長が「野党から自公で意見が違うと責められる可能性がある」と削除に理解を求めた。 　斉藤氏は６日の記者会見で「やると言ったら、やり切る。」との党の新たなキャッチコピーを発表したが、党内からは「さっそく自民に押し切られた」（中堅）との声も出ている。 　原案で、国民１人あたり「２万〜３万円程度」としていた給付の金額もこの日の公約には記載せず、税収の上振れなどを活用した「生活応援給付」を行うとするにとどめた。 首相、重ねて減税否定　「安定財源軽視ならぬ」 　石破首相（自民党総裁）は６日の衆院予算委員会の集中審議で、消費税について「『好きです』という人はいないが、安定的に社会保障の財源に充てられる意味合いは軽視してはならない」と述べ、減税に否定的な考えを重ねて強調した。現在の１０％の税率について「諸外国と比べてかなり低い」とも指摘した。 　選択的夫婦別姓を巡り、立憲民主、日本維新の会、国民民主３党がそれぞれ提出した法案の採決時に自民の党議拘束を外すことについては慎重な姿勢を示した。自民は過去に個人の倫理観に関わるとし、臓器移植法や同法改正の採決で党議拘束をかけなかったが、首相は「脳死の例とはかなり趣を異にする」と語った。